日々の抄

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 話を聞くだけなのか

2012年8月9日(木)

  原発再稼働反対の毎週末の運動は3月からはじまり継続している現在進行形の国民的運動である。現在は全国的に広がり,先週末には28都道府県におよび,それぞれの参加人数は数十人から20万人という。参加人数の把握が主催者側と警察関係で異なることはよくあることだが,新聞各紙の取り扱い方が異なっていることに注目したい。
  先月末に東京で行われた反原発デモの参加人数について。
朝日:「主催者発表によるとのべ20万人が参加。警視庁は参加者数や検挙の情報を公表してないが,警察関係者への取材では,デモには約1万2千人,国会法委に約1万4千人が参加したという。
抗議行動を呼びかけてきた13団体の連絡組織 '首都圏反原発連合' は,特定の政党色や団体色を前面に出さないよう苦心を重ねてきた。'脱原発' 以外の政治的な主張はしない,所属団体の旗を掲げない,抗議中はビラ配布や署名活動はしない,マイクの発言は1分間。それが現場のルールという。 だが,注目に便乗するように、官邸前で抗議するスタイルは別のテーマへも広がり,23日には、オスプレイ配備への抗議行動も行われた。29日の国会周辺で,団体の旗を掲げたり、反原発以外のビラを配る人も現れた。抗議行動は主催する首都圏連合の思惑を超え、広く政治不信を吸収する場にもなりつつある。」
毎日:「猛暑の中、子供からお年寄りまで幅広い年齢層が参加(主催者発表20万人、警察調べ1万数千人)。「再稼働反対」「原発やめろ」と声を上げ、行進後は永田町に移動し、国会議事堂を取り囲んだ。・・・・ 'あの頃は若いなりに『世の中を変えたい』と思っていた。このデモには老若男女、多様な人たちが自由に何の制約もなく参加している。今の日本も捨てたもんじゃない」' と声を弾ませた。

読売:「脱原発を訴える市民グループの呼びかけに集まった人たちが29日、東京都千代田区の国会議事堂を取り囲み、原発を再稼働させた政府や政治への抗議活動を行った。参加者は暗くなり始めた午後7時頃からキャンドルやペンライトを手に、'再稼働反対' などと連呼。この日は、自民党の河野太郎衆院議員ら各党の国会議員も合流。警視庁によると、この日のデモ行進参加者は約1万2000人に上った。」
東京:「参加人数は主催者発表で二十万人。警視庁関係者は一万二千五百人程度としている。
 これに先立ち、同日午後三時半から東京・日比谷公園で行われた集会では、作家の落合恵子さんが「この猛暑でも電力は不足していない。原発をゼロにし、再稼働も輸出も止めましょう」と呼び掛けた。」
産経:「脱原発を訴える抗議集会が29日、日比谷公園で行われ、1万5千人超とみられる参加者が集まった。霞が関などをデモ行進した後、国会議事堂を取り囲み、キャンドルを手に '原発をなくせ' と抗議した。毎週金曜日に抗議活動をしている団体の呼びかけで実施。インターネットのツイッターなどで多くの一般参加者が集まる一方、労働組合など組織的なPRも目立った。」

  朝日は主催者側の参加者数20万人とともに,警視庁が参加者数を公表してないとして「警察関係者への取材」でデモには約1万2千人としている。毎日は主催者発表20万人、「警察調べ」1万数千人,読売は主催者側の参加者数を示さず警視庁による数だけを示している。東京は主催者発表で20万人。「警視庁関係者」は一万二千五百人程度としている。産経は参加者数だけを示している。

  新聞報道では,デモ参加者数の出典は明らかにすべきである。警視庁は参加者数を公表していないそうだから,新聞各社が聞き出せる警察関係者の人脈で人数が異なるということなのか。「警察関係者への取材で」,「警察調べ」,「警視庁によると」,「警視庁関係者」と表現が少しづつ異なっているが,読売は主催者側の参加人数を示さず,産経は数字の根拠を示してない。読売,産経は主催者側の人数に疑問を抱いての事だろうが,主催者側発表の参加者数を示さないのは片手落ちである。

  毎週末のデモが連続して行われ,参加者数が減ることもないためか,菅前首相は野田首相にデモの主催者代表と会談することを進言している。首相は近日中に会談する意思表示をしていたが,延期されている。全国規模で行われている「エネルギー聴取会」が国民の声を正当に聴取しているかどうかは別にして,国民の意見を聴する場面は作られている。官邸前に毎週反原発デモ行動が行われている主催者側発表で20万人としても,その代表者が反原発を意思表示する国民代表とすることには疑問がある。官邸前の反原発行動は福島原発事故,大飯原発の強引な再稼働をみれば当然のものと思う。だが,その官邸前の行動の代表者と首相が会って,大飯原発再稼働が元に戻るとは考えられない。もしそうなるなら,再稼働をはじめからすべきではなかったのだ。代表者と首相が会談することになれば,「国民の声を聞いている」という見え透いたガス抜きにさせられるに違いない。

  国会で野党は衆院解散選挙を臨んでいるらしいが,少なくとも政争に明け暮れ,我欲に満ち,選挙対策しか考えてないセンセが当選すると思ったら大間違いである。選挙結果を見て自民党も衆院解散をしなければよかったと思うかもしれない。
   
    原発再稼働を阻止するためには,「反原発」を争点として国民に信を問う選挙を行うことである。ただ,「反原発」だけの耳障りのいいことでエネルギー問題は解決しない。CO2対策,代替えエネルギーの具体策を示すべきである。また増税反対なら,「まだできることがある」という「できること」を明示すべきである。国民の約半数は将来の国家としての財政を考え増税やむなしとしている。増税も反原発も日々の生活に密接に関係する深刻な問題である。
 
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