日々の抄

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  モーツァルト聴き比べ

2006年09月03日(日)

 8月25日に草津夏期国際音楽フェスティヴァル2006に行った。
ことしで27回目になる草津夏期国際音楽アカデミー&フェスティヴァルは、名のある演奏家が若き音大生を直接指導し、同時に演奏会をするという、日本の音楽祭の草分けである。1983年にはエリザベト・シュヴァルツコプフが公開レッスンを行っている。今年のテーマは『モーツァルトと18世紀』であった。生誕250年のモーツァルト年のことしはモーツァルト一色だった。

 25日のテーマは『モーツァルト/マンハイムとウィーン時代のオペラ 』であった。曲目は
『ヴァイオリン・ソナタ 第25番 ト長調 K.301(293a)。
ヴァイオリン・ソナタ 第24番 ハ長調 K.296。
「ドン・ジョヴァンニ」K527から「序曲」、アリア「奥さん、これが恋人のカタログ」、「酒がまわったら」はフルート四重奏版、アリア「若い娘さんたち、恋をするなら」、「たがいに手をとりあって、あちらへ」はヴァイオリン、フルートの2重奏版。
五重奏曲 ニ長調 K.577(Anh.177)。
オペラ「魔笛」K620から「序曲」、アリア「魔法の調べのなんという力強さ」、「可愛い娘か女房がいれば」はフルート四重奏版。アリア「俺は鳥刺し」、「誰にでも恋の喜びはある」、「愛の喜びは露と消え」は二重奏版。
の5曲だった。演奏は、W.ヒンク(vn)、遠山慶子(pf) 、W.シュルツ(fl)、S.コロー(va)、W.ベッチャー(vc) 、百武由紀(va)であった。

 はじめの2曲はモーツァルト22歳の作。ザルツブルグでの活動に不満を感じ始め、母とマンハイム、パリ、マンハイムへの旅に出て母を亡くした年である。マンハイムの滞在先でピアノの弟子だったピエロン嬢への餞別のための作。第2曲はパラチーヌ選帝侯妃アウグステに献呈された「マンハイム・ソナタ」(プファルツ・ソナタ)の第1番である。クリスチアン・バッハの影響を強く受けているという。第3、5曲はオペラの二重奏、フルート四重奏版。第4曲の弦楽五重奏曲ニ長調(K.Anh.177)は「フィガロの結婚」の追加アリアK.577 ロンド「君を愛する人の願いに」を、ソプラノ部分をフルートで演奏し、ヴァイオリン1、ヴィオラ2、チェロ1で演奏する5重奏版である。

 先日BS放送で、7月30日ザルツブルグフェルゼンライトシューレで開かれたザルツブルグ音楽祭2006モーツァルト・ガラ・コンサートのライブ放送があった。ウィーンフィルによる演奏で、「ドンジョバンニ」から「序曲」、「奥さん、これが恋人のカタログ」、「彼女こそわたしの宝」他、「ポントの王ミトリデーテ」から耐え難い苦痛の中、「皇帝ティトスの慈悲」から「親愛なる神々」他、「イドメネオ」から「序曲」などであった。フルオーケストラでのアリアは映像といえど迫力満点である。

 今回の演奏会は、7月末にシェーンブルン宮殿オランジェリーコンサートで聞いた何曲かと重なっていたので、演奏の違いを密かに楽しみにしていたのだったが、人の声で訴えるアリアをいかに優れた演奏であっても、器楽に置き換えた演奏と比べることは間違えであった。いままで声楽を好んで聴いてきたわけではないが、今回の聞き比べで改めて声楽の素晴らしさを教えられた気がした。アレンジによる演奏はそのつもりで聴かないと失望するだけである。

 ヴァイオリンのW.ヒンク、フルートのW.シュルツ氏はウィーンフィルの首席奏者で、ウィーンの演奏会を終えた後、直ちに草津に向かったと聞いた。群馬の片田舎の街で世界的な演奏を毎年聞けることは素晴らしいことだ。ただ、会場の関係からか大規模な演奏がしにくい点だけは残念である。来年も行きたい。



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