日々の抄

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  適切な処理ですか

2007年03月11日(日)

 不明瞭な政治資金会計報告の問題が国会で取り上げられている。大政党の自民党、民主党ともに同様の問題が判明しており、選挙民としては「いい加減にしろよ。金まみれの政治家が横行しているこの国の政治は信用できない」と思わずにいられない。国が破産しかけているにも関わらず、政治資金が透明化されておらず、バレなければほっかむりして事が済むなら、文句なしに税金をとられている庶民にとって割り切れない気持ちにも限界があるというものだ。政治資金の使途の範囲が明快になっていないなら透明化を図り、目的外の支出があれば政治資金規正法に則って処罰の対象にすればいいだけのことなのだが。

 3月5日の参院予算委員会で、松岡農林水産相の資金管理団体のただ一つ・・・・ の事務所が水道代や暖房代のかからない議員会館にあるにもかかわらず、2005年に光熱水費として507万円を計上していることが「虚偽ではないか」との指摘があった。光熱水費は政治資金規正法施行規則で「電気、ガス、水道の使用料及びこれらの計器使用料等」と規定されている。事務所費や人件費とともに経常経費に計上され、領収書の添付は不要。松岡氏は光熱水費とは別に事務所費に3359万円を計上している。
 松岡氏はこれに対して、事務所は「議員会館の一つ」と認めた上で「水道は何とか還元水というものを付けている。光熱にも暖房なりなんなり別途そういうものも含まれている」と説明したものの、詳細の公表は「各党各派で平等に公表するということになればそうする。必要な範囲で答える」と拒んでいる。自分だけがそうしているのではないと言わんばかりである。収支報告書によると、同団体は、2001年に約659万円、2002年に約779万円、2003年に約416万円、2004年に約518万円をそれぞれ計上している。議員会館は水道も電気も暖房も無償だから不正計上だと思われても仕方ないし、「何とか還元水」が政治資金規正法施行規則で規定されているものに該当しないのではないか。
 百聞は一見にしかずで、民主党議員が松岡事務所を実地見聞に出向いた。「浄水器、付いていないじゃない」「個別メーターも見あたりませんね」に対して、秘書は「本人がおりませんので……」という。松岡氏は光熱水費問題について「いま水道水を飲んでいる人、ほとんどいない」と発言している。自分が(公費で)浄水器を使っているから、それが全てである如く語り、浄水器を買えない庶民のことを知らないこんな人物が大臣とは情けない。大体において浄水器が必要であるような水道水を使わなければならないことと農水大臣職は無関係ではあるまい。
 「何とか還元水」の器具がないことは明白で、何とか言い逃れようと国会で虚偽の答弁をしたことの重大さを認識しているのだろうか。これに対して身内からも擁護しきれないとの判断が出ている。自民党の笹川堯党紀委員長は「還元水、暖房(代)など」と説明したことについて「頑張ってもシロにならない。ただのところにかかっているのは誰が見たっておかしい」と批判。また、笹川氏は「わたしも毎日還元水を飲んでいるが、1台20万円だ。1度付けると5年や6年持つ」とも指摘している。
  ところが、松岡氏は「確認したところ、適切に報告しているということだった。現行制度に基づいてすでに報告すべき点は適切に報告している」。答弁で「適切に報告」を23回も繰り返しても、納得できるはずがない。松岡氏をかばう安倍首相は9日夜、「松岡大臣は法令にのっとって処理をしていると、答弁しているし、そのように報告を受けている」とし、議員会館に浄水器が見あたらなかったことについては「ま、どうですかね。私が見たわけでは」とかわしている。「適切に報告」の「適切」とはどんなことなのか。だいたいにおいて「私が見たわけでは」などと他人事のように語っているのは国民を馬鹿にしているにもほどがある。

 誰が見てもおかしいと思える言い訳を国会でまかり通そうとしている人々に国の方向を云々されたくない。これでは、真面目に社会正義を語れないし、言い逃れをすれば世の中は何とかなると子ども達が思っても不思議ではないだろう。次は文科相の番ですか。
 国会はこんな陳腐で程度の低いことをつつき合うことなく、国の将来を語るべき場ではないのか。肝心なのは「潔い」ことだ。松岡氏はさっさと職を去るべきだろう。その時に、擁護にまわった首相の責任は問われなければなるまい。

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