学生野球は教育活動の一環だ |
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2007年05月06日(日) プロ野球・西武の裏金問題を発端に明らかになった高校野球の特待生制度についての調査結果が発表された。 日本学生野球憲章第13条(選手又は部員は、いかなる名義によるものであっても、他から選手又は部員であることを理由として支給され又は貸与されるものと認められる学費、生活費その他の金品を受けることができない)に反する「野球部員であることを理由としたスポーツ特待生制度」の全国調査の最終集計結果をまとめ、硬式376校、軟式8校の延べ384校(軟式8校はすべて硬式と同じ学校)が違反を申告し、対象部員は7971人にのぼったと発表した。今回調査した加盟校は硬式4167、軟式511のあわせて延べ4678校。硬式の私立は784校だった。47都道府県で最も申告が多かったのは27校の福岡で、次いで愛知26校、東京20校。申告ゼロは高知だけだったという。唯一の公立校の福岡市立福翔では、同窓会組織が野球部員に奨学金を与えていたという。 日本学生野球憲章違反は2004年一場靖弘選手に対し、巨人、横浜、阪神のスカウトが2003年末から事件発覚時までの間に現金を供与。憲章に抵触するとして問題になったことが知られている。 4月に発覚した西武球団のプロアマ規定違反に関する報道を見ると、アマチュア野球が金まみれになっている事が浮き彫りになった。それによると「アマ野球の監督や関係者への謝礼は、1人当たり10万円から300万円がほとんど。中には1000万円、500万円、410万円の支払いも1度ずつ。球団として年間約500万円を支払った。アマチュア関係者から支払いを要求されたこともあったという。また、すでに金銭授受が明らかになっている清水勝仁選手(早大野球部を退部)と木村雄太選手(東京ガス)以外の5人(外国人1人を含む)に対して倫理行動宣言以前に、契約前に計6160万円を渡していたことも発表。契約金や報酬金の前渡しや海外渡航の餞別(せんべつ)金として、1人当たり約30万円から約2800万円の金銭を渡していた」という。これほどの金銭が支払われても採算が合うほど野球は儲かるのかと信じがたい気分である。 西武球団から金銭をもらっていた早大選手が在籍していた専大北上高校で、プロアマ規定違反だけでなく、日本学生野球憲章が禁じるスポーツ特待生制度での入学の存在が明らかになったとして、これが今回の調査のきっかけになっているが、「連盟からの除名相当である」との見解を示めされ、4月16日、硬式野球部は解散した。だが、野球同好会として練習を続けることができ、日本高校野球連盟への再加盟が認められれば、その時点で処分は解除になり試合が出来る。関係者は夏の大会への参加を可能とするための手だてを考えてのことである。何はともあれ、現役高校生に責任は全くない。大人の都合で、野球をやりたいために入学してきた生徒を失望させるわけにはいくまい。いずれにせよ、特待生だった選手は5月中の対外試合出場が禁止されるという。特待生制度がなくなることになれば、「公立高校を受験し直したい」、「経済的に苦しいので学校を辞めることも考える」という深刻な問題も出ている。関係する高校の管理職による「知らなかった」などの発言はみっともない。 高野連会長は今回の調査の結果について「非常に数が多いと驚いている。2年前に通達を出したが、日本高野連としてもフォローアップが足りず、十分に理解されていなかったのは大変遺憾に思っている」、「日本学生野球憲章の13条に基づいて、教育の一環としてフェアプレーの精神をもってやっていくが、今後は(特待生制度について)何らかの基準を作らなければいけない」としている。とは言え、13条が生きている限り特待生は認められまい。まさか、拡大解釈をして戦争ができることにしようと考えている政治家のようなことをしてはフェアープレーの精神に反するだろう。 特待生制度は野球以外のサッカー、バレー、卓球、レスリング、体操、柔道、ソフトボール、吹奏楽などで認められているのになぜ野球だけ禁止なのか、高野連は時代錯誤だとする論調が聞こえているが、私は高野連のこの考え方は間違っているとは思わない。1946年にできた憲章がこの制度を禁じるのは、「野球だけやっていればいい」と誤った優越感や特権意識を持たせないことにある。本業はあくまで学業である。某大学で単位認定が危うくなった野球部の学生が、救済を求めにやってきて「俺、野球やってるんですけど」と救ってくれるのが当然という態度でいたという。これに対し教官は「だからどうした」と一蹴したというが、これでいいのだ。野球ばかりやっているものの中に、こういう思い違いをしている者もいる。 他の競技がやっていることが正しい、多数決で決まるという問題ではないだろう。学校で3年間に数日しか登校しないで卒業している、名のある選手がもてはやされているが、そんなことが学生として許されることは誤っているのではないか。その選手および関係者には「文武両道」などは存在しない。 アマチュア野球も金まみれになっている現実の中で、中学生にまでスカウトが「唾をつける」ようなことに至っていると聞く。高野連は安易な妥協をしてほしくない。一方で学生野球憲章第3条に「試合はすべて学業に支障がないときに行なわなければならない」としておきながら、7月近くになると公欠と称して授業時間内に公式試合が連日行われているのは何とかならないのか。 野球の強豪高が地元から甲子園に出場が決まったものの、実はすべての選手が他県から「野球留学生」という場合もあると白けた気分になるが、私立高校は野球で名を世に売り出し、その後に大学進学率を上げれば、経営が安泰という図式が見えているらしい。野球をやっている選手達は、ただ「野球が好きだから」やっているに違いない。世間では野球特待生がいることは周知の事実だし、甲子園出場選手は出身中学が登録されているのだろうから、文科相の「野球留学は好ましくない」という発言は時期を失しているのではないか。高野連もこれらについては承知していたと思わざるを得ないが、どのように事を収拾するのか、注目していきたい。これだけの事態を知らなかったでは済まされまい。高野連の責任も問われて然るべきだろう。罪も責任もない現役高校生が不利益を被らない手だてを考えるのが大人の知恵というものだろう。 今回の調査の結果は、高校の未履修問題や原子力発電関係の大量のデータ捏造事件と似ているところがある。違反しても「みんなでやれば怖くない」の図式は他にもありそうだ。特待生制度の責任を野球部長だけに負わせて一件落着にはなるまい。 |
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