日々の抄

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  猛暑対策は環境問題

2007年08月24日(金)

 暦の上では、「暑さが止み、新涼が間近い日」という処暑を迎えても猛暑は続いている。冷房使用などの影響で電力消費が多くなるため、東電では電力使用を控えるよう23顧客に対して17年ぶりに要請した。最も暑かった時期は盆の帰省などで企業での消費が押さえられていたため電力消費が深刻になるのは、残暑が激しくなるこれからだという。
 電力消費節減を求められた企業と東電は「随時調整契約」を結んでいるという。これは、電気料金を割り引く代わりに電力需給が窮迫した際に電気の使用を控えてもらう契約で、大手メーカーや役所などと約1250件結んでいる。通知した時点ですぐに電気の使用を控えてもらう23件の鉄鋼、非鉄、化学などの契約について履行を請求したが、カットできた電力は12万キロワットだったという。東電の22日の電力需要は6147万キロワットというから全体から見ると節減も微々たるものである。刈羽原発事故で発電量が減少しているため、緊急時だけ使用が認められている栃木県の塩原揚水式水力発電所も午後1時過ぎに稼働させた結果である。
 東電が22日朝段階で用意していた供給力は6250万キロワットで、結果的には需要を上回る供給力をもっていたが、気温がさらに上昇したり、ほかの発電所にトラブルが起きたりすると電力需給が窮迫する恐れがある。民間企業の商品は「買って下さい」と宣伝するが、電力だけ「節約して下さい」としているのはおかしな話だ。

 県下の公立学校でも今までになかった猛暑に対応するため冷房装置が使用できるようになり、一般家庭でも熱中症で死亡者が多数出ていることを考えると、冷房装置を使用せざるを得ない状況はこれからもあるいはそれ以上に増え、電力消費の増加が予想できる。体温より高い気温、それも病気発熱で危険な状態と思われる40度を超える気温になれば命を守るために冷房を使用せざるを得ないのは当然だろう。だが、冷房装置を使用すると室内の気温は下がっても環境の温度は装置の排出熱で上昇する。部屋の中で冷蔵庫を開け放てば、部屋全体の温度が上昇することは物理学の教えるところである。

 庶民のすぐにできる対応策は何か。窓際に植物を植える、例えば朝顔を日光の入る箇所一面に這わせることで数度温度が下がることが知られている。植物の蒸散による。学校でもこれを積極的に取り入れているところがある。わが家では日よけのためにあらゆる窓に簾をかけている。これと撒水の効果はてきめんである。夕方、外気は涼しく感じても部屋の中は建物が暖められているため蒸し暑い。そのため、日中は窓から熱風が入らない工夫が必要である。ドイツの小学校では気温が28度を超えると学校長の判断で放課にできると聞いたことがある。無理して授業を続けることが児童の健康管理をしていないと判断されるからという。日本でそんなことをしたら夏場は学校が開店休業状態になることは見えている。お国柄、地域性に違いはあるとしても具体的な対応が求められている。暑くても我慢という考え方は、今までのように、最高気温が30度を少し超える程度で済んでいた時代のことである。
 企業レベルの対応策は、就業時間を減らすことを考えることだろう。そんなことをしたら国際競争に勝てないなどといっても、人間が住めないような環境を解消することとどちらが優先されるかである。従来と同じ発想ではヒートアイランド現象に対応できないだろう。TV放送を時間制限することも必要になるだろう。これは、待ち受け電力を減らすこととに比べれば絶大な効果があるだろう。再放送、深夜放送をなくし、放送しない時間を作ることで、日本人の生活がかなり変わってくるに違いない。
 都市全体でのヒートアイランド現象対策として、緑化計画をすることが早急に求められている。屋上に植物を植栽するだけで建物の温度上昇を抑える効果が知られている。一方で「冷房の設定温度を28度に」などとマスコミが繰り返し伝えているが、以前から疑問に思っていることがある。冬季、TVに登場する人物にノースリーブで見るも寒々しい服装の者がいる。どれほど暖房温度を上げているのか。夏場、冷房の「設定温度を説いている」出演者の多くは背広にネクタイ姿である。汗を拭きながらの姿を見たことはない。いろいろな言い訳はするのだろうが、せめて長袖、ネクタイ姿ではやっていられない程度の温度設定にしたらどうか。涼しい部屋にいて、「地球温暖化対策のために部屋の冷やし過ぎはやめましょう」などと言っても説得力はないし、自分たちは特別な存在なのだと言わんばかりで不愉快極まりない。

 今夏、電力消費が深刻な問題化しているが、水不足が伝えられないのは幸いなことである。京浜地方で涼しい環境を享受した結果として大地を暖め続け、その熱風が南風に乗って埼玉、群馬が毎年のように全国最高気温を記録しているのは困ったものだ。水不足の時に「雨なんか群馬のダム周辺にだけ降ればいいのに」と愚かなことを言う都会の住民の言葉に腹立たしい思いをしたことがある。台風が本州を北上したときに、「台風は幸いにして北海道に去りました」と伝えていた報道を聞いたことがあった。猛暑対策も自分のことだけ考えているのでは根本的な問題解決にはならない。何年か後に気温が50度に達することがあるかもしれない。その時は社会が機能停止状態になることは容易に想像できる。
 地球温暖化、海面上昇による国土消失を目の前にした国々の深刻な事態を他人事と思っていると、いつの間にか日本も亜熱帯化してマラリヤなどが日常的に伝染することも遠からぬ事かも知れない。早急に便利さだけを考え直す時が目の前に迫っている。

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