日々の抄

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  こんどは年金泥棒ですか

2007年09月05日(水)

 5000万件という途方もない消えた年金が問題化し,具体的な作業が再三の督促でやっと開始されはじめた矢先,社会保険庁は3日、『1962年の発足以来、職員による年金保険料や給付などの横領が判明したケースが50件あり、横領金額は1億4197万円だった』と発表した。市区町村職員の国民年金保険料の横領は49件、2億77万円。両者で99件、3億4274万円に達した。また、過去の未納保険料をさかのぼって支払える「特例納付」では、市区町村職員が社保庁の代わりに保険料を受け取っていた自治体が少なくとも80〜90カ所あった。領収書を本人に渡していないケースなども見られたという。
 社保庁職員の横領は、保険料が22件,3365万円、年金給付が13件,8047万円、医療保険の高額療養費の払い戻しなどが15件,2784万円。保険料横領で最も高額だったのは、98年に処分した東京・蒲田社会保険事務所(当時)の年金専門官による1266万円の横領のケースである。着服が発覚しないよう、オンライン上の年金記録のデータも改ざんしていた,横領という立派な犯罪である。
 50件のうち社保庁が自発的に公表したのは24件のみ。報道による発覚を除く18件はこれまで明らかにしてこなかった。刑事告発したのも27件にとどまり、15件については警察にも相談しないまま告発を見送っていた。同庁職員課は「なぜ告発しなかったのか当時の資料に記述がなく、理由はわからない」としている。
 特例納付は70〜72年、74〜75年、78〜80年の過去3回実施。本人が市区町村の窓口で支払ったと主張する一方で、社保庁側に記録が残っておらず、「消えた年金」になった例が目立つという。
 市区町村の職員が保険料をいったん預かり、本人の代わりに社会保険事務所などに自治体が払い込んだのが各回で80〜91市区町村に及んだ。保険料を自治体の会計に納めたわけではないので、社保庁は「違法ではない」とするが、本人に領収書を渡していない自治体も14〜16カ所あった。「実態不明」とする自治体も1500〜2100カ所に達するなど、調査の限界を示した。
 他人の年金を,立場を利用しての横領,着服が行われてきたにもかかわらず,これらが公にされることなく,犯罪を犯した職員がその後も,その職を辞することなく何食わぬ顔で業務を続けている者もいるという横暴がなぜ許されてきたのか,まったく理解に苦しみ,義憤に堪えない。

 舛添厚労相は3日夕、横領について、「9年前までは公表していないでいいということになっていた。めちゃくちゃなんですよ。そういうところは、この社会保険庁というのはまったく普通の人の感覚からずれている。これは立て直さなければいけない」,「本当に恥ずかしく許し難い行為で、きちんと調査をした上でしかるべき対応を取りたい」,「横領したような連中はきちんと牢屋に入ってもらいます。今からでも刑事告発してやろうかと思って」と語り,増田総務大臣に、自治体の首長に対し横領した職員の横領内容や処分内容などを公表し、明らかになっていないものが見つかれば刑事告発を促すよう、申し入れを行う考えを明らかにした。
 1998年より以前は横領しても弁済すれば刑事告発しない場合もあり、社保庁が処分内容などを公表していないケースがあることを問題視。「普通の感覚なら出している」と懲戒免職や告発の有無などを公表するよう指示した。
 厚労相の考えは一般国民からみれば当然のことであり,年金を着服した「盗っ人」が今もその職に就いていることなど社会一般の常識からすれば考えられないことである。かつて,100円を着服したとして免職になった旧国鉄職員がいたことを覚えているだろうか。年金を着服した職員の罪は重い。
 舛添厚労相にしてやっと常識の通じる大臣が現れたと感じエールを送りたい。こうした怒りに満ちた指摘が厚労相からあったことは歓迎すべき事だが,社会保険庁長官はいったい何をしているのか。役人はミスをしても,齟齬があっても処分されずに済んできたことの悪習がこうした事に結びついているのではないか。耐震偽装問題,原子力発電所の違反,食肉違反なども含め監督官庁の責任は重いと思うが,仮に処分があっても,痛くも痒くもない訓告,戒告が適正な処分とは到底思えないし,一部の大臣が賞与を返還することで国民が納得できる責任とは思えない。監督官庁に瑕疵があれば,職を失うくらいの真剣さと国民への信義を持たなければ,国民の信頼は得られない。常識を持ち合わせない社会保険庁の職員は一日も早くその職を辞することを勧める。

 自分の立場に胡座をかいている役人は,雀の涙ほどの年金を頼りに爪に火を点すような生活をし,食べることまで節約を迫られ,具合が悪くても通院できないでいる人々の苦しさを思い知るがいい。

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