これほど食品偽装があるのか |
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2007年11月03日(土) 連日伝えられている食品偽装にはただ驚かされるばかりだが,その多さはただならぬものがある。記憶に新しいところでは,伊藤忠フレッシュ台湾産うなぎ偽装、丸紅畜産鶏肉偽装、全農チキンフーズ鶏肉偽装、雪印食品・日本ハムの牛肉偽装などの不正がいっせいに発覚して世間を騒がせたが,その後も、03年下関ふぐ偽装、04年魚沼産コシヒカリ偽装、05年中国・北朝鮮産あさり偽装と偽装発覚は続いてきた。今年になってからあったことのあらましは以下のようである。 1月 ○不二家(消費期限切れ原材料を使った製品の出荷,基準を超える細菌入り製品出荷をはじめとする安全管理についての怠慢) ○チョコレートなどの賞味期限切れ(USJで販売されていた「おたべ」が製造した「チョコレート」,「クリームサンドウィッチクッキー」に賞味期限切れ原材料があった。1月17日まで計約二万個が販売された。同社販売の「HAPPA CHOCOLATE」でも賞味期限切れの原材料を使っていた。工場は、期限切れを把握しながら問題ないと判断していたといい、「認識や管理体制が甘かった」と釈明している)。 3月 ○サトイモ産地偽装(千葉県の農産物加工販売業者が中国産サトイモを千葉産と不適正表示して販売)。 ○アサリの不適正表示(愛知県の丸松海産が06年11月〜07年2月までの間に仕入れた中国産アサリのうち、少なくとも約30トンについて、愛知産と表示して出荷。平成18年12月に仕入れた韓国産アサリについて、愛知産又は中国産として出荷していた)。 ○乾めん類の不適正表示(山形県東根市の食品会社が製造販売する乾めんについて、原材料として使用したそば粉のうち、26.3%が中国産であったにもかかわらず、「国内産そば粉を使用」とあたかも国産そば粉を100%使用しているかのような表示を行い販売していた。この不適正表示をした商品を、少なくとも5.2トン販売。「二八そば(商品名)」に、原材料として使用しているそば粉の配合割合が約5割であるにもかかわらず、「そば粉8割使用」との文言を冠した表示を行い販売。この不適正表示を行った商品を、少なくとも2.3トン販売など)。 5月 ○コメの産地偽装(東大阪市の米卸売会社「日本ライス」によるコメの産地偽装で06年7月、「福井県産コシヒカリ100%」と表示した袋に古米や未検査米を詰めた商品を大量につくり、一部を小売店に販売したとして5月30日、大阪府警に不正競争防止法違反容疑で逮捕された)。 ○ミートホープ(牛ミンチに,兎,豚の心臓,豚バラ脂,鶏肉,牛の血液などを混入。学校給食用「鶏ムネ皮なし」がブラジル産なのに国産と偽装するなど13項目に渡る不正行為が社長命令で行われていた。雨水をためて冷凍肉の解凍に使用などもあった。明治乳業,味の素,紀文,カト吉,ダイエー,ローソンなどにこれらの肉が使用されていた。07年9月の段階では,農水省はJAS法違反の疑いで同社に立ち入り検査し、不正を確認したものの,同法で行政処分や刑事罰に問えるのは直接消費者に向けて虚偽表示などがあった場合に限られるため,「厳重注意」のみとしていた。だが,10月になって北海道警は、豚や鶏を混ぜたミンチ肉を「牛100%」と偽って表示し、食品加工会社に出荷したとして、田中稔社長,工場長経験者ら計4人を不正競争防止法違反(虚偽表示)の容疑で逮捕した)。 7月 ○ヒジキ、クラゲ産地偽装(佐賀県城市の食品会社が昨年8月ごろから、中国産ヒジキを「九州産」「長崎産」,クラゲを「有明海特産」などと表示し、九州中心に関東や関西で販売。「ヒジキの種は長崎産で、中国で育てた後、小城市の工場で加工したので、この表示でもいいと思った。クラゲは有明海産のものを使っていたが、中国産に替えた後も、袋が残っていたのでそのまま使った」と説明)。 ○牛肉産地偽装(香川県丸亀市の精肉店が昨年12月から今年1月、オーストラリア産の牛肉1トン以上を国産と偽って学校給食用に納入し,不正競争防止法違反と詐欺の疑いで関係した3名を逮捕。同精肉店は約30年前から給食用の肉を納入していたという)。 8月 ○白い恋人賞味期限偽装(土産品の菓子「白い恋人」の一部商品で賞味期限を製造元の石屋製菓がを改ざん。またアイスクリームの全24種類、バウムクーヘンは賞味期限が今年9月14日以前の製品について自主回収。ミルフィーユ菓子やチョコレート、クッキー、パイ菓子なども含まれ,チョコレートは4月、バレンタインデー用で売れ残った返品を特別な包装から通常用に戻す際に、規定では3カ月の賞味期限を約2カ月改ざん。11月22日に販売再開予定という)。 ○シジミ産地偽装(茨城県のシジミ問屋4社は、韓国産や北朝鮮産と同県涸沼産のシジミを混ぜて「茨城県産」「涸沼産」と偽って,昨年6月からの1年間に約79トンを販売)。 ○ウナギ産地偽装(九州のウナギ卸売業者や加工業者が台湾から輸入したウナギを国産と偽って販売したことが8月中旬判明。宮崎県は10月25日、宮崎市内の卸売業者2社が偽装していたと発表)。 10月 ○にせ名古屋コーチン(名古屋コーチンの2割が「偽物」であることが判明。偽物と判別した19点のうち、少なくとも約7割は、業界最大団体である名古屋コーチン普及協会の会員の商品であることが分かった。原材料名に「名古屋コーチン」だけが表示されている生肉50点、加工品40点を入手。生肉のうち6点、焼き鳥やミンチなどの加工品のうち13点から、別の肉が検出された)。 ○そうめん産地偽装(大手食品メーカー「エバラ食品工業」の調味料の賞味期限が改竄された不正競争防止法違反事件で、逮捕された食品会社社長らが、中国産のそうめん約3000箱を「三輪そうめん」などと偽って出荷しようとしたとして、再逮捕。新たに卸売業の男1人が逮捕された)。 ○赤福(店頭から回収した売れ残り商品「赤福」から,あんと分離した「むきもち」のうち、68%を赤福餅に再利用していたことが農林水産省などの立ち入り調査で判明。赤福はこれまで「99%は焼却処分した」と説明していたが、再利用は今年1月まで続け,売れ残り商品から分離した「むきあん」の一部を2000年までは赤福餅のあんとして再利用していたことも判明。さらに、原材料に表示していない加工品を使っていたことも明らかになり、ずさんな衛生管理の実態が浮き彫りになっている。製造日と消費期限を先延ばしにした包装紙に付け替えて再出荷する「まき直し」などは少なくとも約40年前には行われ,当時は、社内で「丸ハン」と呼ばれる製造日を表示した印を箱の前面に押して販売。製造当日の商品には日付のみを押し、前日の売れ残り商品には日付の末尾に「―」を付けて出荷していたという)。 ○にせ比内鶏(食肉加工製造会社「比内鶏」が、地元の「比内地鶏」と偽り、別の鶏肉や卵を薫製にした商品を出荷していた。同社は薫製商品に「比内地鶏くんせい」と表示していたが、国産の数種の鶏肉だけで、比内地鶏は全く使っていなかった。同社は生肉などは比内地鶏を使っていたと説明している。薫製には約20年前から卵を産みにくくなった「廃鶏」と呼ばれる雌の鶏を使用していたことも判明)。 ○宮崎地鶏不当表示(百貨店の山形屋が自社のホームページで、「鶏」と書くべき宮崎県産ブロイラーの炭火焼き商品を「地鶏」と掲載して全国にネット販売していた)。 ○牛肉産地偽装(福山市内の食肉加工会社が、自社商品の「鹿児島黒毛和牛コロッケ」に他県産の和牛などを混ぜていた産地偽装が発覚。発覚のきっかけは、大阪府と兵庫県の25店で問題のコロッケを月2万―3万個販売していたスーパーのDNA検査。9月製造分のコロッケに使った肉277キロのうち、鹿児島県産黒毛和牛は2割弱の約50キロと判明。残りは他県産和牛と、自社牧場で育てた和牛とホルスタインの交雑種などを使っていた)。 ○賞味期限切れのウインナ(佐賀県多久市観光協会が同市の委託を受け管理、運営する多久市物産館で、賞味期限切れのウインナソーセージが販売されていた)。 ○和菓子の賞味期限(岐阜県中津川市の和菓子の老舗の委託販売先が、製造日ではなく、販売日を起点に賞味期限を不適正表示していた。同店で和菓子を購入した女性が同市保健所に通報、県に連絡が入って発覚した。県は「故意ではなく、認識不足が原因」と判断している)。 ○ワカメの産地偽装(帯広市の海産物卸問屋が、中国産ワカメを「三陸産」と偽って販売していた。道によると、同社は中国産原材料を小分けし、「三陸産のワカメを独自の方法で精製加工した」などと印刷された別の業者名の袋に詰め、「天然カットわかめ」という商品で2001年4月から07年5月にかけ、道内の販売店を通じて計516袋を販売。このほか年月日で表示すべき賞味期限を「6カ月」とだけ表示。天然かどうか根拠がないのに「天然」や「自然」という言葉も使っていた。偽装は8月に北海道農政事務所の調査で発覚。同社の担当者は道の調査に対し「別の業者からもらった袋をそのまま使用した。三陸産との袋の表示は、農政事務所の指摘で初めて気付いた」などと答えているという)。 ○船場吉兆菓子偽装表示(ラベルを張り替える偽装を繰り返して消費期限切れの菓子を販売していたことがわかった。匿名の通報で発覚。消費期限は製造日から4〜5日間だが、4月以降は,売れ残った商品のラベルを毎日張り直して消費期限表示を1日ずつ延ばしたうえ、概ね製造日の古い順に販売。少なくとも去年1月から先月までに販売した6種類の商品でおよそ3000個を消費期限が切れたあとに販売していた)。 ○たくあん産地偽装(鹿児島県霧島市の漬物会社が、中国産の大根を原料に製造したたくあんを「鹿児島産」と偽り、百貨店やインターネットなどで販売。昨年5月から今年9月にかけ、少なくとも約172トンを販売。総菜でも賞味期限切れ商品を販売していた)。 ○産地誤表示(野菜ジュース製造販売の「ゴールドパック」が製造した野菜ジュースなど5種が8月1日〜9月15日、安曇野地域以外でとれた長野県産トマトや山梨県産クレソンも原材料なのに、安曇野産トマトや長野県産野菜だけが使われているという表示をして出荷・販売していた。最大でトマトジュースでは2割が表示以外の原材料が使われていた)。 ○御福餅(「御福餅本家」の商品、御福餅の表示に不正があった。前日の夕方に作った御福餅に翌日の製造年月日を印字し、あたかも当日作ったように見せかけて販売。御福餅の消費期限は三日間だが、消費期限の印字も同じく一日遅らせていた。こうした「先付け」は1980年には行われていたといい、少なくとも20数年前から日常的に行われていた。また、重さの順に記載しなければならない原材料表示を、「小豆、砂糖、餅米、酵素、保存料」としていたが、実際には砂糖が最も多かった)。 ○賞味期限切れ商品回収(ミスタードーナツのシロップ,無印良品がクッキー500個)。 食品の偽装,賞味期限などの不正を調べてみると,とてつもない数がある。その殆どは告発によるものだが,6〜9月で1200件を超え,前年同期の2.7倍という。内部告発の場合は自らの職をかけてのことだから,かなりの逡巡の後の決心だったろう。だが,そうしたことがなければこれほどの不正は明らかになりにくいだろう。内部告発者に対する法的な保証が作られるべきである。そうした人々の良心が国民の健康と安全を守るひとつのきっかけになっている。 一方で,ミートホープでの偽装では内部告発が農水省北海道農政事務所にあったにも関わらず「具体的な疑義が特定できなかった」とする公文書を作成していた。道庁は「農政事務所から、文書を渡された覚えも、調査を依頼された覚えもない」と全面的に否定。いかにもお役人的な事勿れ主義の対応で,腹立たしい限りである。食品の安全管理に関わる行政が十分な役割を果たしているとは思えない。食品に関わる法律の基本は「性善説」に立っているらしいが,今の日本でこの考え方は通用しないらしい。 不正が発覚した当初,責任をパートタイマー,アルバイトなど現場にいる個人に仕立てようとする場合が多い。その実,経営者が命令していることが発覚している。自らの不正を回避し他人に責任転嫁する無責任さと,食品を扱うものの最低限のプライドと使命感,責任感を持ち合わせない態度は腹立たしい限りである。彼らには食品を扱う資格があるとは思えない。 「バレなければいい」「儲かることなら他人の安全など知ったことではない」「ズルをしているのは自分だけではない」「今までもやっていたのだから」,がその原因である。(関係する)日本人の良心は地に落ちた気がする。「他人様には迷惑をかけない」という,今までの日本を支えてきた簡単な信条はどこにいったのか。「金銭」「社会的地位」「惰性」が,人の心を蝕んでいることは忘れないでいたい。「いつでもどこでも見ている天の目」の存在を忘れた国の行く末はしれたものだ。失ったものを回復するには失った時間の何倍も必要なことを忘れるわけにいかない。 政治家の「記載ミス」,高校の「未履修」などと同様に「みんなで渡れば怖くない」考えで,これからも食品偽装,不正が明らかになる数が増えることは見えている。安心して口にできるものに疑心暗鬼なことほど不幸なことはない。 |
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