今年も間違えましたね |
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2008年03月25日(火) 大学入試も終わり,受験生の多くは新しい進路への準備に忙しいことだろう。以前に比べ大学進学は現役志向が強くなっており,入試の結果は本人のみならず家族の今後にいろいろな影響を与えることになるから,合否結果に一喜一憂するのは当然である。今春の大学入試において,呆れるほどのミスがあった。以下にそのいくつかを分類して書き出してみる。 □ 選択肢に正解なし ・金沢工業大(生物で,神経伝達に関する4択問題に正解なし) ・金沢医大入試(医学部の一般入試「物理」で物体の運動に関する計算問題で正解の選択肢なし) ・立命館大(一般入学試 化学で,「フェニル基」を「ベンゼン環」と誤記し正解なし) ・大阪教育大(生物で正解の「肺炎双球菌」の選択肢なし) □ 問題文に誤りがあり ・立命館大(理系A方式」の物理の電気抵抗に関する問題文に誤り。同大は昨年度「国語」に出題ミスがあり107人を追加合格している) ・成蹊大(法学部一般入試A方式で「国語総合」,「政治・経済」択一の選択方式で、正解が2つある設問がそれぞれ1つずつあった) ・立教大(社会学部,コミュニティ福祉学部福祉学科、現代心理学部映像身体学科「世界史」の設問の1つに史実として誤った記述があり、正解が不可能) ・法政大(理工学部,生命科学部,デザイン工学部の一般入学試験A方式で「物理」で入試要項で指定した出題範囲を超える設問(原子と原子核)が3つあった) ・センター試験(地理Bで,問題文に「高さは水平距離に対して約200倍で表現してある」とあったが「75倍」だった。地形断面図に誤りはなかったため採点上の特別措置は行わず。高校教諭の指摘でミスが判明) ・慶応義塾大(商学部一般入試の地理で,正しくは「総合保養地域整備」と選択肢を表記すべきところを「総合保養地整備」と誤記。日本史でも正解の選択肢を誤記し,両科目とも正解の選択肢なし) ・青山学院大(経済学部地理でタイ・スコータイ王朝の都市名を問う問題で正解がなし。政治・経済で旧ユーゴスラビアの国名を問う問題で正解が複数あり) ・茨城県立医療大学(保健医療学部 小論文で指定文字数と解答用紙のマス目が異なる問が2問あった) ・静岡大学(国語で片仮名を漢字に改める問題で「遠縁(とおえん)」が正答となるはずが,、問題用紙には「トウエン」と誤記) ・東京農工大(「アブシシン酸」と表記すべきところを、誤って大学で一般的に使う「アブシジン酸」と誤記) ・神戸松蔭女子大(国語で空欄に当てはまる接続詞を5つの中から選ぶ問題で,問題文の原文による正答以外にも正答と考えられる選択肢あり) ・高知大(アルミニウムと同じ性質を持つ金属は何かという問題文で「金属元素」と表記すべきところ「遷移金属」と誤記) ・岩手大(「数学2」の範囲にない三次関数の積分を出題) ・和歌山県立医大(数学で3次方程式に含まれる変数の条件を「自然数」とし,想定した答えが導けない問題だった) ・筑波大(前期日程化学の化学反応と熱の関係に関する問題で,計算方法によっては複数の解答が導き出せた。2006年11月に行われた07年度の医学群医学類の推薦入試の小論文でも,問題文中の遺伝に関する専門用語に誤りがあり) ・西南学院大(経済学部と国際文化学部の試験で出題された日本史Bで解答が導き出せない問があり,経済学部17人,国際文化学部で4人を追加合格) ・名古屋市立大(薬学部化学で問題文の1カ所に文章の前後関係を間違え,適切な解答が得られない可能性が生じた) □ 採点ミス ・駿河台大(一般A方式入試国語の採点ミスが判明) □ 出題が不適切と思われるもの ・東京農工大(生物の問題文の一部が特定の教科書の文章に酷似) ・福島大(人間発達文化学類の後期入試の英語で,高校の教科書に英訳文が掲載されている司馬遼太郎氏の文章の英訳を出題した) □ 合否判定ミス ・専修大学(「大学入試センター試験利用前期入学試験」で、合否判定のデータ処理をミスしたため、法学部など全6学部で延べ944人を追加合格した) □ 模範解答に誤り ・長崎大(自己採点用に配布された物理模範解答に誤りがあった。合否には無関係) 上記以外にも入試ミスはあるのだろうが,よくまあこれだけあるかと驚かされる。平成9〜13年にわたって起こった「山形大学、富山大学、金沢大学、埼玉大学、筑波大学における入試ミスにより誤って不合格とされ,経済的側面の損害を賠償,慰謝料が支払われた」ことが忘れ去られていないだろうか。 文科省によると,私立大の12%にあたる71校が入試問題作りを外注。自らは全く作問しない「丸投げ」も18校あることがわかっている。最近の大学生は「学力が低下し,意識が低い学生が多い」などと大学関係者の嘆きが聞かれるが,それを言う前に,せめて時間をかけて準備することができる自校の入試問題の出題内容の点検くらいしっかりしてほしいものだ。入試問題作成は,大学教官にとって大きな負担になっていると聞くが,どのような学力,特性をもった学生を入学させたいかを考えれば,入試関係業務が「自分の研究に関係ない余計な仕事だ」などと思うなら間違っている。自分の研究だけすることが大学教官の仕事ではあるまい。入試問題を外注している大学は,大学として大事なものを放棄している気がしてならない。外注先を予備校など受験産業にすることに問題はないのだろうか。 多くの入試ミスは,問題が秘密裡に作成されるため,問題作成者以外の教官による点検がうまく機能してないことに問題がありそうだ。入試ミスは,当該問題を「全員正解」としたり,追加合格させれば解決する問題ではない。大学に対する信頼を入学前から失わせていることを忘れてはなるまい。 |
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