日々の抄

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  イラクのWMDの報告書が出たが

2005年4月2日(土)

 米情報機関の組織的な問題点を洗い出す独立調査委員会が3月31日、米大統領に最終報告書を提出した報告書によると、イラクの大量破壊兵器(WMD)疑惑に関する情報の収集や分析の誤りがあったと指摘した。つまり「イラクに大量破壊兵器がある」ということに誤った分析・判断があったとしている。

 イラク戦争前にパウエル国務長官(当時)が、国連安保理で脅威の「新証拠」として挙げた「移動式生物兵器関連施設」が、米国の協力者で「カーブボール」と呼ばれる化学系の技術者による「フセイン政権が、トレーラー型の移動式装置をつかって生物兵器を製造・保有している」としたねつ造にある。主要な戦闘後の検証によると、この情報は飲酒癖などで本人の言動に問題がみられ、現場にいたと主張していた1998年の事故の際には、海外にいたことまでもが確認され、すべてが「ニセ情報」であったという。ニセ情報を出した動機は、亡命者として米国での永住権を得ることだったと見られているという。

 WMDを捜索していた米調査団が、現地での活動を2004年12月に対外的に説明することなしに打ち切っていたことが本年1月12日に明らかになっており、同調査団は2004年10月、イラクに生物・化学兵器の備蓄はないとする最終報告書を議会に提出しており、同報告書を提出した際、WMDの備蓄が将来発見される可能性を「5%以下」としていた。また、パウエル氏も2004年9月に議会の公聴会で「いかなる備蓄も私たちが発見することはないだろう」とすでに述べていた。

 イラク戦争の大義であったWMDの存在が誤りの判断だったということは、イラク戦争を開始するに理由が「ほとんどすべての判断が完全に間違っていた」なら、この戦争の責任は誰にあるのか。

 根本的問題は、ブッシュ政権が戦争反対論に十分耳を傾けなかったことであり、情報機関の「深刻な誤り」(または証明することはできないものの、意図的な誤り)の責任も、最終的には大統領にあるだろう。報告書を受け取った米大統領が、自らの責任に何も触れていないことは不可解きわまりないことだ。

 アメリカを一度も侵略したこともないイラクが、直接的にアメリカの脅威になったことはなかったはずであり、開戦の大きな理由であるWMDがなかったのだから、この戦争に正義はない。怪しいから国連決議にも関係なく多くの財産、生命を奪った責任を誰も感じないのは不条理である。日本もその一翼を担っている。「テロリストに屈するな」などという弁明をすることは許されざる事だろう。イラクに対して、戦争を憲法で放棄している日本ができることは沢山あるはずだ。

 すでにイラク人が2万人、米兵が1600人余戦死している。「一人殺せば殺人者、多数殺せば英雄」と聞いたことある。先刻の尊厳死問題に関して、米大統領は3月31日の記者会見で「テリーさんに敬意を払う人々は生命の文化の構築を続けてほしい」と訴えたと言う。笑止千万である。

 殺されていい命などこの世にはない。神の前にぬかずいて、いくらもしないうちに他国民を殺戮する命令を下していることに心の痛みはないのだろうか。

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