映画の内容は国民が判断できる |
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2008年04月05日(土) 文化庁が管轄する「日本芸術文化振興会」から約750万円の助成を受けて作成された映画である「靖国 YASUKUNI」(李纓監督)が,週刊誌に「反日的内容」との記事が掲載され,自民党議員の稲田朋美衆院議員から助成の妥当性を疑問視する声が上がり,全国会議員を対象とした異例の試写会を開くよう2月12日に要請し,3月12日に開かれた。 試写会を要求されたことに対し,日本映画監督協会は3月31日,「強く抗議する」「今後行われる上映活動を委縮させるとともに,表現者たる映画監督の自由な創作活動を精神的に圧迫していることは明らか」,上映中止が広がっていることなどに「大きな危惧を抱かざるを得ない」とした上で「あらゆる映画は自由な発想と意志のもとに作られ,自由に上映されるべきだ」とした声明を発表した。 上映を予定していた映画館の内,大阪,京都,広島それぞれ1館で上映が予定されているが,東京では上映を予定している映画館はない。上映を中止した理由は「上映中止を求める電話がかかったり,周辺で抗議行動があった。近隣や他の観客に迷惑がかかるため,中止を決めた」「具体的な抗議や嫌がらせはないが,不特定多数の人が集まる施設なので,万が一のことがあってはならない」などとしている。 試写を求めた自民党の稲田議員は、3月28日の記者会見で「『事前検閲だ』とか『表現の自由を侵害している』などと批判されたが、私の意図とは違う」と弁明。国会議員向け試写会が開かれた経緯について「文化庁所管法人の助成金が支出されたことを週刊誌の報道で知り,『映画を見せてほしい』と文化庁に求めたが,『公開前に』とか『試写を開いて』などとは言ってない」と釈明。「試写会が開かれたのは、文化庁と配給会社の判断だ」と述べた。だが,4月4日文科相が閣議後の会見で『一部の議員が国政調査権として(内容の確認を)依頼したようだ。国政調査権は本来(両議院の)委員会を通じて行使されるのがルールだ』と述べている。また,文科相は『(稲田議員は)「あの映画に政治的メッセージがあるにもかかわらず,(文化庁所管の独立行政法人から)助成金が出ているのでは」という疑義があるから見せてほしいとのことだった。特定の依頼に対し,国の機関が何かをやるのは基本的によくないと思う』と述べている。稲田議員は『試写会を開いて,などとは言ってない』と語っているのは本当なのか。国政調査権は憲法に基づく国会の権利で,衆参両院のいずれかの議決で発動するものであることを考えると,稲田議員らに大きな思い違いがあったのではないか。 文化庁の高塩至次長は3月25日の参院文部科学委員会で,「日本映画とはわが国の法令により設立された法人が製作した映画。(助成交付の)基本方針をもとに審査が行われ,助成が決定した」と答弁し,助成金交付は妥当との認識を示した。また,文科省は上映中止について「作品発表の機会が嫌がらせや圧力でなくなることは残念なこと。あってはならない」,首相も「もし,嫌がらせなどが原因で上映が中止になるというのであれば誠に遺憾なことだ」と懸念を表明している。 こうした事態に対して,新聞協会,民放連,マスコミ関連労組など各方面から抗議の声が上がっている。「靖国 YASUKUNI」を上映をすると圧力がかかり,「迷惑をかける」から中止するということ聞いて,すぐに日教組大会を想い出した。厚労相に「旅館業法に違反する疑いが濃厚だ」と指摘されながらも,教研集会の会場使用をプリンスホテルが契約解除をした。両者の構図はまったく同じである。プリンスホテルは『大規模な抗議行動により周辺地域が多大な騒音にさらされ騒然となり,また1,000 名を越える警察当局による道路封鎖や通行規制等の大規模警備が行われることが予想される。当ホテルは多数の住宅,学校,病院等に囲まれた環境にあり,実施予定日には多数の学校での入学試験も予定されており,周辺地域の皆さまに多大なご迷惑をおかけすることになります。また,ホテルには婚礼,宴会,レストラン,宿泊の他の多くのお客さまがいらっしゃいます』とその拒否理由を述べ,高裁も使用を許可しているにもかかわらず拒否した。「他の客に迷惑をかける」と言いながら,先約の日教組は客に値しないとでも言わんばかりであった。暴力的な威嚇,圧力がありそうだから「自主規制」するのでは,表現の自由は「声の大きい者勝ち」,「力で言論を封じる」という,かつての日本を支配してきた暗い時代の風潮に酷似しているのではないか。 官房長官は「稲田氏の行動が自粛につながったとは考えないが,嫌がらせとか圧力で表現の自由が左右されるのは不適切だ」としているが,稲田議員が自己の靖国に対する信条を,助成金問題にすり替えているなら思い違いも甚だしい。映画が一般公開された後でも助成金問題を論じることはできるのではないか。助成金の使途が適性か否かということと上映の可否はまったく別問題である。事前に国会議員がひとつの映画を一般公開前に試写するなどということがどれほど異常なことか。政治的圧力で映画上映を中止させようなどと考えているなら,断じて許さざる事である。まるで戦前の「検閲」に思えてくるのは考えすぎだろうか。広くこの映画を国民に公開し,その後に論議すればいいだけのこと。「上映を中止せよと言ってない」と釈明しても,結果的に上映が困難になっていることを深刻に受け止めるべきである。僭越の限りであり,国会議員として配慮不足は否めない。事前に映画の内容が適切か否かを国会議員さんに判断して貰わなく結構。懸命な国民は国会議員さんにそれほどのことを期待していない。官僚のいいなりになっている議員が多い昨今なのに,こういうことになると力関係が逆転するのが不思議でならない。 追記:この記事を書き終わった5日現在に,『東京都内の1館を含む全国8館が新たに上映することを決めた。劇場名は,一部報道された劇場への妨害行動もあったとして明らかにしていない。』と報じられた。上映する予定の映画館名が妨害行為の恐れから公表されないことはやはり異常である。 |
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