日々の抄

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 四川大地震を「人を以て鑑と為す」にせよ 

2008年05月19日(月)

  5月12日に発生した大規模な(マグニチュードMは中国政府発表7.8、米地質調査所は7.9、気象庁は8.0)四川大地震の被害が連日伝えられている。日本国内でも山積する問題があるはずなのに、ニュースもほとんどトップ項目で伝えており、死者が7万人出たとされるミャンマーのサイクロンについての報道と比べると異例な感じがする。相次ぐ余震や2次災害の発生が懸念される中、中国政府はこれまでに2万8881人の死亡を確認、最終的な死者数は5万人を超える見通しという。行方不明者、生き埋めになっている人が多いと伝えられているから更に被害者は増える可能性がある。

  中国外務省は地震発生から3日後の15日、日本の国際緊急援助隊の受け入れをやっと表明。日本の救助隊第一陣31人は地震発生から4日目の16日未明、空路成都に到着し活動を開始している。ロシア、台湾、韓国、シンガポールからの国際緊急援助隊も到着しており、国内外からの義援金は60億元(約890億円)に達している。一方で、欧米民間救助隊へのビザ発給を拒否している。
  各国が義捐金、義捐物資を拠出している。サウジアラビア王国が義援金5000万ドル(約52億円)と救援物資1000万ドル(約10億円)、日本が義援金約5億円と救援隊の派遣、ロシアが救援物資4回分、ノルウェーが2000万ノルウェー・クローネ(約4億1000万円)などだが、米国は50万ドル(約5200万円)という。

  中国での大きな地震の記録は、1976年河北省(M7.8、24万人)、1988年雲南省(M7.6、730以上)、1996年雲南省(M7.0、304人以上)、2003年新彊ウィグル自治区(M6.8、94人以上)などがあり(数字はマグニチュードM、死者数)、チベットでは1997年にM7.9、2001にM8.0の記録がある。
  今回の地震で、その後ダムに亀裂が入ったり、川が土砂でせき止められたりして、各地で洪水の危険が高まっている。新華社通信によると、同省北川県では水量が増した湖の堤防決壊の恐れが生じ、付近の数千人が避難。青川県でもせき止められた水があふれ出し、2000人以上が安全な場所に移動するなど、住民の避難が相次いでおり、今後も被害が懸念されている。

  アジア大陸ではインドプレートがユーラシアプレートに衝突しつづけており、その結果としての大きな地震がたびたび起きている。四川大地震を起こしたと見られる断層が、地表まで達していることが17日、日本活断層学会に入った情報で分かっている。段差は、震源と見られる竜門山(ロンメンシャン)断層帯に沿って見つかり、最大約3メートルの段差が確認されている。同学会に入った報告によると、地表に現れた断層は震源とみられる竜門山断層帯に沿っていて、南西から北東方向に走り、北西の方向に傾いている。ずれた断層が片方の上に乗り上げる形の逆断層で、最大で垂直方向に約3メートルずれていた。地震を起こした断層は、これまでの解析で約30度斜めに傾いているとみられることから、滑った長さは最大で6メートルに達するとみられている。1995年の阪神大震災では、地表面で断層が垂直方向に約1.2メートルずれていたことが確認されている。
  この地震は日本でも「長周期地震」として観測されている。震源の東側で被害が広がっており、「プレートがぶつかり合って地形がひずみ、波が伝わりにくい西側に比べ、東側の四川盆地は断層が少なく地殻も堅いため波が伝わりやすかったのではないか」と専門家は分析している。約15秒に1回という周期の長い波が始まり、長周期地震動が10分以上も観測されていた。いずれの揺れも日本では、人には感じられないものだった。
  米地質研究所(USGS)によると、四川省・広元の西80キロの地点を震源とするマグニチュード6.1の余震が18日午前1時すぎに発生している。新華社通信によると、この余震による新たな被害の報告はないと伝えているが、これほどの規模の大きな余震で被害がないはずはない。この余震は1500キロ以上離れた北京や上海、台北でも同2程度の揺れがあったとみられ、日本列島がすっぽり収まるほどの広範囲で体に感じる揺れがあったという。震源から約140キロと比較的近い綿陽では日本の震度に換算して6弱程度という。

  被害が甚大であった理由のひとつは、中国で耐震設計が十分に行われてなかったことにある。各種建築の耐震性の低さに加え、公共施設の手抜き工事も被害拡大の一因になったとみられる。「オカラ工事」と称する、汚職などが原因で建築費を安くあげた手抜き工事が行われたとも伝えられている。多くの地方で、幹部が使用する建築の耐震性は厳格に守られるが、学校など民衆のための建築では手抜きが横行している。学校の崩壊により900人もの児童が生き埋めになったことが、こうしたことに起因するなら言語道断である。

  一方、日本国内の学校の耐震化率は小中学校が54.7から58.6%、高校が57.5から60.9%(2006〜2007年文科省による)という。つまり、四川大地震程度の地震が日本で起こった場合、同様の被害が現実問題として起こりうることになる。学校は、地震が起こった場合の避難場所になっている場合が多い。避難場所が地震で崩壊した場合、雨露を凌ぐ場所が、冬場は寒さを避ける場所がないことになる。自治体によって学校建屋の耐震建設、耐震補強への対応が大きく異なっている。実施されてない自治体は、予算の都合で実施してないというが、人命が大切にされなければならないことは言うまでもないことだが、もし授業中に大地震が発生したときに、耐震性のない校舎にいる児童、生徒の生命は保証されない。形ばかりの退避訓練をしても、机の下にもぐっても、建物そのものが倒壊したらどれほどの命が失われることになるのか。
 予算の都合は、生命に関わるところから使われるべきではないか。利用者が多くもない高速道路を作る前に、国民の命を守ることに本当に使われるなら、税金が多少多くなっても誰も異論を唱えることはないだろう。役人の無駄遣いを皆無にすることが前提条件であることは無論のことだが。被害が起こる前に予算は使われるべきである。四川大地震を「人を以て鑑と為す」としなければなるまい。

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