日々の抄

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 不便さも必要だ

2008年06月24日(火)

 7月7日に主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)開幕が予定されている。中心テーマは地球環境だそうだが、同時に世界経済を襲っている原油高騰も解決の糸口をつけ、少なくとも、まっとうに働く者が安心して生活できる状況を作ってほしいものである。

 その洞爺湖サミットに協賛するため、全国規模で「ライトダウンキャンペーン」が行われている。環境省によると『ライトアップに馴れた一般の市民一人一人に対して、日頃いかに、照明を使用しているかを実感していただき、日常生活の中で温暖化対策を実践する動機付けを与えていくことを目的』とし、『京都議定書約束期間の初年度であり、サミットイヤーでもある2008年は、6月21日(土)〜7月7日(月)までの間、「CO2削減/ライトダウンキャンペーン」を実施します。以下の2日間については、夜8時〜10時の間、全国のライトアップ施設や各家庭のあかりを一斉に消灯していただくライトダウンを広く呼び掛けていきます』とし、『6月21日(ブラックイルミネーション2008) 7月7日(七夕ライトダウン)両日の夜8時〜10時』を実施。6月21日の参加施設は66,674箇所で削減消費電力量979,068.90 kWh、7月7日の参加施設67,336箇所で削減消費電力量は945,274.67 kWhという。

 これに呼応するように、京都市は17日、市内中心部のコンビニエンスストアの深夜営業を規制すると正式発表。市長が「(温暖化ガス削減という)大きな目標がある。まず自主的な規制を(業界に)求めていく」と述べている。
 さらに、埼玉県は二十四時間営業のコンビニ店などに深夜・未明帯の営業自粛を要請する方針を決めた。県によると、夜間の電力消費量削減のため、二十四時間営業のビジネススタイルに着目し、コンビニ業界以外でも深夜・未明帯のネオンサインの消灯を求め、県民にも生活習慣の見直しを啓発、理解を得たいとしている。この動きは全国の自治体に広がりつつあり、東京、神奈川、横浜が検討中、宮城、福島、茨城、群馬、千葉など11の都道府県、政令都市である仙台、静岡、浜松、名古屋、広島も検討を予定しているという。

 24時間営業している企業はコンビニエンスストア以外もあるが、当然のことながら、コンビニ業界は猛反発している。その理由は、「夜11時から朝7時まで営業をやめた場合でも、冷蔵設備を止めるのは難しいので、照明を落とすことなどによって得られるCO2排出量削減効果は5〜6%。その一方で商品配送が昼間に集中して配送効率が落ちることにより排出量は2%増えるとみており、全体では3〜4%の減少にとどまる」と説明している。CO2排出量削減効果は否定していない。同時に、24時間営業を行うことのメリットとして、防犯・防災上の貢献や、大規模な地震が発生した際にも、ライフラインとして緊急支援物資の提供などを行っているとし、必要性を強調している。コンビニのみならず、深夜の営業がなくなれば、夜間の外出者が激減し、逆に防犯効果が生じるという考え方も成り立つように考えられる。

 24時間営業を始め、深夜の営業を減少させることは単に環境問題、防犯問題だけでなく、現代日本人の生活スタイルを考え直すことになるのではないか。現在は、腹が減ったらいつでも食べ物が手に入る、雑誌を読みたくなったら時間に関係なく立ち寄る店がある。便利であることが当然といった生活から、多少なりとも不自由である生活も必要と思う。確かに、仕事の関係で買い物することが不便であったり、夜間子どもが発熱したときに薬局が開いていたら助かることもある。自分の預金を土日に銀行で下ろすのに、手数料を取られることに疑問を感じているが、一晩中煌々と街頭がついている周辺の街路樹に暗闇が必要であるのと同様に、人間社会も一定の時間帯は休みことが必要なのではないか。18時以降に商店が閉じてしまう都市は外国では普通のことで、そのことに馴れていれば時間を差し繰りしてそれに合わせればいいだけのことである。そうした努力が必要なのではないか。

 「民間の自由な経済活動を規制していいものか」、「特定の業者だけを悪者にしても根本的な解決にはならない」とする考えがあるだろうが、環境問題を考えれば、少なくとも今までのように便利さだけを追求し続けてきた生活を変えるいいきっかけになるのではないか。キャンペーンで数時間だけ夜間の照明を消しても根本問題の解決につながりにくいだろうが、前に進むための貴重な具体的な一歩になるのではないか。

 以前の日本では、18時過ぎに商店が閉まっていた生活をしてきた。そうした生活から「自分を社会に合わせる」「辛抱する」ことを学び取ってきたのではないか。便利さだけを求める人間は、自分を周囲に合わせることを忘れている。街から無用のイルミネーションが消え、深夜営業がなくなれば、長い間見ることのなかった「天の川」が都会でも見られるかもしれない。

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