日々の抄

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 越後屋、そちも悪よのう

2008年07月08日(火)

  世の中、官民問わず不正の横行を耳にし、怒りを通り越して諦めに似た虚しささえ感じされられる昨今だが、教育界でどうしても許し難い不義、不正が発覚した。

 大分県の教員採用で贈収賄事件があった。それも教育委員会の幹部が積極的に関与していたという。現在判明している不正の中心人物は、由布市教育長のN(当時県教委審議監)、実行役が県教委参事E(当時県教委義務教育課人事班課長補佐)、依頼者、仲介者が県教委義務教育課参事Y(当時小学校教頭)、その妻(佐伯市立小学校教頭)、および小学校校長Aだが、これから逮捕者が更に増える可能性は十分ありそうだ。

 07年度の小学校教員の採用試験で、当時の参事兼教育審議監のNが受験者の名前を示し、当時県教委義務教育課参事だったEに合格させるよう指示したと供述しているという。挙げた名前は10人前後で、Yの長女が含まれていたという。教育審議監は県教委ナンバー2で、Nは教員人事の実質的な責任者だったという。

 調べによると、N、EはY夫婦の長女の採用に便宜を図った見返りとして、06年9〜10月にそれぞれ100万円相当の金券をY夫婦から受け取った疑い。試験は06年7月に筆記などの1次試験、9月に面接などの2次試験があった。1次は489人が受験。うち119人が2次に進み、長女を含め41人が合格した。Eの供述によると、当時は採用試験の事務を担当し、1次試験の採点終了後に受験者全員の得点を記した表をNに見せた。その際に10人前後の受験者の名前を示され、「合格ラインに入れろ」と指示されたという。Y夫婦の長女も含まれ、Eは「長女の1次、2次試験の点数をかさ上げして合格ラインに届かせた」と供述しているという。

 一方、大分地検は5日午前、今年度の教員採用試験で子どもを合格・採用をさせる見返りに400万円を渡したとされる小学校校長Aと仲介役のYを起訴した。起訴状によると、A、Yは共謀し、Eに、Aの長男と長女を08年度の教員採用試験で合格・採用するように依頼した。1次試験合格発表(07年8月17日)前の8月9日に、別府市内のホテルで百貨店商品券100万円、最終合格発表(10月9日)後の10月14日にEの自宅で現金300万円を渡したという。
 Y夫婦の長女は昨年4月に採用、小学校校長Aの長男、長女は今年4月に採用され、いずれも県内の小学校に勤務しているという。

 Y夫婦は調べに対し、「教育審議監に謝礼を支払えば採用で便宜を図ってもらえると、よく聞いていた」と供述していることが6日に分かっている。また、Yが3月、佐伯市内の小・中学校長から参事(課長級)に昇進する際、県教委の現職幹部に金券20万円を贈っていたことが判明している。受け取った幹部は授受の趣旨は「あいさつ」名目と説明。さらに昇任などの人事異動に絡んだ金品授受が他にも行われていることも証言している。関係者によると、Yが幹部に金券を贈ったのは今年3月。異動は翌4月だったが、昨年10月には参事就任がほぼ内定していたという。県教委職員の人事や校長などの管理職への昇進を巡り、関係者は「人事の前後には、モノ、金が動く」との指摘があり、金品授受の横行する体質が今回の採用試験を巡る汚職事件につながったとみられているという。

 Nは07、08年度の採用試験で、少なくとも30人以上を合格させるように口利きを受けていたことが、関係者の話で分かっている。うち、自力で合格した受験生もいるが、半数近くを合格させるため点数を加点したいう。今回の事件で最も許し難いのは、『合格点に達していた受験者の減点などの改ざんをしていた』とみられことにある。裏採用ルートがあり不正が常態化していたことがあったとしても、金が絡んで、教育に情熱を持ちつつ、「本来は合格していたかもしれない」にもかかわらず、はじかれていた受験者がいたことは明白である。いったい採用試験での1点を稼ぐためにどれほどの時間と気持ちを割いているのかを贈収賄で逮捕された関係者は考えたことがあるのだろうか。自分の子どもだけ「有利になればよい」などと考えている人物が子ども達の前でいったいどんな教育をしてきたのか。人として恥ずかしさを覚えなかったのか。意図的に採用試験の点数を減点したことは立派な犯罪行為である。そんな人物が子どもに「道徳」を説いたり、若い教員に人としての正義を指導できるのか。不正を行った段階で教育関係者としての資格を失っていると思うべきである。

 NとEは職場が変わっても何回も上司と部下の関係にあったという。癒着をもたらす弊害はその辺から起こっているのではないか。捜査が進めば、更に事の深刻さが浮き彫りになってくるかもしれない。特定の受験者の点数を簡単に上乗せできる採点システムについて、県教委は「不正を100%防げるとは言えない」と言っているが、事の重大さを認識しているように思えない。
 不正を行った御利益の結果、教壇に立っている人物が少なからずいるはずである。当然の事ながら、そうした人物は不正との関係が明確になった段階で即座に教壇を降り、再び教壇に立つ意志があれば次年度の採用試験を受けるべきである。また、今回の贈収賄事件に関わった関係者は、教育関係の仕事を辞めるべきである。なぜなら、今回の事件で多くの児童、教育に情熱を傾けたくても不正によって教壇に立てないでいる若者を傷つけているからである。金のために不正を働いた人物は児童の前で語る資格はない。当然、懲戒免職に値するだろう。彼らの行為は万死に値する。諭旨免職などで事を済まそうと思ったら、同様の事件の再発が予想できる。

 Yが教委の参事に昇進したとして、金券20万円を受け取った県教委の現職幹部が、その金額を「あいさつ」名目と語り、「どこが悪いのか」と言わんばかりな物言いは常軌を逸している。今の世の中で「転勤のあいさつ20万円」が社会通念上理解される金額とは思えない。まるで「口利き料」の気配さえ感じる。

 今回の事件で、「教員はずるいことをしているのに恥ずかしくないのか」という論評が当然起こってくるかもしれない。しかし、今回の事件は金と私情に目がくらんだ愚かな「教員を指導する立場にある教委幹部、現職の校長、教頭の一部」が起こしたことである。「こんなやり方が存在するなんて、信じられない。現場で一生懸命頑張るすべての教員に失礼だ」と怒りをぶちまける、モンスターペアレントに悩みながらも日々努力している教員が教育現場を支えていることを忘れてはなるまい。

 大分で起こった事件が大分だけの話しで終わってほしいと秘かに思っている。そう思うのは考えすぎだろうか。

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