日々の抄

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 ここに泉は絶えず

2008年11月11日(火)

 先週、前橋市内でアマチュアオーケストラのコンサートに行った。群馬シティーフィルハーモニーの43回定期演奏会であった。曲目は、第1曲 ヴェルディー:「シチリア島の夕べの祈り」序曲、第2曲 シベリウス:4つの伝説曲より「レンミンカイネンと島の娘」、「トゥオネラのレンミンカイネン」第3曲 シューマン:交響曲第3番「ライン」であった。なかなかいい演奏だった。第3曲はよく知られている曲で、演奏後はアンコールがいつまでも終わらないほどだった。

 群馬シティーフィルハーモニーは、現在の団員90名。1986年に「高崎市民オーケストラ」と「前橋フィルハーモニーオーケストラ」が合同してできた。歴史をひもとくと、「高崎市民オーケストラ」は、群馬交響楽団の前身の高崎市民オーケストラ(映画「ここに泉あり」で知られている)から続いている。「前橋フィルハーモニーオーケストラ」は戦後間もなくはじめられた「前橋室内楽団」の流れをくんでいる。私の父は団員のひとりで、チェロを弾いていた(その一端は拙HP「天想人界」内の「ピアノトリオNo39アマチュア音楽家たちの一断面」に記してある)。
 群馬シティーフィルハーモニーの代表は、高崎市民オーケストラの草創期のメンバーであり、合同前の「高崎市民オーケストラ」代表の安藤直典(フルート奏者)さん。群馬シティーフィル設立とともに就任し、現在も現役フルート奏者として活躍されている。コンサートの前にロビーでフルート四重奏の演奏を聴いた(「とおりゃんせ」と「サウンドオブミュージック」の抜粋)。安藤さんの演奏は安藤さんが若き頃、今から50年も前に聴いた記憶が甦ってきた。父から高崎に素晴らしいフルート奏者がいると聞かされていて、何度かその音色をコンサートで聴いていた。その音色を再び間近で聴くことができ感激であった。安藤さんは戦後群馬県のアマチュア音楽活動の歴史そのものである。父が存命なら百歳を越えているから安藤さんのフルート歴が長いことは想像できる。

 前橋、高崎をはじめ群馬県には各地に合唱団、吹奏楽団、交響楽団がたくさん活躍している。かつてのアマチュア音楽は「素人だから」という発想がないわけではなかったが、現在は多くの人の耳も肥え、プロ顔負けのアマチュアがいる。音楽を業にしているか、別の仕事を生活の糧にしているかの違いがあるにしかすぎないのであって、音楽を楽しみ音楽を極める点においては違いはないはずである。アマチュアがコンサートを開くことだけに精を出していると、音楽を楽しむという原点を忘れかねない。父が語っていた、「ほんとうに好きなことは仕事にしないことだ」という言葉を思い出す。音楽は聴くのでなく演奏する方が楽しいのは間違いなさそうだ。「ここに泉あり」が脈々と群馬の地に引き継がれているのは嬉しい。

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