日々の抄

       目次    


 ご乱行の極みも甚だしい

2009年2月24日(火)

 景気の悪化が深刻な経済状況の中、年間自殺者が3万人を越え、3月末には派遣契約切れの所謂09年問題を迎え、深刻な事態を憂慮されている。そんな中、日本経済の行方を指揮する立場にいるはずの中川前財務相のご乱行には呆れるばかりである。

 連日報じられているように、同氏はローマで開かれていた主要7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)の最後の14日の記者会見において、時折、目を閉じるなど、眠気をこらえている様子で、呂律が回らず、言語不明瞭な様は、全世界にその不心得と醜態を晒し、多くの日本人が「破廉恥な行為」と思ったに違いない。彼の行為は日本人への信頼を失わせるには十分だった。あるイタリア人に「イタリア人にもあんな人はいない」と語らしめている。
 初めてその様子を見たとたんに、「酔っぱらいの醜態」と見た。同氏が大臣を辞するまでの経緯は、麻生内閣の行方をますます怪しくした。

 同氏は記者会見の直前の行われたロシア財務相との会談中、「麻生総理」を「麻生大臣」と言い間違え、足元もふらついていた。会談に同席したロシアの外交官は「頭のスイッチが切れたようだった」と語ったという。
 同氏は帰国後、「記者会見での出来事は(飲酒とは)直接は関係ない」。「薬を朝昼晩飲み、量が多かった。体調が合わなかった。申し訳なかった」と陳謝。飲酒については、会見前のG7昼食会で乾杯のためのワインを「たしなむ程度で口にちょっと含んだ」だけと述べ、それ以外の飲酒を否定していた。自らの進退については「罷免されない限り、大事な時期なので職責を全うしたい」と、辞任する考えがないことを強調。だが、同じ日の夜になって、一転、この席でジントニックを3杯か4杯飲んだと思うと飲酒を認め、「程度問題だがほとんど飲んでいない」「本当に口をつけた程度」と釈明した。薬の服用だけが原因で呂律が回らなくなることは考えにくいし、もしそうなら、記者会見はやめるべきであった。

 首相は当初、中川氏に対し、「続投」を指示したものの、世論の強い批判、国会で追求から、本人が辞意を表明するや、「体調等々、ご本人が熟慮した上での決断だと思いますんで、大変、厳しい決断を自分でされたんだと思いますが、意思を尊重したいと思います」とし、飲酒に関しての責任はに対し、「ああ、全然ないと思います。全然ない」、「あの、これまでやってこられたこの4カ月少々、中川大臣として、金融担当大臣として、財務担当大臣として、きちんと仕事をしてこられたと思っております。世界からの評価も極めて高かったと思っておりますんで、その意味に関して、任命責任というんであれば、仕事に関しては私はまったく優秀な人を選んだと、私は今でもそう思っております。ただ、本人の、先ほど言われたように、申し上げたとおり、体調などなど、いろんな理由があって、こういった形になったのは、はなはだ残念だとは思いますけれども、そういったことも考えて、任命責任があるというんであれば、任命した責任、私にあると、それはそう思いますよ」、政権への影響に対し、「特にないと思います」と楽観的な言葉を並べた。

 会見での醜態の直後、中川氏はバチカン博物館を観光した。到着時から足取りはフラフラとおぼつかなく、言葉もはっきりせず、案内役の説明を聞かずに歩き回ったほか、観光客が近づき過ぎないようにするための高さ約30センチのさくを乗り越えて石像の台座に触るなど、触ってはいけない展示品を素手で複数回触ったりした。そのため警備室の警報が少なくとも1回鳴ったという。同氏の関係者は「体調不良が原因」などと述べているが、体調が思わしくなかったら、観光は控えるべきだったのではないか。フィレンツェであった大学生の落書き事件とは比べものにならない醜態といえるだろう。

 度重なる恥の上塗りに関わる、みっともない言い訳と顛末は、子ども達に「あんな大人になるなよ」と言わねばなるまい。世界中に恥を晒したことに対し、一大臣を辞するだけで済む問題とは思えない。時代が違えば、家禄没収、蟄居閉門、お家断絶の切腹ものである。今回の行為は、酒好き代議士の一時の行為では済むまい。日本国への信頼を失墜させた罪は重く、彼の政治生命は終わったのではないか。一日も早く国会議員としての職も辞することを勧める。
 彼の行為から、日本人がよく言い訳に使う、「酔ってのことだから」は通じないことを学ばなければなるまい。

<前                            目次                            次>