日々の抄

       目次    


 「マッチ一本火事のもと」

2009年2月27日(金)

 2月になって大規模な火災が海外で起こっている。
 韓国・火旺山で9日、枯れ草に火をつけて豊作などを祈る「野焼き」の祭りの会場で、放たれた火が乾燥した空気と強風で、見物客に向かって一気に燃え広がった。この火災で4人が死亡、64人が重軽傷を負ったほか、2人が行方不明となっている。日本でもあちこちで「野焼き」をしている。県内でも渡良瀬遊水池で大規模な野焼きをしているが、けが人が出たと聞いたことはないが、その煙は20キロ先の洗濯物も汚すと聞く。
 北京でも、国営・中国中央テレビ新社屋にある付属高層ビルで9日夜火災が起きている。警察によると、同テレビの従業員が、北京中心部などの雑踏地区では禁止されている火薬が多く入った花火を使ったことが原因という。火災では、消防士1人が死亡、7人が負傷している。

 これらの火災は人為的なものだが、自然現象がもたらすと思われる大規模な火災がオーストラリアで起こっている。7日、オーストラリア南東部で山火事が発生し、3週間経過した現在も消火に至ってない。消失面積は埼玉県の大きさ程度というから、その大きさは尋常ではない。この火災での死者は300人におよびそうだと案じられている。火災の原因は、一説によると放火説があり、捜査中だがそれだけではないという。
 オーストラリア南東部のメルボルンでは1月28日〜30日に日最高気温が43℃以上の日が続いていた。オーストラリア気象局によると、7日には日最高気温がメルボルンでの100年以上の観測史上の記録となった46.4℃となり、オーストラリア南東部では長期間にわたって少雨傾向が続いていて、メルボルンの1月の月降水量も1mm(平年値:46.1mm)だったという。また、1月末から2月初めにおいて、ニュージーランド付近で高気圧が平年より強く、オーストラリア南東部では低緯度側からの暖気が入った(下図参照)と見られる。また、この高気圧が強かった主な理由は、インドネシアから日付変更線付近にかけての熱帯の対流活動が平年より強かったためと考えられている。(日本の最高気温は41度程度だが、07年パキスタンでは53度を記録している)。
 こうした高温、乾燥の状態に、落雷も原因のひとつと考えられている。積乱雲ができると、降水が伴うはずだが、地上付近が暑い場合、地面に届く前に蒸発してしまうが、落雷は起こるという。火災が発生すると、油分を含んだユーカリの森が被害を大きくしていると考えられている。

上空約1500m の平均気温と風の状況(1月28日〜2月3日の平均)
2009/2/9 気象庁報道資料より

 火災発生の翌8日に、「火災現場から一頭のコアラが発見され、消防隊員に手を添えてペットボトルの水を一気に3本飲みほし、多くの人びとの励みになった」と伝えられた。その様子は何度見ても、コアラの仕草がほほえましく、ほっとさせてくれるものだった。
 だが、21日、AP通信は、救出日を「8日」でなく「1日」に訂正した。消防士が消火していたのは、7日に発生して死者200人以上を出した大規模な森林火災ではなく、同州で1月29日に発生し2月7日に鎮圧した森林火災だったという。動物美談が作られた感じがして、ちょっぴりがっかりさせられたが、コアラが救出されたことは確かなこと。何遍も懲りずに自分の発言を取り繕っている、どこかの国の政治家より正直な訂正記事だった。

 火災は全ての財産を奪い、命を失う危険性が多大である。たったひとつのマッチの火が大火災を引き起こすこともある。自分を支えているものを時々確かめてみることが必要なようだ。

<前                            目次                            次>