日々の抄

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 過剰反応ではないか

2009年4月26日(日)

 23日未明、東京・赤坂の公園で人気グループSMAPの草なぎ(下注参照)君が全裸であぐらをかき大声で叫び、付近の住民の要請で出動した警察官に、保護用シートでくるまれ公然わいせつ罪容疑で逮捕されたという。逮捕から約4〜5時間後の飲酒検知では、呼気1リットル中0.8ミリグラムのアルコール分が検出された。道路交通法で、酒気帯び運転となるレベルの同0.15ミリグラムをはるかに超えており、かなりの飲酒をしていたという。同日、草なぎ君宅の家宅捜索が行われたという。
 彼は日韓友好関係に寄与したり、沢山のCMに出たり、地デジの広報キャラクターとしてTVでの露出度が多いためか、総務大臣が「めちゃくちゃな怒りを感じる。絶対に許さない」、「国民に(テレビの買い替えなどで)負担をかけるアナログ放送停波のキャラクターなのに恥ずかしい。最低の人間としか思えない」と厳しく批判し、地上デジタル放送普及への影響は「ゼロとは言えない」とと怒りをあらわにした。

 その後、泥酔から覚めた当人は事の重大さを悟り、大いなる反省の弁を述べている。所属事務所は反省の弁を述べる報道関係者を前にした場で、生中継は御法度などと、手前勝手な防戦体勢だったという。

 彼がマスコミの露出度がいかに高いといえど、NHKがトップニュースで伝えたり、24日には民放の臨時ニュースで釈放を伝えたことに異常さを感じる。ひとりのアイドルが、素っ裸で公園で声高に叫んで逮捕され、釈放されたことが臨時ニュースになるとは、いかに日本国が太平楽なことかと呆れた。総務大臣も「最低の人間」発言が多くの抗議を受けるやいなや、発言を撤回している。ファンが抗議しただけで「煮えくりかえっていたはらわた」が、訂正される安直さはどんなものなのか。
 鳩山総務相は、鹿児島県議選を巡る志布志事件について、「冤罪と呼ぶべきではない」と発言したがその後陳謝。「私の友人の友人がアル・カーイダなんです」で物議を醸し、死刑執行に対し、「大臣が判子を押すか押さないかが議論になるのが良いことと思えない。大臣に責任を押っかぶせるような形ではなく執行の規定が自動的に進むような方法がないのかと思う」と述べており、「瞬間湯沸かし器」擬きの発言から見ると、その言葉の軽さは「お坊っちゃまの」軽薄さを感じざるを得ない。

 温厚そうに見える草なぎ君が公然わいせつ罪で逮捕される行為に至ったことにはそれなりの理由があったに違いない。行ったことを肯定する理由は見あたらないが、全裸になった近くに衣服がきちんとたたんであったと伝えられている。それが本当なら少なからず悲しいものを感じる。多方面に迷惑をかけたことも否定できまい。日頃、好印象の人物がこうした行為に走ったことの危うさを感じないわけに行かないが、国中で騒ぎ立て連日マスコミが詳細に伝えるほどのことなのか、甚だ疑問である。彼を「最低の人間」と叫んだ人物は、ローマでベロベロに酔って国の恥を晒した同僚に同様の言葉を発したのか。また公然わいせつ罪容疑で家宅捜索が行われたことはいかにも不自然である。薬物使用を疑ってのことだろうが、尿検査を先に行っていれば不要だったのではないか。以前だったら、彼が有名人でなかったら、きつい灸をすられるだけで済んだかもしれない。今回の事件に対するマスコミの対応には、付和雷同的な、過剰反応と危ないものを感じないわけにいかない。

(注:なぎは弓へんに剪。機種依存文字)

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