壮大な浪費は終わった |
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2009年5月8日(金) 例年になく長期の5月連休が終わった。不景気だの経済低迷だの喧伝されているわりには、観光地への人出の多さは記録的だったらしい。その大きな原因のひとつは、高速道路の利用料1000円にあったという。ETC利用者のみを対象とすることに不合理さを感じながらも、安いに限ると割り切って、あわててETCを取り付けた人、品切れで取り付けられず憂き目を見た人、それぞれらしい。 大型連休中の高速道路の渋滞は記録的だったという。最大渋滞距離が68キロ、5時間もの渋滞。10、30キロ以上の渋滞は例年の2倍で、ETC利用ゲートが一般ゲートより混雑し渋滞の原因になっていたのは皮肉な結果である。経済効果を期待しての、「千円高速」というが、数百キロ先の四国にまでうどんを食べに行ったり、安いのだからとにかく高速を利用したいと思うことは個人の勝手だが、「安いから使わないのは損」と思ってのことなら考えものである。 高速道路の利用者が多かった一方で、JRの新幹線、特急、急行列車利用状況は7%減少し、フェリーの利用者も減少し、最大の問題は、CO2排出量が2.5倍になり、「千円高速」の恩恵に浴せない、トラックをはじめとする物流への支障が大きかった。休日のレジャーで「千円高速」が使えるからといって「遊び」で大渋滞を引き起こされ、時間を指定されている物流関係者の腹立たしさはあまりある。生活がかかっている人が困るような渋滞を引き起こしていることを、「千円高速」利用者はどう感じているのだろうか。 ことしの大型連休は、ETCを取り扱う役人の天下り先を喜ばせ、「内需拡大につながり国民に喜んで頂いた」と相好を崩し喜色満面の首相に「これで選挙が有利になった」と喜ばせたに違いない。沢山の自動車が全国を動き回ってCO2排出量を増して環境に悪影響を与えている一方で、エコ商品購入に「エコポイント」を出していることの大きな矛盾をどう説明するのか。「千円高速」の原資である5000億円のツケは、数年後にやってくる消費税増税で元を取られ、ますます生活が貧することになることは見えている。何十兆円にもおよび追加予算が将来の国民への大きな負債になることが見えているにも拘わらず、執行されようとしている。母子加算をやめながら、100億円以上もかかる不要不急のマンガ博物館のような箱ものを計画しようとしている思い違いは、民意を汲もうとしていない現れだろう。 ことしも例年通り、交通大渋滞の報道を見ながら、「混んでいるところに行く人の気が知れない」と思いつつ、どこにも出かけずに、大型連休が終わった。ただ、いつもと違っているのは、「千円」にうまく乗せられている人びとの姿を腹立たしさを感じながら見ていたことである。「定額給付金には反対だが、取り敢えずもらっておく」と同じ発想のような気がする。 |
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