日々の抄

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 いまさら何を言ってるのか

2009年6月20日(土)

 新学期が始まって2月が経過した。新しい環境で学生・生徒は意欲にもえて新生活をはじめたに違いない。努力の甲斐なく希望の進路先を求められずにいても、新たに進む道をはじめた学生・生徒にとって信じられない誤算が未だ判明しているのは驚きである。

 それは、新学期が開始されているにも拘わらず、入試判定の誤りが公表されていることである。大学のみならず、高校においても然りである。
大学では、
 4月末、中央大学商学部入試で日本史の出題ミスがあったと発表された。2月13日の商学部1と17日の商学部2の近現代史の出題に誤記があり、正解が二つあったり設問が成立しないことが出版社の指摘で判明したという。正解を追加したり、誤った設問は全員を正解扱いとした結果、5人が追加合格となり、合格者の中でも4人が志望の学科・コースへの優先順位が繰り上げになり、9人には謝罪し、別の大学に入学し、入学金や授業料を支払っている場合はその分の金銭補償も含めて対応するという。
 群馬大学は5月8日、工学部一般選抜前期日程の「生物」の問題で2問の出題ミスがあり、1人を追加合格にしたと発表。入試問題を分析する出版社からミスの指摘により、アミノ酸の遺伝配列の構成比などを問う設問で、解答の前提となる数値表に誤りがあり、2問で正解が導けなくなっていたという。受験者全員を正解とし合否判定を再度実施した結果、1人が追加合格となったが、追加合格した学生は、すでに県外の他大学に入学。同大は教員ら8人の出題委員会が作成して3回の校正を実施。さらに、約25人の入学試験委員会が2回校正したが、ミスを見落としたという。
 岐阜大学は5月19日、工学部社会基盤工学科の前期入試で合否判定にミスがあり、1人を追加合格にしたと発表。該当者別の国立大学に通っているという。同大はセンター試験と2次試験の合計点で合否を判定しているが、パソコンで合格者を登録する際、合格点に達していた受験者が登録されなかったという初歩的なミスを、入試資料を確認していて発見したという。
 阪南大は6月12日、1月実施の入試で出題ミスがあり、1人を追加合格したと発表。同大によると、担当の教員が来年の入試問題を作成するために試験問題を見直していた際に、日本史の設問で文字の脱落を発見。受験者54人に3点を加えたところ、経営情報学部で1人が合格となった。この受験生は既に別の学部に入学、現在の学部に残ることを希望しているという。
 明星大6月16日、1月に実施した一般入試前期A方式で、人文学部などの選択科目の「日本史B」に出題ミスがあったと発表。問題の選択肢に正解が含まれていなかった。この科目の受験者全員を正解として合否判定をやり直し、6人を追加合格扱いとした。ただ、1人は別日程で合格して入学。5人はほかの大学に入学し、同大入学は希望しなかったという。
 神戸女学院大は6月17日、1月の一般入試で英語と英語リスニングの問題にそれぞれ出題ミスと採点ミスがあったと発表。採点し直した結果、18人を追加合格にした。京都市内の出版社から6月3日にミスを指摘されて発覚。全学部共通の英語の四択問題で正解が特定できなかったほか、文学部英文学科の英語リスニングの四択問題で、本来は不正解の選択肢を正解として採点していた。追加合格の18人のうち7人は同大学の別方式の入試に合格し入学していたが、残る11人は別の大学や短大に進学していたという。

高校では、
 沖縄の県立高校の入試合否判定会議で合格者の生徒に対し、作業の過程で校長が誤ってその生徒の欄に印鑑を押さなかったことが原因で不合格になったという。合否判定で通常行われる2重、3重のチェックも行われてなかったという。沖縄では、2007年に教員採用試験の採点ミス問題が発覚しており、その経験が生かされてなかった。
 兵庫県内公立高校入試では、県立145校で答案を再点検した結果、84%にあたる122校で採点ミスがあったという。ミスは1447分、計1522件に及んだが、いずれも合否に影響はなかったという。合格者の答案でミスがあったのは1325人分。再点検で726人が減点、不合格者の答案では122人分にミスがあり、63人が加点された。合格者の中には、30点加点したケースもあったという。学校によっては45人分52件に及んだケースもあったという。
 その後、兵庫県内の公立高校入試の採点で2005〜08年度入試の答案計約7400人分を調査した結果、新たに230件の採点ミスがあったことが6月12日判明。ミスは計303件、297人となったという。
 群馬県内では、中学校で作成する高校入試の内申書が30人分記載ミスがあったことが5月末に判明している。ミスは、必須教科の評価、選択教科の教科名と評定、意欲などを評価する「観点」の記入漏れ1件など計42件という。高校側からの問い合わせで同校が調査書を点検し記載ミスが発覚したもので、記載ミスによる合否判定への影響はなかったという。

 いずれの入試判定ミスも、受験生の人生を左右するであろう入試に対する、注意深さと真面目さ、プロとしての意識があれば回避できるものばかりである。ほとんどは外部からの指摘によってミスが判明し公表されているが、陳謝し経済的保証を行えば済むという問題ではない。新学期が始まって2月も経過してから、入学を許可されても、時間的、精神的ハンデは挽回できるはずはない。得られるはずの人間関係も損なわれていることは大きい。学内で、その後の点検でミスが発覚している場合もあるが、なぜ事前にそれができなかったのか。
 兵庫県の県立高校のお粗末な累積的ミスは信じがたい。高校に対する不信感がどのような大きさなのか、関係者は原因となっていた、入試システムと仕事に対する真剣さを再考し、今後の行動で示すべきである。入試という多数で行う作業では、ミスがあっても自分だけの責任ではないなどと考えがちである。人間誰しもミスをするものである。どのようにして点検、再点検をしてミスをなくすかの方法論が重要である。25人もの人間が校正してもミスが生じているのは、能力の問題としか考えられない。
 入試ミスが判明すると関係者は恥ずかしい思いをするはずである。ミスは公表されているものだけなのだろうか。これだけの初歩的なミスが報道されると、公表されてないミスが他にないか、疑わしくなるのは考えすぎだろうか。「ミスが合否結果に影響しなかった」は、まったく弁解に通じるものではない。

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