子どもを地震の犠牲にしていいのか |
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2009年6月21日(日) 6月16日、文科省から「公立学校施設の耐震改修状況調査の結果」が4月1日現在の状況として発表された。それによると、 ・ 耐震化率:幼稚園60.1% 、小中学校67.0%、高校67.8%、特別支援学校82.8%。 ※大規模な地震によって倒壊等の危険性が高い(Is値0.3未満=Is値は震度6強以上の大規模地震で倒壊の危険性があるとされる「構造耐震指標値)」)と推計される施設:小中学校については7,309棟。 平成20年度予算繰越分:約4,300棟 (当初、1次・2次補正)※平成21年4月1日時点で実施中又は繰越されている耐震化事業 平成21年度当初予算:約1,500棟、 平成21年度補正予算:約1,500棟 ・ 耐震診断実施率:小中学校については95.7%(対前年度1.9ポイント増) ※耐震診断実施中と平成21年度中実施予定がある棟数を加えた場合:97.5% ・ 耐震診断結果の公表状況: ・公表している設置者:1,560設置者(83.0%)、・現時点で未公表の設置者:320設置者(17.0%)というものである。 平成21年度補正予算実施後は、公立小中学校の耐震化率は約78%(±数%)と推計という。 因みに、都道府県別の耐震化率は以下のグラフの通りである。 出典:http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/21/06/1270297.htm 小中学校で倒壊の危険性が高い建物数が最も多いのは大阪府の527棟で、北海道438棟、兵庫351棟、少ないのは、沖縄15棟、鳥取36棟、佐賀45棟などである。 群馬県での、4月1日現在の県内の全公立学校の耐震化率は、70・4%(前年比3・7ポイント増)。学校種別では幼稚園65・9%(同4・2ポイント増)、高校 84・6%(同1・8ポイント増)、特別支援学校91・0(同0・4ポイント増)で、全国平均を高校は16・8ポイント、特別支援学校が8・2ポイント、幼稚園が5・8ポイントそれぞれ上回ったが、小中学校は4・0ポイント下回っている。 昨年、中国四川の地震で倒壊した校舎の下敷きになり多数の児童生徒が犠牲になり、未だ発見されてない数も少なくない。校舎の耐震化を急がなければ、大地震が発生すれば、どの都道府県であっても犠牲者が出ることは自明である。最も耐震化が進んでいる沖縄でも15棟が危険であり、最も遅れている大阪府の場合には、527棟が、全国で7,309棟もが危険に瀕している。最も安全で然るべき校舎がこんなことでいいはずはない。何をおいても最優先で安全を確保すべきであり、地震による犠牲者が出ていないのは、単に運がいいだけである。 改正地震防災対策特別措置法による公表が義務付けられた耐震診断結果が未公表になっている自治体も少なくない。その理由のひとつが「耐震性が低い校舎を使っている子供らの不安をあおる」のだという。聞こえはいいが、行政の至らなさを美辞麗句で隠しているだけである。 昨今、地方自治体の財政逼迫による予算削減が伝えられているが、「マンガの殿堂」の類を100億円を越える予算、還元されることのほとんどない議員の海外視察、使途不明な特別会計、天下りによる無駄遣いの前に、児童・生徒の安全をなぜ確保するための努力と予算計上をしないのか。 選挙が近づき、「国民の視点に立った政治」「命と安全を大事にする」などという候補者による耳障りのいい演説を耳にするが、この国は、命の危険が分かり切っていることにも予算を使おうとしない、命が大切に考えられてない国である。 やがて来るであろう大地震の朝、子どもを送り出す親は、まさか自分の子どもが校舎の下敷きになって帰らぬ身になるなどとは考えないだろう。だが、それは現実に起こりうることである。 |
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