日々の抄

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 オバマ氏の受賞が決まったが

2009年10月13日(火)

 ことしのノーベル平和賞をオバマ米国大統領に与えられるとノルウェーのノーベル賞委員会から発表があった。受賞理由は「・・・彼は国際的な外交と諸国の人々の協力を強化することに並はずれた努力をした。委員会はとりわけ、オバマ氏の核なき世界についての理念や取り組みを重視する。オバマ氏は、大統領として国際政治の中で新たな機運を作り出した。国連やその他の国際機関が果たすことのできる役割を主張したことで、多国間外交は、中心的な位置を取り戻した。最も困難な国際紛争を解決する手段として、対話と交渉が優先されるようになった。核なき世界の理念は、軍縮や軍備管理交渉に力強い刺激を与えた・・・・」などであるという。
 大統領就任間もない4月、チェコ・プラハでの演説で「核兵器を使用した唯一の国」としての米国の道義的責任に触れ、「核なき世界」を目指す考えを表明したことや,ロシアとの核軍縮交渉に着手し,また9月に「核不拡散と核軍縮」をテーマにした国連安全保障理事会の首脳会合を主宰し、「核兵器のない世界」を目指す歴史的な決議を全会一致で採択したことが具体的な実績なのだろうか。
 たしかに従前の米国大統領が行えなかった「核廃絶」「地球環境などの問題に対話と協調を行動原則として取り組むこと」への意志が受賞に値すると判断してのことだろう。だが,核廃絶を世界に語る前に,自国が保有する一万発を越える核弾頭を廃棄することもなく,包括的核実験禁止条約(CTBT)を批准せず「未臨界核実験」を継続していることはどうなのだろうか。また,京都議定書を締結してないことはどういうことなのか。大統領が替わったからといって一朝一夕に変えることはできないのだろうか。

  だが,オバマ氏の全世界へ向けた「核廃絶,環境への取り組み姿勢」は評価に値し,ノーベル平和賞を否定するものはない。オバマ氏への励まし,今後の活動への期待賞と考えるべきなのだろう。

 ノーベル平和賞はどんな人が受賞しているのだろうか。私の知っている名を挙げれば「アンリ・デュナン,セオドア・ルーズベルト,ナンセン,シュバイツァー,ハマーショルド,キング牧師,キッシンジャー、ドゥクト,佐藤栄作,マザー・テレサ,ダライ・ラマ14世,ゴルバチョフ,アウンサンスーチー,マンデラ、アラファト、ペレス、ラビン,金大中,アナン,カーター,マータイ,ゴア」などである。
 この中で唯一の日本人である佐藤栄作氏の1974年受賞については大いに疑義がある。非核三原則を提唱したことが大きな受賞理由というが,1965年1月訪米時、その3カ月前に中国が初めて実施した核実験をめぐり「(日中で)戦争になれば、米国が直ちに核による報復を行うことを期待している」と語っていたり,米国が公文書で認めている核保有原潜の寄港密約問題も日本国民を欺いていたことになり,納得できるものではない。

 ノーベル賞の内,学問に関する賞は人類にとって専門分野にとって大きな功績を認められたことの証なのだろうが,平和賞は人類の将来を照らす灯火を点けたことに対するものだろう。オバマ氏の受賞は,灯火を点け始めた事に対するもので,その明るさがいかなるものかは歴史が証明してくれるに違いない。

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