日々の抄

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 二重構造ではありませんか

2009年11月3日(火)

 新政権発足からほぼ50日が経過する。政権交代によって政策の大転換が起こることは当然のことだろうが、新政権はマニフェストのすべてを国民が認めて政権交代を望んだのでないことだけは心して受け止めてほしいものである。結果を急ぐことなく、マニフェストは4年間で実行できればいいのではないか。
 ただ、「ガソリン税の撤廃、高速道路無料化」と「温室効果ガス25%削減」は矛盾する。前者による温室効果ガスがどの程度影響するのか、25%削減をどのような方法で行うのか、具体的な数値で示すべきである。もし、それができないならマニフェストを撤回すべきである。「高速道路無料化」を反故にしても国民は民主党への信頼を失うものではない。現段階でも多くの国民は「高速道路無料化」に反対なのだから。

 政権が変わってから民主党は大きく様変わりしたらしい。政治が変わってほしいと望み、国民の視点に立った活発な議論や若手議員の活躍が続くものと思っていたが様子がおかしい。小沢幹事長の行き過ぎと思える言動は問題である。「国会改革、政策決定の政府への一元化」と氏は望んでいるらしいが、それはどうやら氏の都合のいい方向に事を進め、謂わば「黒幕」としての存在感を確実にしようと目論んでいるように見える。つい最近のできごとでは、「衆院での民主党代表質問をしない」,「事業仕分け34人の大半が新人議員だったが議員は7人に,民間人が10人に変更された」ことなどである。政府が事業仕分けをするにあたって担当大臣が任じた人事について新人には荷が重過ぎるなどとして変更を求め、これが認められ担当大臣や官房長官がなぜ小沢幹事長に謝罪しなければならないのか。不思議でならない。そもそも、小沢氏は選挙中,「新人議員は即戦力の人材だ」と言っていたのではないか。どうやら,事業仕分けの多忙な仕事をしていると,民主党が予定している新人研修に出席できなくなることも原因らしい。

 事業仕分けなるものは、政策シンクタンク「構想日本」が推進し、国や自治体が行っている事業(行政サービス、政策立案事務などすべてを含む)を予算項目ごとに「そもそも」必要かどうか、必要ならばどこがやるかを検討審査するものというが、その責任者は「構想日本」の代表という。国の無駄遣いを是正すると声高に選挙中語っていた議員が責任者になぜならないのか。これも不思議である。「外部の視点で点検をする」「公開の場においてヒアリングを行っていく」ということが望まれるらしいが、国民は新しい視点を新政権の期待していたのではないか。「外部」に依頼する必要がどこにあるのか。

 「議員立法しない,官僚の国会答弁をさせない」などという小沢ルールがあるそうだが、「政府は首相、党務は小沢氏と意識的に徹底していた政権の分業体制」はどうしたことか。各種の陳情をすべて幹事長室で行う意向も示され,幹事長の権力を集中させようとしているは見え透いている。これでは新政権は「小沢政権」と呼ばれても仕方あるまい。小沢氏の意向を受けて、衆院で民主党が代表質問しないにも関わらず、「参院は再考の府。質問を通じ政府に対する国民の理解を得られる」として参院だけで代表質問しても、国民は「何か変だぞ」と新政権を訝るのは当然である。

 小沢氏は選挙には長けているそうだが、立場を弁えた言動をとるべきである。今のままでは、鳩山内閣が国民の信頼を失うことは目に見え、政権も時間の問題になってくるだろう。国民はそんなことは望んではいない。小沢氏はそのことを知るべきであり、民主党もたったひとりのために信頼を失わせぬよう多くの議員諸氏の奮闘を期待したい。声の大きい裏番長に怯んでいては国民の望む政治は展開できまい。

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