日々の抄

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 若者に未来があるのか

2009年12月27日(日)

 25日,都内で高校生のデモ行進があった。主催は高校生らでつくる「大阪の高校生に笑顔をくださいの会」と「お金がないと学校に行けないの? 首都圏高校生集会実行委員会」という。高校生は「お金のことを気にせず勉強できるようクリスマスプレゼントが欲しい」「就職内定というクリスマスプレゼントが欲しい」「学費が払えなくて涙を流している人がたくさんいます。アルバイトをしていても払えない人が数多くいます。そういったままで本当にいいのでしょうか」などと訴えたという。

 高校生がデモ行進をするのを見たのは,安保闘争で日本中が社会をよくしようと熱気に溢れていた時代以来のような気がする。あの時代の若者は社会正義に燃え,自分たちで社会構造を変え,よりよき国にしようとした真剣に考えていた。生活が安定し,総中流階級化と自認して以来,若者は自らの生活を享受することに時間をかけていたように思う。そうした中での高校生のデモ行進は,やむにやまれぬ行動だったに違いない。経済状態の悪化が高校生にも直接影響を与えていることは,授業料未納問題だけでなく,卒業を就業しようと思っても職を得ることができないという,職を求めて自活できないという生活の根本問題であり,社会が破綻していると言っても過言ではあるまい。新卒で就労できないことで,これからどれほどの困難が待っているかを考えると暗澹たる思いがする。

 文科省によると、来春卒業予定の高校生の10月末現在の就職内定率は55.2%で、08年同期比で11.6ポイントの大幅減という。国公私立高校の卒業予定者107万3619人のうち、就職を希望する人は18万7360人で、内定を得た人は10万3352人。76年の調査開始以来、この時期の前年度比下落幅は99年の7.2ポイント減が過去最大で,この時期の調査としては、過去最大の下落幅。急激な景気悪化を背景に厳しい雇用情勢が続いているという。
 男女別では男子が59.4%(08年同期比12.4ポイント減)、女子は49.6%(同10.7ポイント減)。男子4万3472人、女子4万536人が内定に至っていない。学科別では水産科が52.3%(同17.2ポイント減)と最も下落幅が大きく、情報科は53.0%(同14.9ポイント減)、普通科は42.4%(同12.8ポイント減),都道府県別では,ワースト3は沖縄26.0%,北海道30.8%,宮城38.6%,ベスト3は富山73.4%,岐阜72.8%,愛知72.0%という。
 群馬県の11月末時点での高校新卒者の就職内定率は前年同月を10.6ポイント下回り、75.0%にとどまっており,求職者は2663人で、前年同月より12・1%少ないが,9月末から約70人減っており、就職をあきらめたケースも多いとみられるという。

 政府は,公立高校授業料の無償化,子ども手当をはじめとする生活支援を考えているようだが,「何とか手当」「何とか無償化」の考えは,目の前の支援ができても,根本的な問題解決にはならない。「補助,手当」の方法は考えが誤っている。つまり,国が国民に手当を支給して生活支援するのでなく,国民が自らの勤労による報酬で,自らの生活を豊かにし,子どもの学費を払い,保育所に預けることができるようにすることこそ政治の仕事ではないか。手当を貰えば当座凌ぎができても,政権が変わればそれが保証されるものではないし,財源がなかったという情けない理由でマニフェストが反故にされるからである。
 国民は,自ら働いた対価から,豊かな生活を求め,子どもの教育にも投資することを望んでいるのではないか。政府は「何とか手当」を考える前に,働きたい者が働けるシステムを一日も早く考え実行すべきである。世界的な不況だから仕方ないとするなら,政治などいらないし無能の証明である。
 福祉介護関係に就労先を拡張するというが,毎週夜勤をし,ヘトヘトになるまで毎日働いても月収15万円にも満たないような状況を改善しない限り,根本問題は解決できまい。就労者が少ないから外国に就労者を求める前になすべき事はたくさんあるのではないか。現状の就労環境では,正規就労者もいつ解雇されるかの不安を払拭できないことを考えれば,到底少子高齢化から脱することはできまい。

 国の財政が乏しく膨大な借財を未来に残す状況なら,高速道路の無料化などという環境に悪影響を与えかねない愚策は早々にやめるといい。政府は将来に不安を感じないで済む報酬を得られる仕事をひとつでも作り出すことに時間を割くべしである。あれだけ,財源は心配ないといって,事業仕分けというショーを見せてみたものの,どれほどの「無駄な天下り」を減らすことができたのか,国民に明らかにすべきである。


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