日々の抄

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 土曜授業がはじまるのか

2010年1月17日(日)

 冬休みが終わったばかりのためか,統計上はインフルエンザの流行が小康を保っているというが,以前に比べると授業日数確保のためか,始業式から授業を実施している学校が多くなっているらしい。高校では以前から行われているが,きのうまで時間に縛られない生活をしている子ども達にいきなり授業をめいっぱい始めても,集中できず教員も大変なことだろう。

 文科省が昨年4月から6月にかけて、全国約3万2000の公立小中学校を調査したところ、授業時間を増やす小学校は全体の96.3%に上り,平均では、昨年度より年間で32〜34時間増やすという。増加分の授業時間確保のために、夏休みなどの期間を短くして対応している小学校は全体の10.5%、また、文化祭などの学校行事を減らしている小学校は33.2%となっているという。

 そのことを受けてのことか,都教育委員会が,授業時間確保のための「土曜授業」を認める旨の報道があった。「週6日制への先進的な動きか」と思ったが,詳しい内容をみると,素直には受け取れないものである。 都教委による,「小・中学校における土曜日の授業の実施に係る留意点について(通知)」によると,『各学校においては、学校週5日制の趣旨を生かした教育活動が展開されているところですが、特に、土曜日に教育課程に位置付けられた授業の実施を求める学校が多いことから、今般、このことを行うに当たって配慮すべき基本的な考え方等をまとめました』,とある。
 つまりは,教育現場から「土曜日に教育課程に位置付けられた授業の実施を求める要望」が多いから,ということなのか。都教委は,現場職員の声を聞くことなく,全国的にも珍しい方式,つまり君が代斉唱の強制,職員会議での採決禁止など,戦前の教育を彷彿とさせることを実施している。にも関わらず,「土曜授業」を教育現場を求める学校が多いから,とは方針転換なのか。

 「基本的な考え方」に,『確かな学力の向上や家庭・地域との連携・協力が一層求められている中、土曜日に教育課程に位置付けられた授業の実施を希望する学校においては、学校週5日制の趣旨を踏まえつつ、保護者や地域住民等に開かれた学校づくりを進める観点から実施できるものとする。・・・域内の保護者及び地域住民等に対して趣旨説明を行うなど、十分な理解を得ることを前提とする。』,としている。
 具体的「内容」は,『(1) 確かな学力の定着を図る授業の公開,(2) 道徳授業地区公開講座やセーフティ教室,(3) 保護者や地域住民等をゲストティーチャーに招いての授業』とし,月2回を上限としている。

 土曜授業を実施する趣旨が「授業数確保」なら,なぜ『保護者や地域住民等に開かれた学校づくりを進める観点から実施』でなければならないのか。なぜ『地域住民等に対して趣旨説明を行う』必要があるのか不可解である。また,上記「内容」の(2)(3)に時間を割けば,地域交流につながっても,学力向上につながるとは思えない。授業数確保のため,公開講座やゲストティーチャーが必要であるのか理由が分からない。
 また,土曜日が授業日になれば,代休が必要になるが,『週休日の変更等を行うこととする』としている。つまりは,土曜の分の休業日を別の日に移せば,授業時間確保にはつながらないのではないか。
 どうも,東京都版の「土曜授業」には別の意図があるように思えてならない。

 政権が変わってから新しい流れが少しずつ見られるようになってきたが,教育関係の法律の改正が起き始めてもいいのではないか。新教育課程の先行実施を控え,新年度から,小学校でさえ7時間目を設けたり,長期休業日をさらに短くせざるをえないと聞く。そろそろ,文科省はメンツを捨てて,週6日制に戻したらどうなのか。日常的に余裕のない教育現場から,将来の日本を背負う大人物は出にくいのではないか。教員が悪いのではない。制度が悪いのである。
  関係して,職を失い,日銭で生活しているひとが以前より増えている昨今を考えれば,ハッピーマンデーなどという愚かな事はさっさとやめるべきである。休みが続けば,収入がなくなる人びとのことを考えるべきである。それが教育現場での授業時間確保にもつながるのである。

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