日々の抄

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 権力に胡座をかく横柄さを知るべし

2010年2月23日(火)

任期満了に伴う長崎知事選は21日投開票され、前副知事の中村法道氏が,政権与党の支持を受けた前農水省改革推進室長の橋本剛氏に圧勝した。自民党支持者の多い長崎選挙区だが,直近の衆院選で民主党が全勝しているから,民主党の選対は驚きと落胆を隠しようがないらしい。

このような結果に陥った理由は明らかである。最大の理由は民主党党首,幹事長の「政治とカネ」の問題だろう。母親から毎月1500万円もの援助を受けていたことを知らなかったという首相に庶民の苦しみは分かるまいという驚き,意識の乖離。秘書の逮捕があるにもかかわらず,幹事長本人は政治資金規正法について嫌疑不十分での不起訴に対する懐疑は決定的である。

それにも増して,民主党の思い上がりとしか思えない選挙戦が,知事選を決定づけたと思われる。小沢幹事長は、県連パーティーで「橋本剛君を知事に選んでいただければ、自主財源の交付金も皆さんの要望通り。欲しいということであれば高速道路を造ることもできる」と語り,国交相,農林相も利益誘導と思われる演説をしている。石井選対委員長は「時代と逆行するような選択をされるのなら、民主党政権は長崎に対してそれなりの姿勢を示すべき」と,県民へ恫喝擬きの発言があり,いかに衣里子センセイの人気があっても解決できない,政権与党としての奢りと思い上がりでしかない。こんなことを言われては,民主党支持者といえど,橋本候補に投票するものか,と思っても不思議ではない。

また,脱官僚を憚らず唱えている民主党が,元農水省官僚を候補者として擁立していることに疑問は起きなかったのか不思議でならない。東京・町田の市長選でも自公支援候補が民主・社民・国民新3党推薦候補に大勝している。

自民党は,長崎知事選の勝利で自民党支持者が増えたなどと思い違いしないことだ。多少は,人気者とマスコミが持ち上げている元首相の息子の新人代議士の元気な演説に乗せられてこともあるかもしれないが,単に民主党を嫌った結果だと思うべきである。民主党も前回の衆院選で圧倒的な国民からの支持を得たなどと思い違いをしないことだ。その思い違いと思い上がりが今回のような結果をもたらしているのである。民主党は自民党政治に辟易した結果,多数の議席を得たに過ぎない。つまり,今の政治は,「肯定」によって支持政党が決まるのでなく,否定ないし,消去法で決まっていることをよく知るべきである。

与党内で,社民党,国民新党と連立を組んでおきながら,自民党くずれが民主党入りした結果,多数決を得るために連立の不要論さえ出ているという。力を得れば横柄になり,権力を行使しようとする姿勢は嘗ての自民党と何ら変わるところはない。次の参院選で民主党が再び大勝すれば,その思い上がりは果てしないものになるに違いない。

国民から盤石の支持を得ようと思うなら,然るべき立場に立っても決して「謙遜さ」を失わないことが肝心である。民主党の選対委員長は,長崎県民を恫喝しておきながら,選挙に負けるや,「結果を厳粛に受け止めて今後の糧にする」といい,小沢幹事長は,「私の不徳の致すところ」と反省の弁を述べているが,選挙に負けなければ,その思い上がりはどこまでいったか分からない。一度多数与党になったからといって思い上がらないこと,また国民はそれほど愚かでないことを知るべきである。

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