日々の抄

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  これからが心配だ

2005年9月24日(土)

 郵政解散と称する今回の選挙で与党が大勝した。
 本当に与党が考えている郵政改革がなされれば国民のためになるのか。過疎地の郵便局をなくさないと選挙中に言っていたことは本当に実行されるのか。郵貯、簡保の膨大な資金が日本国民のためになるのか。小泉内閣によって日本はよくなったという者がいるが、政権を握ってからの4年間に795兆円の国の借金ができた。これは国民一人あたり624万円というから、平均的日本人の年間所得に相当する。これが改革の結果である。

  今回の選挙中、与党は郵政問題以外に山積している難題に焦点を当てようとしていなかった。
 財政改革、年金問題、少子化対策、悪化しているアジア外交、11月18日が期限となるイラク駐留、靖国問題など、どれ一つとっても国民の生命、生活に直結する問題が国民的議論の話題にされているとは思えなかった。為政者がこれらに対して明確に国民に対して方向を示し、国民に選択を求める論争が行われたとは思えない。今回の選挙は正に劇場型で、喧嘩を高みの見物を決め込んだ人気投票の気配がなかったとは言えまい。マスコミは「面白い選挙区」に焦点を当てすぎ、刺客以外の、諸問題を論点にしようとする努力に欠けていた感が強い。有名人である同じ人間が毎日のように画像に出てくれば、商品を買うときにテレビで宣伝の多いものを選びたがることに似ていないか。今回の選挙結果に、マスコミのニュースの取り扱い方が少なからず影響を与えたことは間違いない。報道の仕方に問題はなかったのか。視聴率だけを追っていて、国民がこれに乗せられていたとしたらお粗末な話しである。マスコミの責任は重大である。毎日のように「私は4年目に郵政改革を約束しました・・・」とTVで訴えていたが、一方で靖国神社に8月15日に参拝すると言っていた公約はどうしたのか(私は靖国参拝には反対だが)。都合の悪いことは言わないに限るのだろうが、「ずるい」の一言だけだ。

  衆院の2/3を与党が占めることを選択した国民は、これから一党独裁に似た政治から無理難題を強いられても、自分たちで選んだ結果なのだから文句は言えまい。威勢のいいアジ演説に惑わされて「よくわからないが、いいようにしてくれそうだ」などと考えているなら甘すぎる。これから自分たちで自身の首を絞めていくような気がしてならない。

  9月21日改選後衆院の議員が初登院。危なっかし新人がかなりいる。森元総理は「歳費がこれだけもらえてよかったとか、宿舎が立派でよかったとか、こんな愚かな国会議員がいっぱいいる」と公言した。国民をこれほど愚弄している言葉はあるまい。そんな議員を候補に選んだのはどの党かと問いたい。そんな議員を選んだ国民はもっと愚かしく感じる。「昨日お父さん、お母さんと会って、『お前を品よく育てた覚えはない。お前らしくやって、ダメならいいじゃないか』、「棚ぼたで当選」、「料亭に行きたい」などと信じられない発言は論外だ。中学生がクラス委員に選ばれたのとは違う。ま、パパ、ママと言わなかっただけましか。

 新人議員がインタビューに答えて「郵政問題もこれから勉強していきます」などと言っている。与党の郵政改革に賛成したから出馬したのじゃないのか、と思う選挙民は多いだろう。勝ち誇ったようにしているマドンナ達の自信満々な表情は腹立たしい。

 一方、参院の郵政造反議員のかなりは翻意し、選挙期間中に「選挙の結果、与党が多数であれば、与党案に賛成する」とする参院議員が出てきて驚かされた。多くは「民意を汲んで賛成にまわります」としているが、正確には「多数の民意を汲んで・・・・・。(保身のために)」賛成したのではないか。民意の中には少数意見もあることを忘れてないだろうか。少数の意見を汲んで郵政改革案に反対したのではなかったか。あまりに風見鶏の議員が多いのは嘆かわしい。
 中曽根康元首相は「日本人は砂になった。以前は粘土だった」と語っている。
「風見鶏  DNAは受け継がれ」という川柳が生々しい。現政権が砂の上に乗っているだけなのか。砂上の楼閣にならぬことを願うのみである。

 80数名の新人議員に対して「派閥に属さないように」との指導があったようだが、現在ある派閥を解消しなければ、首相が属する最大派閥の森派が力をつけるだけだろう。「私は小泉チルドレンです」などと恥ずかしげもなく言い放つ者のいる80数名が派閥なき派閥である小泉派になるのなら話しは分かりやすいのだが。「うそをつくな、悪いことはするな。国会議員としての品格を徹底的にたたき込む」などと言われなければならないのは情けないとしか言いようがない。 そんなことを言われて腹が立たないのか。

 指導する予定の人物は、フリーター問題に関して「1度自衛隊にでも入って(イラク南部の)サマワみたいなところに行って、本当に緊張感を持って地元の皆さん方から感謝されて活動してみると、3カ月ぐらいで瞬く間に変わるのではないかと思う」(2004/12/09)と言ってみたり、農水相のときBSE問題で、国内三頭目の感染牛が見つかっても、「まだまだ出るから、驚かないでください」(2001/12)と放言。「感染源が解明されないことは大きな問題か」「給食に牛肉を出さないのは情緒的」などと言いたい放題の一方、被害総額も「詳しく調べていない」など政治への不信をかった人物だから、これから新人君達がどのように育てられるか見物である。

 今回の選挙の投票率は前回に比べて多少増加したようだが、これからは特に若者が積極的に政治に参加していかない危ないことになる。憲法改正、年金問題、増税問題など政治に目を向けていないと不利益を被ることが起こってくる。政治は誰かが、自分に都合良くやってくれるだろうなどと思っていたら間違いだ。そうした考えが日本の政治をダメにしてきたことに気づかなければなるまい。若者の投票率が低くければ、若者が苦しめられる結果になるであろうことに危機感を持たなければなるまい。

 今回の選挙結果の感想は、
「長いものには巻かれろ」、
「寄らば大樹の陰」、
「大木の下で笠を脱げ」、
「一犬影に吠ゆれば万犬声に吠ゆ」、
「花多ければ実少なし」
である。

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