日々の抄

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 今年もやりましたね

2010年4月1日(木)

 文科省から、のべ300万人以上が受験した昨年度大学入試のミスが報じられている。調査は、山形大で過去5年間で合格者400人以上を不合格にしていたミスが01年に判明したことを機に、同省が03年入試から開始。同年のミスは、全国で157件(110校)だったが、その後、ほぼ毎年増え続け、昨シーズンは283件(156校)だった。私立大は統計を取り始めた2003年の2.6倍に増加。合否に影響したものは国公私立大で計23件という。今春はどうだったのか。以下に新聞報道されたもののいくつかを列挙してみる。

□ 選択肢に正解なし。選択肢が複数ある
・佛教大:化学で正解と考えられる選択肢が二つ。
・東北大前期:地学で正答が二つある問があった。
・山梨大前期:数学で解答が複数存在。物理、化学、地学で補足など訂正が3箇所あった。
・花園大:現代社会で、適切でない説明を選ぶ問にすべてが適切で、正解がなかった。
・法政大:法、文、経営学部の日本史で選択肢の表記が誤っており、正答がなかった。
・甲南大:日本史で正解が2つあった。
・龍谷大:文系全学部の日本史で6つの選択肢に正答がない問、化学では文章の表現方法に不適切な部分があった。
・関西学院大:地理で教科書や地図帳などに基づく知識では正解に導き出せない選択肢があることが試験後に判明。化学もミスがあり全員正解とした。
□ 問題文に誤りがある
・龍谷大理・工学部:生物で、「遠赤色光」を「遠赤外光」と誤記。
・北見工大:物理問題のグラフが不鮮明。
・都留文科大:小論文、英語で、「it」を「is」と誤記。
・広島大前期:生物で尿素の濃度などを示した表の数値2カ所に誤記。また、「バソプレシン」に関しても誤記。
・椙山女学園大:数学II・数学Bに解答が存在しない問があった。
・慶応大・経済学部:日本史Bで「18世紀」を「17世紀」と誤記。
・富山大前期医・薬学:化学の問題文で[ベンゼン環]の語が不足。
・兵庫県立大:数学で説明不足の問があり全員正解とした。
・宮城大前期:化学で誤記があり全員正解とした。
・宮城教育大:地学で厚さ数千キロを厚さ約300キロと誤記。
・龍谷大B日程:生物で「不消化」を「不同化」と誤記。
・関西大:日本史で杉山元治郎を杉山元冶郎と誤記。サンズイとニスイが違っても全員正解とした。
・立教大・理学部:化学で物質名誤記。
・西南学院大:数学、日本史B、世界史Bで正解が複数導かれたり、ない場合があった。
・新潟県立大:英語で「次の英文を読み・・・・」に英文が書かれてなかった。
・武庫川女子大:生物で「低張」を「低調」と誤記。「選択肢なし」も正解とした。
・同志社大:化学で説明文中の化学記号に誤記。終了5〜10分前に訂正。
・関学大:世界史で問題文に誤りがあり、解答が不可能。
□ 採点ミス
・鶴見大・文学部日本文学科:大学入試センター試験利用入試でプログラムの設定ミスがあり、09、10両年度の入試で受験生計6人を繰り上げ合格。
・日本大・経済学部:受験者計93人を誤って不合格に。成績処理時に正解の指定誤りが原因。
□ 出題が不適切と思われるもの
・東京農工大後期:物理・数学に高校の学習指導要領の範囲外の出題があり、選択した約350人全員を正解とした。
・名古屋大前期:物、学、生、地の試験問題が1冊にまとめられ、化学の解答の語が地学に存在した。
・慶応大・看護医療学:数学で範囲外の数学IIIの出題があった。
・京都産業大:物理の設問で高校の履修範囲を逸脱。化学で解答させるべき用語が設問中にあった。
□ 発表処理ミス
・岡山県立大:他の国公立大のAO、推薦入試に合格した受験者を合格判定。
・龍谷大:欠席者に誤って合格通知書を送付。
□ 試験監督の指示の誤り
・東北学院大:実際と異なり、「英語科目は必須である」と誤指示。約20分後に受験生に訂正。
・北九州市立大前期:後期問題の解答用紙を配布。
・信州大:大学入試センター試験で1時限目の「理科1」の開始が14分早まった。当初「受験生の1人が過って問題用紙を早く開いたため」としていたが、試験監督者が事前の説明終了後に、定刻を待たずに誤って試験開始を指示したこと理由。
□ 発表の誤り
・岐阜聖徳学園大:HPで不合格者を合格と誤表記。郵送では誤記なし。

ことしは、高校入試関係でもかなりの数の入試ミスがあった。入試当日の誘導ミス、発表ミス、県立高校の問題ミス、公立高校の自校作問ミス、調査書記入ミス、学習指導要領外の出題、解答が複数あるものなど、大学顔負けのミスが全国に広がっている。

例年と変わらずことしもお粗末な入試ミスが多い。新聞に報道されないものもあるだろうからどれほどあるか分からない。ほとんどは、確認をしっかりしていれば回避できるものばかり。問題ミス、解答欄に正解の選択肢なしなどは、作問者以外の人物が点検すれば簡単に回避できるはずである。試験問題が校正もされずに出題されるのか。大学の資質を疑いたくなる。誰しもミスはあるものだが、それを回避する懸命なシステムは持つべきだろう。高校の学習指導要領を逸脱した出題も散見する。入試はひとりの人間の将来を左右する場合が多いことを考えれば、もっとまじめに入試問題を作るべきである。どうも、入試ミスのある大学は、より注意深く真剣に取り組んでいるとは考えにくい。大学教官は、研究が本務で、入試作業はオプション作業だと思っているなら、考え違いも甚だしい。どんな学力をもった、どんな学生を求めるかは大学の命運がかかっている問題であるはずだ。

毎年思うことだが、最近の大学は学生だけでなく大学そのものもレベルが下がっている気がしてならない。大学生の学力低下を嘆く前に、大学教官も教職としての資質向上に励むといい。

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