申請しないのが悪いのか |
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2010年7月30日(金) 昨夏,愛用していた高価な広角レンズを誤って水につけてしまって使い物にならず,修理に出したものの修復不能。使用者に重大な過失があるなどという理由で保証を受けられず棚の飾り物になっていた。 先日火災保険の再契約があり,外交員から細かい字で書かれた約款の概要をこと細かに聞かされた。その中で「特約」なるものがあり,例のレンズの件を話したところ,使用者に重大な過失云々と言われ,やはりダメかと諦めた。ところが数日後外交員から電話があり,水没したレンズも証明するものがあれば,購入価が保証されるという親切な連絡があった。外交員がダメだと言えばそれで話はお終いになるところだが,何とも親切な事かと久しぶりに嬉しい気持ちになった。この外交員は契約者の立場に立って仕事をしていると確信した。 「かんぽ生命不払い352億円」が24日に報じられ,日本郵政公社時代の03年4月〜07年9月に発生した保険金不払いが約26万7000件,約352億円に達したという。金融庁の業務改善命令を受けた民間生保10社の不払い総額の3分の1強に当たるという。かんぽ生保には,民間生保で不払いが多発したような複雑な特約はない。民営化したことなど言い訳にはなるまい。その民間生保不払いは,生保会社の信じられない不誠実な拝金主義であることが明らかになっている。 生保の不払い問題は,05年2月に明治安田生命で不適切な不払いが大量に見つかった後,各社で相次いで発覚。生保全38社の保険金の不払い・支払い漏れの最終調査結果が07年12月出されている。38社の合計は964億円,131万件。不払い問題の主な要因は,死亡保障など主契約に追加する「特約」の支払い漏れという。入院した場合に保険金が支払われる特約と,退院後の通院に保険金が支払われる特約に同時加入していた場合や,がんや脳卒中,心筋梗塞の三大疾病特約,通院の特約部分が支払われないケースや,解約するとお金が戻る失効返戻金の支払い漏れが大量あったという。 契約者保護を重視した金融庁は08年7月,10社に業務改善命令の処分を出したが,今春には大手の生命保険会社で,「大量の保険金不払いを幹部が隠している」と複数の職員が会社側や金融庁に内部告発があった。診断書をもとに支払える可能性が高い案件を少なくとも2万件以上,数十億円分は把握していたものの,該当する契約者に具体的に案内しなかったという。契約者を無視した対応である。 契約者は,生保に入り生保会社に申請すれば自動的に,特約などの手続きもされるものと思っているが,すべて自己申告がないことを理由に,特約で支払われるべきことを伝えなかったのである。支払う必要を知っていながら生保会社は,申告の必要性を伝えることなく口をつぐんでいたのである。保険金の支払いが申告制になっているとはいえ,あまりにも不親切で不適切な対応である。 その生保不払い処分をめぐり,生命保険大手4社が,保険金不払い問題発覚後の06〜10年に自民,民主両党の国会議員ら計62人の飲食接待費として計約650万円を支出したり,国会議員44人のパーティー券を計1千万円以上購入したりしていたことが判明している。自民党議員37人,民主党議員6人,無所属議員1人の政治団体への支出され,接待先には,金融関係の審議を行う衆院財務金融委員会や参院財政金融委員会の国会議員らが含まれている。また,内部資料などで議員への働きかけの疑いも判明し,当時の与党議員に,金融庁の行政処分に否定的な立場をとることなどを依頼したとされている。 政界工作どころか,贈収賄と疑われても致しかたあるまい。利益誘導のための工作であることは間違いない。その原資が生保契約者から出されているのは腹立たしい。 生保契約者は,まさか保険会社が,契約者の不利益な取り扱いなどしないだろうと思うのが人情だが,現実は違う。生保会社関係者は,契約者に不利益になることを承知しながら,「申請がないから」ということを隠れ蓑にしてまで会社に奉仕して心の痛みはないのか。1兆円に近い悪質な不払いをしてせしめて得た金が誰のために使われるか知りたい。 |
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