日々の抄

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 核兵器廃絶は可能なのか

2010年8月8日(日)

広島原爆の日を6日迎えた。ことしは最多の74カ国の参加があった。核保有国では,ロシアに加えて初めて英米仏の3国が参加した。インド,北朝鮮は参加しなかった。初参加国は他にウクライナ,アルゼンチン,ガーナ,ヨルダン,タンザニア,イエメン,コソボなどであった。

ことし特記すべき事は国連潘事務総長が参加したことだろう。少年時代に朝鮮戦争を経験したという潘氏は挨拶の中で,「一生を平和のために捧げてきた。今日,ここにいるのもそのため」「自分たちが生きている間,そして被爆者の方々が生きている間に,その日を実現できるよう努めようではないか」「核兵器のない世界という私たちの夢を実現しよう。私たちの子どもたちや,その後のすべての人々が自由で,安全で,平和に暮らせるために」と力強く訴えた。

「ああやれんのう,こがあな辛い目に,なんで遭わにゃあいけんのかいのう」から始まった広島市長の平和宣言には核廃絶を願う切実な願いが込められていた。『今こそ,日本国政府の出番です。「核兵器廃絶に向けて先頭に立」つために,まずは,非核三原則の法制化と「核の傘」からの離脱,そして「黒い雨降雨地域」の拡大,並びに高齢化した世界全ての被爆者に肌理細かく優しい援護策を実現すべきです』『また,内閣総理大臣が,被爆者の願いを真摯に受け止め自ら行動してこそ,「核兵器ゼロ」の世界を創り出し,「ゼロの発見」に匹敵する人類の新たな一頁を2020年に開くことが可能になります』と訴えた。

菅首相は式典で『核兵器の惨禍を,人類は二度と繰り返してはなりません。唯一の戦争被爆国である我が国は,「核兵器のない世界」の実現に向けて先頭に立って行動する道義的責任を有していると確信します。私は,様々な機会をとらえ,核兵器保有国を始めとする各国首脳に,核軍縮・不拡散の重要性を訴えてまいります。また,核兵器廃絶と世界恒久平和の実現に向けて,日本国憲法を遵守し,非核三原則を堅持することを誓います』と語った。

だが,この首相の挨拶は矛盾に満ちている。なぜなら,米国原潜が頻繁に日本の港に出入りしている現実は「非核三原則」の否定ではないか。官房長官は同日午前の会見で「改めて法制化する必要はない」としている。また,『核兵器保有国を始めとする各国首脳に,核軍縮・不拡散の重要性を訴え』としておきながら,「核抑止力は,我が国にとって引き続き必要だ」と述べている。核軍縮・不拡散の重要性は他国に訴えながら,自国は米国による核抑止力は必要ということなのか。そのためには,沖縄の米軍基地問題も政権が変わってもなんら住民にとって安全な方向に向かえないなら,自民党政権時代となんら変わるところはない。

原爆投下の当事者であり,ロシアと並んで最も核兵器保有数が多い米国の国務長官は,米国の代表団が広島市での平和記念式に出席したことについて,「我々がこの記念日を認めるのは適切なことだ」と語り,国務次官補は,「我々には謝罪することは何もないが,戦争に影響されたすべての人々への敬意を示す」などと白々しいことをコメントしている。また,原爆投下機「エノラ・ゲイ」の元機長の息子は「(日本に対する)無言の謝罪と受け取られかねない」「原爆投下で戦争終結が早まり,多数の命が救われた」となどと政権の決定を批判している。09年の米国世論調査によると「原爆投下」を支持しない割合22%,「正当だった」とする考える割合は61%(男性は72%,女性は51%)もいるという。

初参加で核保有国のひとつフランスの臨時代理大使は「核軍縮は絶対的に重要。式典には大変心を動かされた」,英国の代理大使は「核不拡散の機運が高まる中で,今こそ出席すべきだと考えた。式典は大変感動的だった」とコメントしているが,米国の駐日大使は「未来の世代のため,我々はこれからも力を合わせ,核兵器なき世界を実現していかねばならない」としているだけだった。

原爆投下の当事者である米国は,退役軍人をはじめ,いまだ原爆投下を正当化する気運が強く,オバマ政権もこれを無視するわけにいかないらしい。だが,26万人を越える被爆による死者をもたらした行為を65年経過した現在も正当化しようとしている米国は平和を語る資格を持っているとは思えない。広島,長崎の地をその足で踏んで惨状を肌身で感じれば,考えが変わるに違いない。広島,長崎の原爆投下の反省がなされてないが故に,アフガニスタンで劣化ウラン弾という非人道的兵器を使用し,何の罪もない子ども達に深刻な被害を与えているのではないか。
 一方で原爆投下の不条理さ悲惨さを人道的立場に立って認めようとする機運が起こっていることも確かだろう。そうした米国の良心が多数派に なることを願うのみである。

 全世界的に核のない世界を求めようとする動きがなぜ潮流になりつつあるのかを日本政府は再考すべきである。それは「核の傘」が,NPT(Nuclear Non-Proliferation Treaty核拡散防止条約)に属すことなく核兵器を製造している北朝鮮,イランなどの核開発を止めることができないこと,またこれらの国からテロリストに核兵器が渡されことの危惧を払拭できないことではないか。

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