日々の抄

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 ダム建設の根拠を示せ

2010年11月7日(日)

 最近は国内外の問題で不愉快極まりない事件が続発し,ストレス回避のためにできるだけニュースを見ないようにしている。対中国,対ロシアで日本外交が問われている。確かに政府,与党,外務省の対応が頼りなく腹立たしい限りだが,野党諸君は無慈悲な対日政策に対し,諸外国へ矛先を向けるのでなく,政府に対し攻撃の矛先を向けているのは本末転倒である。まず,当該の外国に対してメッセージを出すべきである。まるで,頼りない学級委員を糾弾している小学生の如しである。

 一方,昨日の報道によると民主党の国民に対する大きな約束であった(敢えてすぐに反故にされるマニフェストとは呼ばない)八ッ場ダム問題が新しい展開に入った感があった 。
 国交相が八ッ場ダム建設予定地の長野原町で、県知事や地元町長などとの懇談で建設の是非について「一切の予断を持たずに再検証する。今後は『中止の方向性を持ちながら』という言葉には言及しない」と発言した。正確には「今後は建設中止の方向性ということばは使わない」ということである。
 前職が昨秋の政権交代時に表明した「建設中止」の前提の事実上の撤回となると思える発言である。ただ,中止しないとは発言していないことは注目すべきだろう。どうやら,「中止ありき」の体制に対し地元が話し合いに応じないことに対する,方向転換つまり,まずは話し合いをする条件を作るべしとの考えのようである。
 しかし,地元民は国交相が変わることで,中止もあり得るのか,懐柔作戦なのかと半信半疑で,50年近く政治にもてあそばれ,将来への展望が開けない状況はあまりにも政治の無責任である。私の知人の地元民は何年も前に代替え地に転居し,今更ダム中止など笑止千万の事態と思うだろう。だいたいにおいて,その代替え地の一部に国交省八ッ場ダム工事事務所が今年8月「安全性に問題はない」との調査結果を発表しておきながら11月2日になって「大規模な地震が起きた場合、土砂崩れが起きる危険性がある」と発表しているのはあまりにも無責任である。

 国交相は「予断を持たず検証」といっているが,八ッ場ダム建設の大きな根拠が揺らいでいる。国交相は5日「各水系の治水計画の目標として河川整備方針で定める水量のピーク(基本高水=たかみず)のうち、利根川を毎秒2万2000トンと算出した資料の存在を確認できなかった。利根川の河川整備基本方針を策定した際、十分な検証が行われておらず、2万2000トンありきの検討を行った。当時の国交省がずさんだった」と謝罪した。他に謝罪すべき人がいるはずである。
 手元にある2008年6月11日付の朝日新聞によれば,「カスリーン台風備えるはずが八ッ場ダム効果なし」の文字が躍っている。それによると,「カスリーン台風並みの台風に備えるために必要と説明してきた国(国交省)が実際は治水効果がないと試算している。総事業費は4600億円,1952年に計画が示されるも半世紀以上経った現在も本体工事は開始されてない。国交省試算ではダムがあってもなくても下流のピーク流量は同じ毎秒2万421トン」と報じている。

 建設の根拠なしに50年近く二代,三代に亘って地元民を翻弄をしておいたなら,なんということなのか。根拠なしの建設ありきを「予断持たず検証」した結果,建設が中止されるなら地元民も納得できるのではないか。ただ,深甚なる謝罪と手厚い生活再建策と保証が確保されて然るべきである。同時に,根拠なしに建設を継続してきたことの責任が追及されるべきである。もし,根拠なしを承知しながら半世紀以上に亘り意図的に建設工事を継続してきたなら関係者の行為は国民に対する重大な背信行為ではないか。

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