日々の抄

       目次    


 善意の輪は広がる

2011年1月11日(月)

年が新しくなってからめったにない嬉しい新聞記事を見た。
 そのひとつは,鳥取県大山町の国道9号で昨年12月31日午後3時40分ごろ、大型タンクローリーが雪のためにスリップして道路をふさいだことをきっかけにして米子市から琴浦町までの約25キロの区間で車約1千台が立ち往生する事態が起こった。その結果,40時間以上たった今月2日午前8時25分、通行止めが全面解除されるまでの間,身動きのとれない約1千台の車の中で困難な事態が引き起こされた。沿道にコンビニは四軒だけでほとんど買い尽くされていたという。燃料の少ない車では暖房を使うことができず寒さとの戦いがあった。乳児を抱えた車ではミルクを授乳するための湯が必要であった。トイレを使うこともできなかった。
 「それは元日の朝のことだった」とする朝日新聞の報道によると,トイレを案内の看板を作って貸してくれる人,家にあるありったけの米を炊き出した人,商品の饅頭を1200個も配った人,バナナ,珈琲を振る舞った人など沿道の住人が車上の人たちを援助するため懸命に活動したという。感謝の言葉をかけられても「琴浦はそんな土地柄です」とさりげなく語る人びとの汗まみれの行動は今は久しくなった日本人が持っていた他人への思いやりが息づいている事を知りホロリとさせられた。

 もうひとつは,前橋市の児童養護施設へアニメの「タイガーマスク」こと「伊達直人」名でランドセル10個の寄贈が昨暮にあったことをきっかけにして,あちこちでそれに続く善意の連鎖が伝えられていることである。
 元日夜に小田原児童相談所は5日同相談所が入る合同庁舎玄関前で元日の夜にランドセル6個,
7日には長野市の児童相談所にランドセルが6個,静岡市の児童養護施設には6日の消印で十万円,
長野市の児童相談所にも7日ランドセル6個,7日には沖縄南城市児童養護施設に来年度の新入生の数を電話で確認してからバイクでランドセルを3個届けたが,職員のいい間違えが伝えれられその後再び不足分の2個を届けたという。8日には岐阜市長良森町の児童養護施設にランドセル5個,9日には厚木市の児童相談所にプラモデルなど22個,同日長崎市橋口町のこども・女性・障害者支援センターに7個のランドセルを置いていた女性が無言で立ち去ったという。10日には兵庫県赤穂市の兵庫県警赤穂署の駐車場にランドセル4個が置かれていたが,児童施設でなく警察署に置くと遺失物扱いになり三ヶ月経過しないと児童に渡らないという。

 ランドセルは少なくとも1個3万円するから,前橋の場合は30万円相当を越える寄付であり,誰でもできるものではない。その気持ちは尊いものであり頭が下がる思いがする。大分以前からランドセルのコマーシャルを年間を通してやっていることに疑問を持っていた。新学期が過ぎれば売れないのと思うのに何故年間を通して宣伝する必要があるのか,という疑問である。その疑問がもしかして,タイガーマスクに無関係ではなかったのではないかとさえ思えてくる。高価なランドセルは十万円を越えるものもあると聞く。寄付されたランドセルはそんな高価な物より遙かに価値のある物である。それは人を思いやる暖かい血の通った気持ちが込められているからである。これからもきっと全国規模で同様の寄付があるに違いない。「日本人も満更ではない」。そんな気にさせてくれる久しぶりに気持ちを明るくしてくれ,自分も自分以外の人に何かをしなければと思わせてくれることである。

 ささやかな善意が心に温かさの灯火をつけてくれる気がするが,一方でプロスポーツ選手の5億円の報酬を伝えるニュースには割り切れないものを感じる。伊達直人氏の善意は全国に広がりつつある。次は菅直人氏の出番である。
<前                            目次                            次>