見下げた番組である |
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2011年1月23日(日) 英国BBC放送の人気お笑いクイズ番組「QI」で日本人および,悲惨な被爆を受けた人びとを侮辱する放映が昨年12月17日にあった。 広島と長崎で二重被爆し、昨2010年1月に93歳で他界した山口彊(つとむ)さん(長崎市出身)を「世界一運が悪い男」などとジョーク交じりに紹介した。番組では俳優としても知られる司会者スティーブン・フライ(Stephen Fry)が山口さんの2重被爆という悲惨な体験を,アロハシャツのお気楽な姿で「The Unluckiest Man in the World(世界で最も運が悪い男)、Tsutomu Yamaguchi」「広島での出張の際に原爆で大やけどを負い、長崎に戻ったら再び原爆が投下された」と説明。ゲストの1人が「で、長崎の病院に入院したのか?」と突っ込んだり、山口さんが広島での原爆投下の翌日に電車で長崎に移動した事実を司会者が面白おかしく語り,これに呼応して客席は爆笑。スタジオには山口さんの顔やキノコ雲の写真が大きく掲げられていた。 山口さん個人にまったく責任のない大国の都合による一方的な非人道的な原爆投下という行為を,バラエティ番組で取り扱うこと自体に問題があることは当然だが,山口さんの体験を揶揄して茶化すという安易にして考えなしの侮辱的行為は日本人としてとして到底許し難い。番組で2重被爆を取り上げた行為,茶化した行為,司会者の茶化しに呼応して爆笑した行為,これを放映し続けた行為のいずれも許し難い。英国人の中にこうした「人間として愚かで程度の低い人間」がいることを英国人はどのように思っているのか知りたい。彼らは程度の低い人間である。BBCも程度の低い放送局と言わないわけに行かない。 仮に,故ダイアナ元皇太子妃が他国民によって,勝手に自動車事故を起こして云々などと侮辱的な発言がなされたら英国民はどのように感じるのか。彼らには被爆した人びとの不条理な経験が理解されてないことは確かである。また,自分たちの行為がヒバクシャにどのように受け取られるだろうかと考えることのできる想像力が欠如している。核弾頭を200個近く保有している英国民が今回のような発言をすることに背筋の寒くなる思いがする。英国の戦勝国としての傲慢さを感じないわけにいかない。 過去に太平洋上のクリスマス島,オーストラリアのマラリンガ,オーストラリア西部のモンテベロ諸島で行ってきた核実験についてどのように思っているのか。英国民は自国から何万キロも離れた場所で起こっていることに想像力を働かせることができないほど愚かな国民なのか。 放映を見た在留邦人のBBCへの抗議で事が明らかになったが,抗議がなかったら面白おかしい話で終わったのか。在英日本大使館がBBCと番組制作会社に書面で抗議し謝罪がなされたというが,番組担当者は「日本人の原爆問題に対する敏感さを軽視した」と謝罪しながらも「取り上げた題材をからかうような番組ではない」「不快にさせて大変残念」「日本人の感情を今後考慮する」「( 山口さんを)バカにする趣旨の番組ではなく、驚くべき経験を正確に伝えようとしたつもりだ。日本人の強さを真に称賛している」などとしているが,謝って済む問題ではない。愚かな言い訳は程度の低さを証明するだけである。「第2次大戦中の欧米人の悲惨な経験についてもお笑いクイズ番組でしばしば取り上げてきた」などとみっともない言い訳をしているが「欧米人の悲惨さも伝えてきたから,2重被爆も同類だ」と言わんばかりであり,山口さんを侮辱したことの重大さが理解されているとは思えない。 今回の放映について,英国民からの糾弾が聞こえてこないのは「被爆についての見解」が番組関係者と同じなのか。もしそうなら,英国民の世界平和,核廃絶などという高邁な発言は薄っぺらな言葉にしか聞こえないだろう。 本サイト「終戦記念の月の終わりに」(2010年8月29日)に記したように,山口さんは米国のキャメロン映画監督に自分の思いを世界に伝えて欲しいと願い,「原爆投下は 二度と起きてはならない。必ず世界に伝えます」と確約を得て間もなく他界している。キャメロン監督はやがてできるであろう映画で今回のような見解を持っている人びともいることも伝えてほしいものである。 |
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