日々の抄

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 松は泣き止まない

2011年8月15日(月)

  陸前高田の松を京都五山送り火で焚き上げることの顛末は意外だった。12日、京都市が取り寄せた薪500本から放射性セシウムが検出されたとして「科学的根拠に基づき、誠に残念だが断念せざるを得ない」「放射性物質が検出されないとの前提が崩れたから中止する。被災地の薪が安全か否かを判断したのではない」と説明された。幹の部分だけを燃やすことは「議論していない」とし,16日の五山送り火での使用を中止するに至った。陸前高田のひと々の気持ちをくんだように,用意されていた500本の薪とは別の薪が成田山新勝寺で行われる9月の護摩焚きの時に使われることになった。放射性物質が含まれた薪が焚かれるときに飛散することの心配は,「追悼が第一だ。皮を削って使うので、問題ないと考えている」と話している。

  一連の報道にいくつかの疑問が残る。
その1
 なぜ,薪を福井県坂井市のNPO法人が提供したのか。地元陸前高田の関係者なら理解できる。また8日の段階で送り火保存会は薪のかけらを取り寄せ、「民間会社に依頼してセシウムとヨウ素の検査をしたが何も検出されなかった」としていたが,今回の検査結果との違いはなぜ起こったのか。違いの理由を知りたい。5月20日付けの検査結果が示されているが,たしかにセシウムとヨウ素は未検出だがストロンチウムが検出されていることは報道されてないのはなぜか。マスコミはこの点の確認をして報道したのか。

その2
 京都市は「放射性物質が検出されないとの前提が崩れたから中止する。被災地の薪が安全か否かを判断したのではない」としているが,安全か否かは問題でない,とはどういうことなのか。薪を使用しない理由を見つけたかったとの感を持たないわけにいかない。ま,陸前高田のひとにとっては,仮に薪が五山の送り火で使われても,いやがられながら薪が焚かれることはよしとしないだろう。
  成田山新勝寺が行おうとしている薪の樹皮を剥いで使用する努力を京都でなぜしなかったのか。薪は、京都市内の民間の倉庫に保管されているが、処分方法は決まっていないとしていた。京都に残された薪を無論燃やすことなどできないはずだがどう処分するのか知りたい。公にして貰いたい。

その3
  16日に五山送り火で使われる薪の放射線量検査は行ったのか。もし行ってないなら陸前高田の住民に失礼である。なぜなら,3月の福島原発の爆発事故が原因と考えられる放射性物質飛散は全国の広い地域で確認されている。大阪でも大分でも ,香川,福岡,長崎でも確認されている。
 また,当の京都でも検出されている 。京都府保健環境研究所は,3月1日から1カ月間集めた雨水や塵から、微量の放射性物質セシウム134を検出したと発表した。京都府内でのセシウム134の検出は、チェルノブイリ原発事故後の1987年以来24年ぶりで福島第1原発事故の影響とみられるとしている。検出された放射線量は微量だったというが,五山送り火で使う薪はどこで作られたものか知りたい。もし薪が京都産でなくとも上記「その2」にあるように,使用される薪が「放射性物質が検出されないとの前提」であることを公にしないのは片手落ちではないか。
  成田山新勝寺のお焚き上げについて地元千葉県民がどのように感じているかを知りたい。

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