日々の抄

       目次    


 的外れな非難です

2011年12月10日(土)

  短文投稿サイト「ツイッター」が流行っていて,思いついたらすぐに書き込んでコミュニケーションを図っているそうだ。ツイッターは2006年に開始され,日本では2008年から利用可能になったという。そのツイッターで人間関係を悪化させたり,時には職を失ったりしている場合があるという。
  本年3月,米国州知事報道担当者の東日本大震災を茶化した不適切な書き込みが発覚して辞職。日本テレビレポーターが気仙沼での震災現場で「おもしろいね」などとい中継待ち状況を書き込んている。7月には,なでしこジャパンのメンバーの一人の酒席の状況を書き込みこれが不適切として削除されている。同月「47NEWS」の運営スタッフが、編集部の公式ツイッターで「ストレステストについてガタガタ文句たれる奴は日本放射線汚染化推奨派認定にゃ」などと不適切な書き込みを行い、ネット上で批判が集中し閉鎖された。
  また,有名人のプライベートの行為を目撃したホテルやスポーツメーカー従業員が暴露する書き込みをして職を失っている。また8月には長万部町のHPに書き込まれた個人的見解の内容が問題視され,9月には製薬会社の社員がハルシオンを酒に入れて飲ませたことを実名で暴露している。

   ツイッター記事で東日本大地震に関わる福島県農家に対する許し難い中傷誹謗が最近あった。火山学が専門という群馬大学教授の書き込みに信じがたい内容があった。そのいくつかを書き出してみると以下のようである。
(2011/4/25)ヒロシマとフクシマの決定的違い。フクシマの被曝は避けようと思えば、避けられる。方法は簡単。引っ越すだけでいい。この事実が広く知られているのにもかかわらず、引っ越さない親は、子どもに毎日たばこひと箱与えて子育てしたのと同等だ。そのような娘はわが家の嫁にもらうわけにはいかないとのたまうがんこ親父に私はなりそうだ。
(2011/7/11)「セシウムまみれの干し草を牛に与えて毒牛をつくる行為も、セシウムまみれの水田で稲を育てて毒米つくる行為も、サリンつくったオウム信者がしたことと同じだ。福島県の農家はいま日本社会に向けて銃弾を打ってる。」
(2011/7/15)「行政による出荷自粛の要請って、ほんとにひどい。農家はなんでそれしたがってるんだろか。全品即金で買い上げろと、なんで交渉しないんだろか。いままでは理解しがたいと思っていたが、いまからはそういう農家は私の敵だとみなすことにした。毒を口に入れられてはたまらない。殺される前に殺す。」
(2011/11/21)「東電解体、福島廃県。そして気象庁廃止。これを断行しない限り日本は生き残れない。」
(2011/11/27)「国が私を殺そうとしているのではない。福島の農家が私を殺そうとしているのだ。殺そうとしているやつに攻撃のねらいを定めるのが正しい。」
(2011/11/30)福島の農家のことなんかひとつも心配していない。彼らが滅びても私は何も困らない。文字通り他人事だ。心配なのは、自分と家族の健康だ。毒を盛られてはかなわない。

などというものであり,福島県の農家があたかも悪意があって米作をしているかのごとき内容は思い違いも甚だしい。農家は福島原発事故がなければ自らの手で米作を行い自らの生活を営むことができたはずである。毒米と称している米を作る原因を作ったのは農家ではない。セシウムまみれの干し草は原発事故によるものであり,耕作の前に米作に支障が判明していれば作業を始めなかったはずである。
 収穫前に福島県知事が「福島産の米は安全です」と福島県,国の放射線測定結果を基に宣言している。社会を転覆することを目的としたサリン事件と同等に扱うことはとんでもない誤りであることを国立大学の教授たるものがなぜ分からないのか。本人は注意を喚起するために大げさに訴えたと言い訳しているらしいが,「福島廃県」「国が私を殺そうとしているのではない。福島の農家が私を殺そうとしているのだ」などと語っていることは正気の沙汰とは思えない。福島の農家は原発事故の犠牲者であることを知るべしである。
  こうした書き込みをしている教授に群馬大学は何度となく警告を発したが受け入れることがなかったため「訓告処分」にしたが全く反省の色を見せず,「処分は学問の自由を奪う行為で大学の自殺」などと批判しているというから救いがたい。
  農耕が先祖伝来のものであり,米作を阻害し出荷許可を出した元凶にこそ批判の矛先を向けるべきであり,農家を非難することは大きな誤りであり,冒涜である。農家は米作を生活の糧にし,米作が農家の生き甲斐であり,原発事故の賠償が出ることになったとしても目先の収入がなくなり生活が困窮に至ることに思いを致すべきである。サリン云々の書き込みは安定した収入を国から得ている大学教授の子供じみた妄言であり,農家の苦しみに礫を投げつけることに等しい行為である。
  書き込みをした教授が大学から非難されていることはけしからぬことであり,大いに書き込みを続けるべし,カンパを募るなどとの動きをしている人物もいるらしいが,自分,家族が福島の農家または関係者だったら同じ事が言えるのか。彼の書き込みで福島県の多くの人々の気持ちに槍を突き刺していることを知るべきである。原発事故を批判するなら,非難されるべきは東電,行政,国であり,農家を矛先にする行為は弱いものいじめ以外の何物でもない。批判の矛先を誤れば言葉が凶器になるという見識を持つべきである。

  ツイッターは日本国内で毎日300万人余,全世界で毎日約1億人が利用しているという。気軽に書き込んだ内容がそうした不特定多数の目に晒されていることを知るべきであり,顔が見えないからといって,お気楽に利用することは避けるべきである。考えなしに書き込んだことで多くの人を傷つけることがあってはならない。
 
<前                            目次                            次>