一年の初めに |
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2012年1月6日(金) 世界的経済的危機,国内では与党の相次ぐマニフェスト反故,生活困窮者続出,就職氷河期,捗らぬ大震災対策,社会制度の崩壊,増税問題などを抱え波乱を含んだ新年が明けた。元日の新聞展望を記しておきたい。 「朝日」:「ポスト成長の年明け―すべて将来世代のために」と題して上述の諸問題への危惧を列挙し「戦後ずっと続いてきた,成長の時代が、先進国ではいよいよ終わろうとしている」としている。「バブルで財政赤字に」「進化が生んだ草食系」「成長から成熟社会へ」と項目立てをして,「国をもっと開いて打って出て、新興国の成長力を取り込み、世界に伍していける若い人材育成を」,将来世代のために「持続可能性」を大原則とすること,財政支出や金融拡大に頼った「成長の粉飾」をしないよう提言している。また,「シルバー(高齢化)とグリーン(環境)が、次の活力ある経済をつくるタネになり得る」としている。 「毎日」:「2012年激動の年 問題解決できる政治を」と題して情勢分析をしている。「求む、情熱と判断力」として政治への幻滅が再び広がり始めている昨今だが,いずれの問題も「政府・与党が解決策を作り、これを野党、国民に丁寧に説明し、国会で法制度を成立させ政策として断行する。民主的手続きを踏まえ一歩一歩ことを進めていくしか道はない」としている。また,「なぜ妥協しないのか」として,与党には「マニフェストにあったことなかったことの政治課題総覧を示し自己評価すべし」,野党に対しては,「審議拒否でも批判のための批判でもない,包括的な代替案の提示をすべし」としている。 「読売」:「危機 乗り越える統治能力を ポピュリズムと決別せよ」と題し,「経済活性化は復興から」では,「政治が機能不全から脱却する必要がある。民主党政権の統治能力も問われている」とし,「政党間協議で合意を積み重ねる必要がある」と訴えている。また,「財政破綻もあり得る」として,公的債務は900兆円弱に膨らむという憂慮すべき状態の中,党利党略を超え合意を目指すべきとしている。また「中国にどう向き合う」「農業再生へのチャンス」「安全な原発に更新せよ」とし,各論を述べ原稿用紙8枚を越え饒舌の感がある。 「東京」:「年のはじめに考える 民の力を今、活かそう」と題し,『「コンクリートから人へ」の象徴として中止した八ッ場ダム建設の再開、整備新幹線や東京外郭環状道路など大型公共事業を復活、議員定数や国家公務員総人件費の削減見送り』は『「無駄を切り詰めたから増税を」という政治の意志も財務省の意図さえうかがえない』としている。また,「財政再建に増税が避けられないなら無駄を徹底的に削る、信頼に足る政権に託したいというのが皆の共通した気持ちだと思う」とし,消費増税法案提出前に、国民に信を問うべきと具体的な提言をしている。 いずれの社説も言わんとするところに変わりはない。一年の初めの社説として鋭さと新鮮さをどの社説からも感じられなかった。現政権への不信,世界的経済問題,国家破産への危惧は誰しも感じ案じていることであり,元日の社説として目新しさを感じさせることができないほど現状が疲弊しているということなのか。 読売は「負担減と給付増を求めるような大衆に迎合する政治(ポピュリズム)と決別することが、危機を克服する道である」としているが,朝日の3日付け記事「カオスの深淵」にある「若者の渇きに ポピュリズム」を比較してみるのは興味あることかもしれない。 マスメディアの大きな一翼を担う新聞は,かつて郵政解散での小泉人気をもり立て国中が熱気を帯びさせることに助力した。その後,市井を支えていた街中の多くの小売店の姿が消え,非正規雇用が増加し社会の疲弊化を加速させた。いったいあの熱気は何だったのか。 ここで,ひとこと書いておかなければならないことがある。昨今のマスコミは疲弊している既成政党の仕儀を憂慮しこれを解決できる第三勢力が大阪維新の会であるかのような報道を続けている。目先の敵を作り自己主張するという劇場型の手法は小泉流と酷似し,諸刃の刃である。疲弊している現状を批判し,勇ましい言葉を投げかけることは容易であり,ポピュリズムを煽り立てることはできるかもしれない。大阪という一地方都市の選挙結果が日本中を席巻するなどと吹聴することは控えるべきである。目先で耳障りのいい言葉と手法が5年後,10年後の国民生活を更に疲弊させることに繋がらないかの試算と展望を失うことはできない。 「朝日」は「世界に伍していける若い人材を育てていかねばならない」としているが,与党の老獪な政治家に一喝されただけで記者会見で尻込みをするような人材では心許ない。マスコミもしっかりと,国の将来を語り,政治家に食いついていける人材を育成することを望んでやまない。 |
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