日々の抄

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 辞め時が価値を決める

2012年4月13日(金)

米軍普天間飛行場移設問題で2010年6月に首相辞職に追い込まれた鳩山由紀夫氏は、 その後2011年2月「県外移設」を断念した理由として海兵隊の抑止力を挙げたのは「方便だった」と発言。「学べば学ぶにつけて、海兵隊のみならず、沖縄に存在する米軍全体の中で抑止力が維持できるとの思いに至った」との首相の発言が嘘で固められたことが明らかにされた。首相の立場の人間が国民を欺いていたことを自ら暴露し大顰蹙を買った。
  首相を辞職した後、次回の選挙に立候補しないと宣言するも、いくらもしない内にその言葉を反故にした同氏の、時と場合と立場を考えない「とんでも発言」がいまだに続いている。

  何をおいても国連で全世界に向けて二酸化炭素25%減を宣言したことの大罪をどう考えているのか聞いてみたい。鳩山氏の後任の菅内閣に対し2011年1月には、「挙党体制を望むと言いながら、自分の仲間だけで決めてしまう。最強の体制と菅首相が胸を張るほど国民は期待してない」などと発言。自分がしかるべく処遇されない恨みを語る腕白坊主の如しである。
  2011年2月、北方領土問題で「4島同時返還というアプローチでは未来永劫平行線のまま。2島にプラスアルファ」と政府方針に反する発言があった。
  2011年12月英科学誌ネイチャーに、東京電力福島第1原発は「事故の情報を収集し事実を公にするため国有化すべきだ」と主張する提言を発表。なぜ政権与党の一議員が、緊迫する国内問題を英国の科学誌に発表しなければならないのか。

  そして今月4月はじめ。現政権がイランの核開発への憂慮を表明しているにも拘らず、鳩山氏は首相の中止要請を振り切ってイラン大統領らとの会談に出向いた。イランの核開発問題をめぐる原油供給の停滞や武力衝突の回避策などについて意見交換し、国際原子力機関(IAEA)の同国への対応を「二重基準」と批判したと伝えられた。鳩山氏は、捏造報道と抗議し、イラン大統領府の担当者は「発言は事実だが、日本との間で緊張を引き起こしたため」として英語版とペルシャ語版のウェブサイトから発言を削除した。今回の訪問は「あくまで議員個人の活動」としているが、鳩山氏が「個人の立場」と主張しても、元首相かつ民主党の外交担当最高顧問であることは無視できまい。何も立場を持たない個人がイランに出向いて大統領と会談した場合と重みに違いがあることは言うまでもない。イランと日本の関係を憂慮して行動というが、鳩山氏がイランの国際的立場を改善させるために利用されたことは否定できまい。発言の真偽はともかく、そうしたことが取りざたされていることが国益に反していることに鳩山氏は気づいていないのだろうか。

  「方便発言」だけで十分万死に値する同氏は議員を辞職する理由を重ねた。また、彼の荒唐無稽な発言をいちいち報道するマスコミに問題がある。報道されなければ同氏もその気になって発言をすることも少なくなるだろうし、報道の価値は皆無に等しいことを知るべきである。与党民主党内の仲間内の足の引っ張り合いは見るに耐えない。夏までに総選挙が行われると語られ始めている。財政再建のためにも、国会議員それも国民の立場になって行動できない議員の数を削除することを考えるべきである。国民はマスコミの喧伝にうまく乗せられることなく、この国の将来を誰が真剣に考えている人物かを見分ける努力は続けなければなるまい。財力と義理人情で人を操ってきた政治の世界を見るのははうんざりである。もうお坊ちゃま議員の寝言は聞きたくない。
   
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