日々の抄
 
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 福島原発は本当に収束したのか

2012年5月27日(日)

  休止点検中だった福島第一原発4号機が昨年3月爆発し、使用済み核燃料を建屋に残したまま惨めな姿を曝したままになっている。その4号機の建屋が傾いているのではないか、との関係者の指摘を受け,東電は26日細野原発担当相と報道関係者に使用済み燃料プールを公開した。代表取材のマスコミ関係者4人の被曝線量は建屋に入る前後も含めて0.09〜0.11ミリシーベルトだったという。取材時間は40分というから,年間許容線量を1ミリシーベルトとして一日に7時間労働すれば現場に立ち入れないことになるほどの高線量であることが分かる。一方,2号機では毎時5〜7万ミリシーベルト,3号機の建屋内ではでは毎時10〜1600ミリシーベルトの放射線量という。

  東電による点検は,「建物の傾きの確認,建物の傾きの確認,目視点検,コンクリートの強度確認」であった。その結果は東電によると、「外壁の上層部の一部は損傷しているものの、重要な使用済燃料プールの躯体は壁厚が140cm〜185cmと厚いこともあり、ひび割れや傾きも無く、また十分なコンクリート強度も確保されており、安全に使用済燃料を貯蔵できる状態にある。また、建物全体の傾きに関しては、写真のアングル等により傾いている様に見えるものがあるが、今回の計測から建物は傾いていないことを確認した」というものであったが,建屋西側の高さ約13メートル付近の壁面外側に約3センチ膨らんでいたという。
  コンクリートの強度はシュミットハンマーによる測定値を示しているが,4号機を危険視する最大の理由は、構造体としての耐震強度であり,建家の傾き,コンクリート強度など個々の問題ではない。東日本大震災の最大震度程度の地震が再び起こった場合の耐震強度についての健全性については何ら触れてないのは片手落ちである。建設時に崩壊している壁,屋根,床を含めて強度設計しているはずなのに,現状の廃墟と化した構造体が露出している状態を見て,東電がいくら「大丈夫です」と言っても信じるわけにいかない。東電は事故後、プール底部を鋼鉄製支柱やコンクリート壁で補強し、「震度6強の地震でも十分な安全性がある」としているが,破損した部分を除いた状態での強度計算を東電以外の組織が計算・点検しなければならないのではないか。大本営ばりの東電の説明は信用できない。
  また仮設の装置での冷却水の設備が、再びの地震で破損し瓦礫に埋もれた場合,1535本の保管されている燃料棒から大量の放射線が広域に放出される恐れは十分あり得ることである。

  原子力安全基盤機構の22日の発表によると、福島第1原発1号機の格納容器内の水位は40センチメートル程度,大量の水を注入して冷やしているが水位は上がらず、原子炉(圧力容器)には毎時6トン前後の冷却水が注入されているが、ほとんどが原子炉から格納容器へ、そして損傷部から建屋地下へと流れ込んでいる状況とみられる。2号機は内視鏡による測定で、格納容器内の水位が60センチにとどまることが判明しているという。

  このような、いつ異常事態が発生してもおかしくない状態でありながら,はたして昨年12月「発電所の事故そのものは収束に至ったと判断される」という首相の宣言は妥当なのか。否、否。国民の多くが事故が収束しているなどと思ってはいまい。大飯原発をはじめとする原発を経済的理由だけで再稼働しようとしている動きは信じがたい。
  原子力村と呼ばれる電力企業,関係官庁,政治家の利権確保としか思えない動きは看過できるものではない。最も許し難いのは原子力関係の学者,専門家と称される人物が電力業界から資金援助を受け,国民の安全を二の次にして福島原発の不幸を引き起こした反省もなく,業界に都合の良い国民へのお為ごかしを平然と語っていることである。
 
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