日々の抄

       目次    


 教育委員会しっかりしなさい

2012年8月20日(月)

 「いじめ」をはじめとする諸問題を抱えた教育現場を考えると,教職に就くことを躊躇する学生がいてもおかしくない昨今である。そうはいっても就職先を必死にリサーチするもののいまだ進路先を決めることができないなら,深刻さが揩オてくる。教職の場合一般には,7月に一次試験が行われその後10月に二次試験,合否結果が年末に発表になるから,不採用になった場合,他の進路先を決めることはきわめて困難な状況に追い込まれる。つまり,現役学生にとって教職に就くことは人生における大きなバクチと言えるかもしれない。
 
  その教員採用試験の不手際が毎年のように伝えられている。来年度採用のためのこの夏の試験でも少なくとも16都県で判明している。そのほとんどはケアレスミスだが,概要は以下のようだ。
・解答例,選択肢に正答なし,正答が複数ある
  山口(音楽),富山(養護),三重(生物),沖縄(物理),神奈川(一般教養で正答が二つあり),東京(音楽)
・問題文に誤り
  山形(教養),宮崎(中学国語,高校工業の電気・電子,高校理科の化学,生物,中学数学の5科目),岩手(地学),和歌山(一般・教養),栃木(英語でスペルミス )
・採点集計ミス
  奈良(プログラムミスで130人追加合格),沖縄
・受験連絡ミス
  大分(1次試験免除と連絡した受験者を不合格に)
・解答欄に解答が書かれていた
  高知(教養)
・解答を試験前に配布
  福島(09年にも午前に午後分の試験用紙を配布)

  言うまでもなく採用試験には受験生の人生がかかっている。作問ミスの理由が,「作問の教諭の思い違い」など報道されているが,作問を教諭が行っても最終的には教委の教科担当の指導主事が点検するのが当然ではないか。教員採用試験は教育委員会が責任をもって行うのは当たりまでのこと。「今後同様のミスがないように万全を尽くします」と言っているが,教委にとって毎年のことだろうが,受験生にとっては生活のかかった人生の岐路に立っている時であることを真剣に受け止めるべきである。

  採点のミスもあってならないこと。事前にダミーデータなどでの点検は行っていないのか。解答を試験前に配ったり,正答が選択肢になかったり,いずれも事前に十分に点検すれば避けることができるはずではないか。PCの過信は命取りになりかねない。
 こうしたことが毎年起こる理由は何か。教委の力量の問題なのか,問題の過度の隠蔽化なのか,責任の所在の曖昧なことなのか。採用試験でミスがあっても担当者は責任を問われることはないのか。「全員に当該問題に加点しました」ということが責任回避になると思うのは大いなる思い違いである。受験生は受験した教委がそんな程度などと落胆していることに気付くべきである。

  誰しもケアレスミスは犯すものである。そのミスを回避する知恵を発揮してこそ賢い人間であり集団である。ケアレスミスを回避するシステムを作ることが望まれている。それをしてないからこそ毎年のようにミスが起こっているのだ。

  あまりにもお粗末な採用試験をしている都県で,はたしてやる気があり,子ども達を成長させることができる人材を採用できるのだろうか。まずは教育委員会,特に教科指導の最前線にいる指導主事さんは,もっとしっかり生徒や子ども達に役立つような研修を積んでほしいものである。各学校を統括し都道府県の教育に強い影響力と権限を与えられていることの自覚をしっかり持つといい。そうしたことに応えられる人材が指導主事として望まれているのではないか。上位下達に抵抗を覚えず上司から受けがいいことは必要条件ではない。

  もう一度言っておきたい。教員採用試験は教職を目指す人材にとって人生の分岐点にいるのだ。その自覚を関係者はしっかりもってほしい。

 
<前                            目次                            次>