日々の抄

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 平和ボケしている場合ではない

2012年9月22日(土)

  iphone5が発売されると聞いて発売日の2日も前から路上に泊まり込みの長い列を作っている若者の姿がTV画面に映し出されていた。毎度のことだが携帯電話もどきの新製品が発売された熱狂ぶりがTVのほとんどのチャンネルで報道されている。私企業の商品名を明らかにして報道していないNHKですらである。それほど意味のある社会現象なのか甚だ疑わしい。企業の商業主義に踊らされている姿は滑稽にすら見える。

  動作が速いだの新しい機能があるだの企業の手先になったような報道のある一方で,地図がでたらめで使い物にならない場合もあるのはどういうことなのか。羽田空港に私企業の会社名があったり,海上に鉄道の駅があったり,地図を信じて行動するととんでもないことになりかねない。スマホが70%もの普及率だと盛んに宣伝し,あたかも今までの携帯電話を使っていることが時代遅れであるような伝え方は考えものである。スマホの機能をどうしても必要なら手に入れる気になるが,流行っているからなどという理由で使う気はまったくしない。

  その一方で,先日来の竹島問題での韓国大統領の狂気の言動,尖閣問題での中国での争乱状態は信じがたい。いずれも日本が当事者の一方でありながら,「愛国」の名の下にナショナリズムのあまりにも大きな違いは一体何なのか。特に中国での反日の暴動は許し難い。従業員がすべて中国人でありながら店内から20数億円もの略奪が行われ,日本車の焼き討ち,日本車に乗っていただけで暴徒に襲われて半身不随にさせられた中国人までいたという。これらの激しい暴動は中国政府が当初は社会への不平不満のガス抜きのための「やらせ」だろうことは見て取れる。初めから押さえ込むことはできたはずが,中国全土に亘る争乱状態が日本国に対するアピールだと思うならとんでもない思い違いである。

  中国政府は外国人,外資企業を保護する義務を負っている。中国から要請され設立された家電メーカーは中国への経済支援の意味も持っていた日中の友好の証であった企業である。その企業が再起不能になりそうなまでに,ほとんどの施設設備が破壊されつくした。誰も住んでない島の問題で,それまでに築き上げてきた両国の友好関係など暴力によって反故にしても痛みを感じないなら,到底安心してつきあっていけるような隣国でないと思わざるを得ない。

  ただ,暴動に加わった暴徒は破壊活動に参加することによって賃金を受けたという報道もあり,また尖閣列島に漁船を出せば,普段の月収の3倍もの賃金が支給されたとも報道されている。これが本当なら,誰かが意図的に,社会に不平不満を持っている層の人間や漁民を手先に使って「反日」を扇動しているのだろう。

  韓国,中国の両国が領土問題でエキサイトしている一方で,太平楽にiphoneを買うために列を作ってみたり,両国に対する日本国内での集団での抗議行動が起こらないのはどういうことなのか。日本人,特に若者は領土問題は両国の行動を不快に思っても所詮他人事に感じているのではないか。まさに平和ボケそのものである。政治家がなんとかしてくれるとでも思っているだろうか。関心があっても都知事のように「中国船に体当たりをしてやればいいだよ」などと子どもの喧嘩もどきの無責任な放言はとてもまともな政治家のものとは思えない。

  言うまでもなく領土問題への日本国内の問題は歴史教育にある。受験のためといういう理由なのか,明治時代以降の歴史が深く扱われることは少ない。以前は寧ろ政治的な内容を扱うと「革新的,組合的」などと非難されることもあった。長崎,広島の被曝についても言葉を重ねると同様の非難を受けることもあった。
  時の政府が近隣諸国に対して戦時中の日本国のなしたことを陳謝する一方で,「南京事件は作り事,慰安婦問題はなかった」などと根拠を示さぬ政治家の放言が近隣諸国に不信感を持たせている一因なのではないか。歴史的事実は,「・・・と思う」のではなく「・・・であった」ことを知ることであり,自国に不都合な事実も正確に伝えられるべきである。過去の行為に対し近隣諸国に陳謝することが「自虐的歴史観」などと言う人物がいる限り近隣諸国と良好な関係は結べまい。


  民主党代表は野田氏の続投が決まった。自民党の総裁選は26日にあるそうだが,福島原発の汚染表土の処理場を「福島原発の第1サティアンというところしかないと思う」,などと言い間違えたことに気づかずに威勢よくまくし立てる候補者は,今回だけでなく2011年6月にも同様の放言をしているというからお粗末の限り。また,健康上の理由ということになっているが,2007年に「政治とカネ」を巡る問題や失言で閣僚の辞任が相次ぎ、参院選では自民党が惨敗し,「今の状況で、国民の支持、信頼の上に力強く政策を進めていくのは困難」と首相の仕事を放棄した人物の再登場には驚かされた。「投げ出しておいてまた出る面の皮」(朝日川柳)は言い得て妙である。民主党が第一党から外れ,自民党が政権を担い,靖国神社参拝を公言している人物が首相になれば,近隣諸国との関係はますます混迷の度を深めているに違いない。

  政治がますます混沌とした状態になり,先が見えない状態に陥っている。目新しく元気のよさそうな第三局とされる大阪発の勢力がマスコミにおだて上げられている。最近のマスコミの第三局に対する扱いは尋常ではない。かつて小泉人気を連日取り上げたマスコミはその後起こった深刻な社会の疲弊化をどのように感じているのか。
  現役の既成政党から第三局に鞍替えしている議員は政治家としての延命を図るため必死なのか。政党を変えるなら政治家を辞めてから鞍替えすべきである。選挙民は議員が所属する政党に期待して投票しているのである。特に比例区で当選した鞍替え議員9人中6人は,自分の都合での鞍替えが選挙民に対する裏切り行為になると考えないのか。そもそも批判の対象であった既成政党からの議員を受け入れる第三局のご都合主義は仁義に反する。

  政治に行き詰まりを感じても,憲法改正を声高に語っていたり,手のひらを返したように発言がころころ変わっても懲りない政治家に日本の将来を託す気にはなれない。政治に光明を見いだそうと未知な勢力に将来を託した結果,現状よりもっと社会が疲弊化することも考えてみるべきではないか。「何かいいことが起こるかもしれない」という漠然とした期待は余りにも暢気すぎる。
 
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