日々の抄

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 今年の終わりに

2012年12月30日(日)

 ことしの残りの時間はほとんどなくなってきた。正に激動の一年間だった。沢山の知名人がなくなった。最大の激動は政治である。
   予想通り民主政権は大敗退し自民党の圧勝だった。選挙後あれほど原発問題が注目を集めていたにも関わらず,最近,マスコミの報道も何事もないような静けさが漂っている。少なくとも選挙前の反原発の報道は少なくなっている。その最大の原因は反原発,卒原発を唱えていた政党に綻びが見えていたことである。日本未来の党が卒原発を訴え,反原発の票を集めるやに思えたところ,国民の生活が一番が合流したことである。小沢一派が合流するや「またか」の気持がブレーキをかけたに違いない。また,維新の会が反原発の旗を降ろしたことである。
   結党後ひと月もしないうちに,小沢氏を副代表にするとかしないとかの争いからまた新しい政党に変わっていく姿を見れば,反原発,反消費税などと叫んでいても結局は保身の為なんだったんだと思うと云うことか。反原発の流れがなくなったのでなく,選挙制度に問題があったのだ。つまり,比例区では非脱原発48%,脱原発52%の得票率だったが,獲得議席は非脱原発349,脱原発126であった。つまりは小選挙区比例代表制が民意を反映した結果に結びつかないことを明らかにした。

   自民党が大勝した思われているが,比例区では前回の得票率とほとんど変わりがなかったのだ。だが300を越える議席を得た。民主党前政権に失望し,何かいいことが起こりそうだとの淡い期待があった結果なのだろうが,自民党に全権委任したのではないことは承知しておいて貰わなければならない。
選挙中に,「憲法を改正し集団的自衛権を行使できるようにする」「尖閣列島に公務員を常駐させる」「竹島の日は政府主催とする」「聖域なき関税撤廃を前提にする限り、TPP交渉参加に反対する」「原発再稼働は三年間をかけて結論を出す」などと威勢のいい街頭演説,マスコミでの討論会で述べられていた。外交で弱気と受け取られていた前政権に対し力強さを感じさせるものだった。だが,最近になって新政権内から,すでにこれらに反する発言が聞こえている。

   21日,『安倍総裁は、竹島を日本に編入した日にあたる来年2月22日に政府主催の式典を開くのは見送る方針を固めた』と報じられた。竹島問題で悪化した日韓関係の修復を重視し、首相就任早々に開催する必要はないと判断したというが,こうなることは初めから分かっていること。遊説中の勇ましい演説は何だったのか。『自民党はできることだけ約束します』などと語っていたことが嘘になる。前政権を「うそつき」とさんざん非難した言葉が自分に戻っていることを知るべきである。すでに新政権はひとつの嘘をついた。

   27日,石原環境相は福島で「(原発稼働ゼロは)現実的ではない」とし、茂木経済産業相も就任直後の記者会見で「再検討が必要だ」と述べている。選挙前の『原発再稼働は三年間をかけて結論を出す』としていたことはどうなっているのか。「すべてのエネルギーの可能性を徹底的に掘り起こし、社会・経済活動を維持するための電力を確実に確保するとともに、原子力に依存しなくてもよい経済・社会構造の確立を目指します。」としていたが,初めから原発再稼働が結論ありきに聞こえる。選挙結果である国民の52%が脱原発を考えていることをどう活かすのか。

   28日,自民党の石破幹事長は,TPPの交渉参加問題について、『(来年夏の)参院選で避けて通ることができない。参院選までに党として、何らかの対処方針は当然決めないといけない』と述べているが,「聖域なき関税撤廃」を前提にする限りTPP交渉参加に反対する」としていたのだから,TPP交渉に「聖域なき関税撤廃」が国際的に認められるのか,また「聖域なき関税撤廃」とは何なのかを明らかにすべきではないか。次の参院選までに結論を出そうとしているようだが,その工程表を知りたい。

  29日,高村自民副総裁は,尖閣への公務員常駐について,『常駐を検討するということは、たとえば中国が実効支配を強引に力で侵そうとして、常駐をすることがそれを守ることに資するなら、そういうこともありうるよという一つのメッセージ。だから、そうではない時に、わざわざ常駐させて中国の国民感情をあおるのは、外交上得策ではない。』と発言。たしかにJ-ファイル 2012 総合政策集に「わが国の領土でありながら無人島政策を続ける尖閣諸島について政策を見直し、実効支配を強化します。島を守るための公務員の常駐や周辺漁業環境の整備や支援策を検討し、島及び海域の安定的な維持管理に努めます。」 とあるが,何度にも渡る中国による領空侵犯があっても黙認するつもりなのか。選挙演説を聞いていた聴衆は,「検討する」という言葉より,「公務員が常駐する」という言葉に強い印象を持ったのではないか。検討するだけなら,今までと何ら変わるものではない。自動車保険のやっと見えるような小さな字で書かれた約款に「検討します」という記述があったことを見落としたことを指摘されているのと同じような気がする。

   新政権が発足していくらもしないうちに選挙前に唱えていたことがなし崩し,ないし「そんなこと言ってないよ」と聞こえる閣僚の発言は何なのか。多数派になった奢りがすでに見える気がしてならない。「総合政策集」に書いてないからなどと言っても,選挙中に発言した言葉は消えない。

   来るべき年が,一時の見かけの好景気の後,超インフレ社会になり生活困窮者が増加しないことを願っている。
 
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