日々の抄

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 新年雑感

2013年1月6日(日)

(1) 大晦日に
  わが家では大晦日のNHKの紅白歌合戦なるものはほとんど見ない。何週間も前から,これでもかと思わせるような番宣を見せられ,出場者の紹介もしつこいほど見せつけようとしていることに辟易しているからでもある。コマーシャルの入らない最新ニュースを見ようとNHKにチャンネルを合わせたとたん,歌番組の番宣をいきなり見せつけられるといい気持ちはしない。
  だが,そうはいっても偶にはどんなものかと何回かのぞき見のつもりで視聴した。出場者や歌は知らないものばかり。特に若い歌手のほとんどは初めて見る人物ばかり。そんな中で,ひとつだけ見入った歌があった。美輪明宏の「ヨイトマケの歌」である。50年も前に発表され,かつては民放で差別用語があるからと歌われなかったという,美輪明宏渾身の歌唱は,歌詞にある「肉体労働の厳しさ,母への想い,いじめ」など今日的問題を含んだもので感動ものだった。この歌を聴けばへらへらとした生活をしていいのだろうかと思わせてくれるものだった。
  昨年は多くの有名人が他界したが,その中の勘三郎,森光子の遺影を見ながら今にも涙を流さんばかりで歌った和田アキ子に聞き入ったが,歌合戦後,あまり売れてないお笑いタレントが彼女にインタビューを求めるや「お前なんかにインタビューされる謂われはないんだよ,オラ」と威嚇している姿を見て,もう二度とこの人の歌は聞くものかと思った。芸能界の大物も,奢りと横柄さをもったら,単なる「暴走歌手」にすぎない。

(2) 年賀葉書
  年賀状は年始めの仕事のひとつだ。年賀状は「一年に一度の安否確認」と考えているので,自分では必ず一筆近況を書き込んで差し出しているものの,印刷の文字だけで味気ないものもある。何年も会っていなくて賀状に祝詞しか書いてないと,仕方なく出しているのかと思えてくる。また,小さい子どもの写真をべたべたと貼り付けてあるものの,受取人に対してのメッセージが何もないと,「どうだかな」と思ってしまう。かつての同僚が現在どのような暮らしをしているかを知らせてくれれば,卒業生がどんな仕事をしているのか,恩師が健在なことを知るだけで十分だ。
   年配の何人かに賀状を出しても返信のない人がいる。そういうひとは自分で返信を書けない状況に至る場合もあるが,世話になったそういうひとからの返信はなくともこちらの近況は必ず出すようにしている。
  一方で不思議なこともある。もう何年にも亘って差出人不明の賀状が届いている。差出人が分からないから当然返信はできないでいる。だが,同一筆跡の賀状が毎年届いている。文章の内容に小生が,差出人が高校生だった頃に語った言葉が添えられているから,身近な卒業生らしい。今はわざわざ返信は不要と思って賀状を差し出していると思っている。卒業時の寄せ書きで筆跡鑑定ができるがそこまでの努力はしてない。年賀状は電子メールでなく,相手の筆跡が分かるものがいい。

(3) ことしこそ
  以前は年明けに「ことしこそこれをやりたい」と思うことがふつふつと湧いてきて気持ちを新たにしたものだが,最近はそうしたものがあまり湧き出てこない。先が見えていることと,社会全般の閉塞感を思えば望外の想いをもつ気がしないことも一因である。

  朝日新聞の投書欄に「今年こそ」という特集があった。その中で面白いと思ったものを書きだしてみる。
  「大戦の日本人の犠牲者の大半は'刈りばねの小径をせかされた兵士たち'や'無名の民衆'だった」「戦争の前線に立つことのない指導者層の巧みは弁舌や,多面的思考が欠けた軽忽な発想には警戒を要する」として「国民の手で終戦70周年総括を始めたい・・・85歳男性」とした文章は力強いものがあり励まされた気がした。
   また「定年退職を迎え東日本大震災のボランティアに行きたい・・・65歳女性」,「韓国語をマスターしたい・・・49歳男性」「料理に挑戦したい・・・64歳男性」「着物の着付けを・・・52歳女性女性」などの抱負が述べられていた。
  面白いのは,「飲少読多で知的になりたい・・・48歳男性」があった。飲む時間を減らして読書に励み一年後は'知的な顔になりたい'という。もうひとつは「体重3キロ増やす・・・57歳男性」というもの。世の中はダイエットばやりだが痩せ体型なので健康管理して「体重を増やしたい」というもので,飽食の時代にそういう人がいてもおかしくないと思った。
  みなさんの並々ならぬ意欲が読み取れる。

  「ことしこそ」と思うことがあっても,小生のそれは新聞に投稿するほどのものではない。それが達成できた時に密かに「やったぜ」と思えればそれで十分。

 
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