日々の抄

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 強権発動はなじまない

2013年1月27日(日)

 大阪桜宮高校の体育系2科の入試が中止になってしまった。在校生をはじめとする入試中止に対する疑問の声の中,反対を押し切った橋下知事の強引な手法による結果である。高校入試を行うか否かの権限は教育委員会にあることから,市長が教育委員会と話し合った結果,教育委員会が出した結論という。と言っても市長の意向に反すれば予算執行しないということをちらつかせた強要としか見えない結果である。

 報道されているような体罰の名を借りた教員の暴力行為が無抵抗な生徒に加えられたことは認めることができない。手を下した教員は責任を問われるのは当然のことである。だが,このような事態に至るにあたってどうしても素朴な疑問が残る。

  バスケットボール部の部員は同校の普通科と体育系2科の生徒が混在しているにも関わらず,体育系2科の入試を中止しなければならないのはどういうことなのだろうか。入試を中止したことで暴力をなくすことにつながるとは思えない。どのようにして今まで続いてきた「体罰」を根絶するシステムを作るかが急務であり,その道筋と手順がどこからも示されずして入試中は筋が違うのではないか。また,強豪校指導者の特別扱い見直しが急務である。

  市教委は、体育系2科として予定していた募集人員や通学区域は変えず,スポーツの技能を重視した教科や配点などについても変更しないとしてる。看板の架け替えならなんの意味もない。


  生徒の未来のためにと称して橋下市長が求めている同校の教員総入れ替えはどうするのか。体育系部活顧問の55人だけが転勤対象になるのは当然のことなのか。全顧問が体罰を行っていたということが判明したのか。また,部活動以外の日常的教育活動の場でどうであったのか。

  全職員の転勤をできるならやってみるといい。同校の実態と生徒のことを知らない教員が,不信感を少なからず教員,教育委員会,市長にもっている生徒と良好な人間関係,信頼関係を作ることができるだろうか。こうした下での教育活動が生徒のため,生徒の将来のために役立つとは到底思えない。

  まずは,当該教員の処分と体罰を是としない風土作りと行動が最も求められているのではないか。
 今回の一連の市長の行為は,政治による教育現場への強引な介入の禍根を残したと記憶されるに違いない。首長が教育現場に強権を持って直接介入する危うさを限りなく感じる。大阪市教育委員会は限りなく存在価値を失ったように見える。

 
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