日々の抄

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 騙されかねないことがある

2013年6月8日(土)

スーマンボーズ=小満芒種(沖縄),ナガシ(九州地方),ナガセ(香川),クロミ (香川),ツイリ(紀州,中部地方),サンズイ(富山),サズイ(新潟),ジップグレ(岩手県陸前高田),入梅(東日本)はいずれも梅雨を示す言葉である。
  ことしは記録的な早さで梅雨入りしたものの晴天の日が続き,30度もの気温を記録している地域が少なからずある。

  気象用語での梅雨は「晩春から夏にかけて雨や曇りの日が多く現れる現象、またはその期間」だそうで,梅雨前線のように「ばいう」と読む場合もあるが、単独では「つゆ」と読むときめられているそうだ。
  梅雨の期間に入ることを「梅雨入り」,梅雨の期間が終わることを「梅雨明け」と呼ぶのは気象用語だが,梅雨に先立って現れるぐずついた天気を表す「梅雨のはしり」,梅雨期間の中で現れる数日以上の晴れ、または曇りで日が射す期間を表す「梅雨の中休み」,梅雨期間に雨の日が非常に少なく、降水量も少ない場合を表す「空梅雨」はいずれも気象用語でなく解説用語なのだそうだ。
  ことしのように本当に梅雨入りしたのかと疑いたくなる梅雨入り宣言のフライングは07年にもあったが,毎年9月に梅雨入り日の見直しが行われるそうだ。その07年は最高気温40度を記録した年だが,ことしがそうならないよう願いたいものだ。


  嘘を伝えているわけでないにしてもうっかり騙されかねないことを最近聞いた。そのひとつは「幼児教育無償化」法案である。
  政府・与党案は,「まずは5歳児から実施する方針を確認するも,地方負担分を合わせ年約2600億円の財源確保のめどが立たないので平成26年度は無償化の対象を絞り,小学3年以下の第1子がいる世帯の幼稚園保育料について,第3子以降はすべて無償,第2子は半額とする」という。
3人の子持ちの家庭ではすぐに,「3人目が無償,2番目が半分になって助かる」と思い,2人の子持ちの家庭で「そういうことならもうひとり子供がいても大丈夫」と思うかもしれない。
  だが,「小学3年以下の第1子がいる」ことが条件であることを忘れると期待はずれになる。つまり第一子が小学3年,第二子が小学1年,第三子が幼稚園児の場合,一年後は第一子が小学4年生になるので,子供が3人いても無償化の対象条件は2人になるから第二子が半額の給付をうけるだけになることは理解しておかなければならないだろう。政府・与党の言っていることを鵜呑みにすると,単純に「よかった」と思うが,その条件を見落とすとガッカリしかねない。

  もうひとつは,首相が「1人あたり国民総所得(GNI)を10年後に150万円増やす」とぶち上げたこと。これを聞いた庶民の多くは「10年後に150万円所得が増えれば嬉しい」と勘違いするのは無理からぬ事だが,思い違いしてはいけない。
  GNIは国内総生産(GDP=国内でつくりだした付加価値の総額)+日本人や日本企業が海外で稼いだ額である。これを人口で割ったものが1人あたりGNIだから,企業の儲けも入っていて,家庭の年収を表しているわけではない。昨年度は1人当たり384万円だったという。つまり,GNIが増加しても個人の給料が増えるわけではないのだ。首相は「GNIを毎年3%増やす」というが、家計が同じように潤うとは限らない。GNIは企業と個人の稼ぎを含むから,企業が内部留保金としてため込めば,給料は上がらない。最近では2010年度にGNIが最も伸び,前年度より1.3%増えたものの,平均給料は前年より0.6%増えただけだった。

  いくら円安になって株価が上がろうと,輸出産業が収益を上げようが,国民の所得が増えて生活が豊かになったと実感できたり,正規雇用が増えたり,そのことから安定した生活できる人数が増加して結婚する人数が増え子供の数が増加した結果年金の心配をしなくてよくなるためには,自動車産業をはじめとする円安で収益を増やした輸出産業の内部留保金に制限をつける法律を作らない限り,富の偏在が益々大きくなるだけである。

  首相は三本の矢とやらを射てデフレ脱却を図ろうとしているらしいが,一部の産業だけ臨時賞与が増加しているだけでは,一般庶民とくに年金受給者は生活に直接関係する物価や電気,ガスが高騰し,生活が困窮する方向に追いやられていることは実感である。三本の矢が毒矢に見えてならない。
  首相は外交にも教育にも社会制度にも憲法改正にも手を広げて何からなにまで頑張ろうとしているようだが,「二兎を追う者は一兎をも得ず」 である。今は憲法論議をすることより,経済政策だけをきっちりやってくれれば十分である。沢山のことすべてを自分の思うようにこなせることができるなどと誰も思っていない。最近疲れが顔に出ていることを感じているひとも少なくない。以前のように病気で途中退場しないように頑張りすぎないことを望む。

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