日々の抄

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 学力テストは何のため

2013年10月1日(火)

 小学6年生と中学3年生を対象に4月に実施した全国学力調査の結果が9月末に発表された。
科目名のAは主として「知識」に関する問題,Bは主として「活用」に関する問題である。
 科目別の結果は,
小学校
国語A 平均62.7% +9.0%−5.0%,国語B平均49.4%+9.7%−3.9%
算数A平均77.2% +5.6%-3.9%,算数B平均58.4% +8.7%−4.4%
中学校
国語A平均76.4%+5.5%−7.2%,国語B平均67.4%+7.2%−5.0%
数学A平均63.7%+6.2%−10.5%,数学B平均41.5%+7.7%−11.7%

であり,調査を行った国立教育政策研究所のコメントはいづれの科目ともに
「ほとんどの都道府県が平均正答率の±5%の範囲内にあり,大きな差は見られない」としている。
 参考までに小学国語A,中学国語Aについて正解率の違いを見やすくするためのグラフを作ってみた。



 学力テストが行われるたびに思う疑問は,対象が小学6年生,中学3年生であり,学力テストの結果を指導に活かそうと思っても9月の結果発表では時期的に遅きに失しているということである。対象学年の学力向上にはたして活かすことができるのだろうか。また,この「学力テストのための対策」が各校で懸命になされていると聞く。調査のために55億円近い経費が必要と聞くが,はたして学力テストが平常授業で得られる学力とつながるのだろうか。
 成績上位県はほとんど変わりないようだ。都道府県名の入った結果が報道され,グラフでも分かるように静岡県が群を抜いてできが思わしくない。その結果,当初静岡県知事は「成績が悪かった百校の校長を公表したい」と表明した。ところが周囲からの反発があったためか,知事は方針転換して成績上位校の校長名公表の検討を進めることにしたそうだ。静岡県教委はそれを受けて,「データを渡しても大丈夫」と判断し,成績結果を手渡したという。知事と面会した教育長は「教師を励ましていただき、課題を抱えている学校に支援を頂ければありがたい」と話したそうだが,見識のある対処である。知事のこうした行為は立場を忘れた教育現場への「腹いせ」のように見えてならない。知事の見識を疑う。

 学力テストが発表されるたびに地方自治体の長の何人かが自分のメンツをツブされたかのような発言をしているが,そもそも全児童が対象の学力テストが何のために行われているのかの意義,結果を対象児童の学力向上に還元できる方法など再考する時ではないか。
 学力は学校だけで培われるものでなく,地域・社会環境も少なからず関係しているはずである。「児童が帰宅してまわりに遊びに行くところがないので暇つぶしに勉強する」結果,自ずと復習時間が増え,学習効果が上がる地域が上位校にあることは知られている。成績が上位の県の教育方法を見倣っても下位県の成績が上がる保障はない。地方自治体の長は,教育関係者を責めるのでなく自分に何ができるかを考えるといい。少なくとも教育現場を萎縮させることは避けるべきである。教育現場は何が問われているか考え,児童が学ぶことの歓びを伝える努力を続けなければなるまい。

全国学力テストの詳細な結果は以下にあります。
平成25年度 全国学力・学習状況調査 報告書・調査結果資料 
 
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