日々の抄

       目次    


 原発再稼働の理由にはならない

2014年2月12日(水)

 都知事選が終わった。自民公明両党の支持により、舛添要一氏が 2,112,979票を得て当選した。舛添氏当選が決まるや、忽ちにして政府・与党内で細川、小泉に対し「晩節を汚した」などと、「勝てば官軍」の勢いである。真面目に政治活動している元首相に対し「汚した」などというのは誠に無礼な思い上がった物言いである。
 驚いたことに、福島原発の最大の消費自治体であるにも関わらず、原発問題は論点にならないとしておきながら、支持した候補が都民から多数を得たから、与党はエネルギー基本計画案を近く示し、政権は「原発維持・再稼働へかじを切った」、と伝えられている。一方で首相は国会答弁で「可能な限り原発依存を下げる」と述べているが曖昧すぎて何も担保さえてない。

 都民に支持されたからなどと言っているが、どれほどの都民に支持されたかの大いなる誤解がある。つまり、今回の都知事選の投票率は46.14%でそのうち舛添氏の得た 2,112,979票は投票者数の43.4%だから、実質投票率は20.0%にしか過ぎない。都民の5人に一人が舛添氏に投票したからといって、原発再稼働にゴーサインが出たなどと考えているのは、単なる数字のマジックにしか過ぎず滑稽な思い違いである。
 
 原発の再稼働なくして日本の産業の振興は図れない、日本が駄目になるなどと声高に叫ぶ国会議員がいるが、現状はほとんど原発が稼働してないのに、日本が駄目になってないではないか。電気料金が高騰するからなどということも聞くが原発事故が発生したら比べ物にならないほどのダメージを多くの国民が受け、国土が汚染されたことを、つい最近経験したばかりのことを忘れた、またはなかったことにしたがっているとしか思えない。なぜなのか。原発を再稼働しなければならない理由は、安全より優先して、原発を稼働させないと困る人が少なからずいるからのようである。

 エネルギー政策に強い影響力を持つ甘利経済再生相のパーティー券を原発を持つ電力各社が2006年以降1回あたりの購入額を政治資金規正法上の報告義務がない20万円以下に抑え、電力9社は1回あたり約100万円分のパーティー券を分担購入、分担額が1割以下の電力会社幹部は「年間100万円ほど買ったこともある」と証言しており、分担割合から算出すると総額で1千万円程度購入した年もあったという。電力会社役員が自民党に個人献金していることは判明しているが、電力各社が電気料金を原資にパーティー券を分担購入していたことも判明した。
 もしパーティ券購入、政治資金と再稼働が無関係と主張するなら、原発関係者からのパーティ券購入、政治資金をやめるべきである。それは関係ないというに違いないが、李下に冠を正さずである。こうした献金、パーティー券の購入は賂にしか見えない。「法に従い適正に処理している」という問題ではない。そうした関係があることに政治の不信感の根があることを知るべきである。
 
 また、エネルギーが不足しているというなら、なぜ東日本大震災後、節電のため休止されていた国会議事堂のライトアップが再開されたのか。大いなる矛盾である。もうエネルギーを大量に作って大量消費する時代は終わっているのではないか。

 1月末の共同通信社の全国電話世論調査によると、原発の再稼働に反対するとの回答は60.2%に上り、賛成の31.6%のほぼ倍だった。このことを政権はどう受け止めているのだろうか。自分の都合にいい数値だけ利用して、原発再稼働に進むことは間違いであり、後世に悔いを残すことになるだろう。 

 いみじくも、都知事選の結果について東海村前村長が、「極めて残念。東京都民は目先の経済だけを追い、歴史的な大きな間違いを犯した」「都民は東京電力福島第一原発事故を忘れ、平和憲法の精神を壊そうとする安倍政権を支持した。東京が日本を駄目にしていく」と批判しているが、同感である。
 
 今回の選挙も感じることは、投票前から「舛添優勢」などということをマスコミがこぞって報道しており、特定の4,5名の候補者しか取り上げてない報道は公正ではない。こうしてマスコミに連日取り上げられれば知名度も上がり有利になることは間違いなりだろうし、ひとによっては「優勢」に投票しようと思うこともあるだろう。開票前に誰が優勢だなどということは報道すべきではないし大きなお世話である。

<前                            目次                            次>