日々の抄

       目次    


 安心できるものを食べたい

2014年7月27日(日)

  毒入り餃子事件が記憶に新しいが、また中国で食品の恐るべき行為が報じられた。
青カビの生えた肉を製品に混入させたり、床に落ちた肉を再利用したり、冷凍保存すべき肉を常温で保管しそれを利用したり、8か月も前の肉を使ったりと信じられない行為である。
 この肉を利用している日本国内のファストフード、コンビニで購入した消費者には衝撃が走った。当該コンビニの責任者は、「当社は完全な点検、品質管理をしており、当社には問題ない。健康被害は出てない」と他人事であるのはいかがなものか。健康被害が出るものを販売していれば犯罪行為である。
 この食品工場は100%米国投資の企業で、「最も厳しい基準を守っている」、「必要な100項目を何度も検査している」などし、日本国内のファストフードでは、味、においなどサンプリング検査をしている、としているが、現実はそう簡単なことではない。

 いったい中国の食品メーカーは何をやっているのかと思うが、これにはからくりが見えてくる。つまり、不正を映像で暴いたのは、中国でナンバー2のテレビ局である。中国でテレビ報道するために政府の検閲は当然のことだから、一連の報道はテレビ局のすっぱ抜きに見えても、実は政府の「やらせ報道」と見なければならない。
 米国がすべて投資している会社、つまり外資企業たたきそのものである。現に、中国のテレビ報道では、中国の食品に対する、倫理観や責任感を問うことなく、「外資企業は中国で操業すると、なぜ安全基準が緩和されるのか」などと、白々しい批判をしている。政府ぐるみの小芝居にしか見えない。
 
 食品に対する取り扱いのいい加減さ、工場従業員の無節操さを責めて解決できる問題ではなさそうだ。解雇されたくなければ上司から言われたことに従わなければならない。上司は、経営努力の名のもとに、食品の安全など考えずに健康障害が予想できる危ない製品を平然と輸出している。外資企業を批判攻撃の対象とする「やらせ」の疑いは十分ある。外資をたたくことで中国国内の企業の引き締めをしているとも考えられる。
 いずれにせよ、「またか、やっぱり」という気がしてならない。食品製造不正を排除するために作業員の倫理観に頼るのは無理がある。製品管理専門の職員を常駐させる、すべての製造工程で監視カメラで管理するなどの、「性悪説」にたった方法しかあるまい。

 食糧自給率は、2012年では、カナダ223%、オーストラリア187%、アメリカ130%、ドイツ93%に対し、日本はたったの39%である。中国からの食品輸入量は1993年に約3600億円だったものが2013年には約8800億円になっている。TPPに決着がつけばさらに自給率は低下するだろう。

 なぜ食糧を輸入品に依存しているのか。それは価格にしかない。同じ野菜が安ければ、不安があっても国内産の半値の中国産を買うことに問題がある。
 食糧自給率が低いことによる弊害は、他国との関係に問題が起こると輸入が制限されることによる「食糧危機」、「食品高騰」などが起こる。一方で国内の食品ごみは1713万トン(2010年)で、これは昨年度国内のコメ生産量の2倍に相当する。

 「安ければいい」という考えを変えないかぎり、食品不正、食糧不信から抜け出すことはできまい。同時に飽食が国も国民の健康も滅ぼすことの恐れを考えてみる時が来ているのではないか。また、2次加工食品の生産国を表示しなくてよいということを変えないかぎり、安心して食品を口にすることはできない。過剰・違法農薬、ホルモン剤多用の食肉など、健康被害がでても金になればいいと考えている、拝金主義者が作っている食物を輸入せずに済むための方策を考えることは急務である。日本国内には野菜、穀物を作る休耕地はあり余っており、優秀な畜産、養鶏農家はたくさんいる。

<前                            目次                            次>