日々の抄

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 「沈黙の病」現地調査4年

2015年2月21日(土)

 「シャーガス病」という病の長崎大熱帯医研平山教授の研究が新聞に紹介されていた。
 この病は、「沈黙の病」と呼ばれ、トリパノソーマ原虫に寄生されたサシガメという昆虫に刺されて感染するそうだ。患者の3〜4割が心不全や腸の肥大などを併発するが、「沈黙の病」と呼ばれるのは、感染後10〜20年にわたって発症しないこともあり、数十年後に突然死亡することもあるというから恐ろしい。
 中南米で流行して感染者は推計770万人。途上国に多くの患者がいるが、予防や治療の研究が進んでないが、この病用の薬はあるものの、年齢が高いほど全身性の発疹や嘔吐の副副作用が強くなり、有効な薬は開発されてないという。
 この病気は、原虫が血液中に入り込み、日本では一昨年、中南米出身のシャーガス病に感染した男性による献血が初めて確認されたが、輸血を受けた11人はいずれも感染が確認されなかったというが、はたして数十年後に死にいたることはないのだろうか。
 
 
 原虫による病気は、アメーバ赤痢、クリプトスポリジウム感染症、ジアルジア症、トキソプラズマ症、サイクロスポラ感染症、ミクロスポリディア(微胞子虫)感染症など多数ある。
 この中の、胞子虫類に属する「クリプトスポリジウム(Cryptosporidium )」は、ヒト型、ウシ型、トリ型、その他の遺伝子多型を示すことが明らかになっている。「クリプトスポリジウム」は、宿主の腸管上皮細胞の微絨毛に侵入して寄生体胞を形成し、無性生殖によりメロゾイト(merozoite=分裂小体)形 成した後、微絨毛へ侵入つぎつぎに数を増し、感染の元になるという。
 ヒトでの感染は1976年にはじめて報告された。1980年代に 入ってからは後天性免疫不全症候群(AIDS)での致死性下痢症の病原体として注目され、そ の後ほどなく、健常者においても水様下痢症の原因となることが明らかとなった。
 英米両国では1980年代中頃から頻繁に、集団発生が報告され、1993年に米国ウイスコンシン州ミル ウォーキー市では、40万人を超える住民が罹患する集団感染が起こり、日本では、1994年平塚市の雑居ビルで460人 あまり、1996年には埼玉県入間郡越生町で町営水道水を汚染源とする集団感染が発生。8,800人におよぶ町民が被害を被っている。
 
 長い時間が経過してから、ある日突然身に覚えも原因もすぐに分からない病気が発症する恐怖がある。小さい時から、いつどこで、どのような怪我をしたか、薬を服用したかなどを記録しておく必要を感じる。


 原虫ではないが、海産物に寄生する寄生虫「アニサキス虫」が身近な生活に関係している。ヒトに感染する場合、サバ、アジ、イカ、タラから感染するという。シメサバ、バッテラ寿司、生魚を食し、アニサキス虫に感染した魚介を生食すると、幼虫が胃、小腸粘膜に穿入、嘔吐、悪心、腹部痛を生じる。直接アニサキス虫を内視鏡で摘出しなければならないという。アニサキス虫は50°Cに8秒浸すと死滅するそうだ。
 生魚をどうしても食したい場合、よく噛んで食べればいい(目に見えなくとも噛みちぎるということ)というが、この話を聞いてから、さしみや生魚を食べる勇気は湧いてこない。
 
 農業用水で飼われていたブラックバスを生食して、日本顎口虫(がっこうちゅう)症」による羅病が平成14年に国内初の報告がなされている。この寄生虫は、皮膚の下に移動し皮膚に炎症を起こすが、雷魚を食べて、この寄生虫が体内を移動し、目に出てきた様子を映像で見たことがあり、それ以来、生魚は食べるものでないと思わされたものだった。
 
 ひとの命を奪うためには、爆弾、銃弾、ミサイルなどがなくとも、目に見えぬ病原因があれば十分可能のようだ。
 

 
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