何をそんなに急ぐのか |
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2015年7月12日(日) 政府が強行採決しようとしている安保関連法案は、明らかに憲法違反であり、日本国が戦後70年間、他国と戦争せず、戦死者を一人も出さずに済んできた、栄光ある平和国家を否定する。米国の属国となって、他国のために若者の命を失わせることにつながる、戦後最大の禁忌とすべき法案である。認めるわけにいかない理由はたくさんある。 第一に、法的根拠がない 政府は、集団的自衛権は、1957年に米軍立川基地の拡張反対に対する「砂川事件」の最高裁の判決を根拠としている。 砂川事件の、「米軍駐留は違憲である」という1審に対し、当時の政府はすみやかに逆転有罪判決を目指すべく、高裁を飛び越して最高裁に「跳躍上告」した。裁判に米国から強い圧力があったことが、米国で開示された公文書で明らかにされている。3通あった極秘公電には、裁判の日程や進め方、判決の見通しについてまで事細かに報告されている。また驚くことに、当時の田中最高裁裁判長が語った、「来年のはじめまでには最高裁は判決を下すことができるだろう。下級審の判決が支持されると思っているような様子は見せなかった」が書かれていた。 米国と最高裁裁判長が通じていながらの判決が、公正なものといいようがないし、砂川判決は米軍駐留を争っているもので、そもそも集団的自衛権についてなんら触れてない。 判決文の中の「わが国が、自国の平和と安全を維持し、その存立を全うするために必要な自衛の措置をとりうることは、国家固有の機能の行使として当然のことといわなければならない」で、「個別的自衛権」と「集団的自衛権」は区別されていないから、「集団的自衛権」を行使することは憲法に反しないと、曲解しているだけ。同盟国が攻撃されたときに、日本国が戦闘に参加することが妥当だ、などということはどこにも書かれてない。 第二に、限定的攻撃など、できようがない 「存立危機事態」や「重要影響事態」を認定する政府の判断基準は明示されてない。首相は「…申し上げるのはいかがなものか。政策的な中身をさらすことになる」と国会での答弁を拒否している。つまりは、あくまで「限定的な」集団的自衛権だからと主張するだけで、明示できないのである。「総合的に判断して」決めると言っているが、何を総合するのか。 「限定的」とは、「他国への攻撃によって日本の存立が脅かされる」場合にのみ行使可能だと強調しているが、米国が攻撃されている地球上の戦闘行為が、「わたしは首相ですから」と胸を張る首相の判断で、後方支援だからといいながら、日本の若者を他国の戦争の犠牲にするわけにいかない。戦闘行為では後方で武器を調達する行為が、攻撃の対象になることは明白なことではないか。 第三に、国際情勢の何が緊迫しているのか 5月20日の国会で首相は、集団的自衛権の行使について「武力行使を目的として海外の(他国の)領土や領海に入っていくことは許されない」としつつ、中東・ホルムズ海峡を念頭に、機雷除去は例外的に認められると強調している。 横畠法制局長官は、6月26日の国会で、民主党の岡田代表からホルムズ海峡での機雷除去について問われ、「我が国に対する武力攻撃の意図があるならば、我が国に対する武力攻撃そのものになりうる」と説明。そのうえで「個別的自衛権の発動によって機雷を処理することはありうる」と答弁。 だが、中谷・防衛相は6月15日の安全保障関連法案に関する衆院特別委員会で、他国を武力で守る集団的自衛権に基づき、戦時の機雷掃海を想定する中東・ホルムズ海峡の状況について、情勢が悪化しているわけではないと認めている。 なぜ集団的自衛権を認める安保関連法の成立を急ぐのか。 新聞社のアンケートでは、今国会での関連法案成立を必要とせず、60%(朝日)、61%(毎日)だった。読売の「安全保障関連法案は、日本の平和と安全を確保し、国際社会への貢献を強化するために、自衛隊の活動を拡大するものです。こうした法律の整備に、賛成ですか」という、誘導的質問に続いた、今国会での成立に反対は63%だった。 民意を無視して法案を成立させるために、国民に丁寧に説明が必要と言っておきながら、野党からの質問を無視するような答弁を繰り返し、野党議員にヤジをとばすなどという品格を失っている首相は、「やると決めたんだからやる」としか思えない。 第四に、自衛隊員のリスクは変わらないというウソ 首相は、海外での自衛隊の活動拡大で、つまりは戦闘行為がある場において、自衛隊員の生命のリスクについて、首相は終始、高まることはない、むしろ集団的自衛権が抑止力になるから、リスクは下がる、などとしている。中谷防衛相は6月12日、安全保障関連法案に関する衆院特別委員会で、自衛隊の活動拡大による隊員のリスクは「増える可能性がある」と初めて認めている。 米国の要請により世界中の戦闘行為が行われている場に身を置いて、自衛隊員のリスクがないなどと思う人はいまい。現実への想像力をもたず脳天気で、自衛隊員本人のみならず家族が感じるであろう不安感に思いをいたす気持ちがないらしい。日本国民の平和のために集団的自衛権が必要だなどと語る首相は、戦争体験を知らず、戦争の悲惨さを現実のものと感じていないらしい。 以上のどれをとっても、「ひとつの内閣のそれも、独裁的な首相が憲法解釈を変更することによって、平和憲法を否定するような集団的自衛権を発動できる安保関連法案を認めることはできない」。日本領域で他国から攻撃されたら、個別的自衛権を行使すればいいだけのことだ。集団的自衛権は、「自衛」でなく、「他衛」以外の何物でもない。 安全保障関連法案について、TVのアンケートに答えるな、TV出演もするな、などと国会議員に指示している自民党こそ「存立危機事態」である。校外で余計なことをしゃべるな、答えるなと言われて黙っている子供とどこが違うのか。唯々諾々たる議員のみで、異論を唱えることのできない政党は、まるで独裁国家のにおいさえ感じる。そんな人物たちが、教員の資質向上のための改革のための機会を増やせなどと言っているが片腹痛い。国会議員の資質向上が喫緊の課題なのではないか。 |
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