日本は植民地なのか |
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2006年01月09日(月) 横須賀の女性殺害事件の犯人である米軍空母キティホーク乗組員の上等水兵が身柄の引き渡しを受け、強盗殺人容疑で佐世保署に逮捕された。3日に発生した事件である。これは日米地位協定により、日米合同委員会を開いてやっと米国側が身柄引き渡しに合意した結果であった。 調べによると容疑者は1月3日午前6時半ごろ、横須賀市米が浜通の雑居ビルの1階入り口付近で、通勤途中だった女性の顔や頭などに暴行を加えて殺害し、現金約1万5000円を奪ったという。複数の肋骨も折れており、死因は内臓破裂による失血死だった。同容疑者は7日までの県警の任意の事情聴取に対し、容疑を大筋で認めているが、殺意はなかったと言っている。体格が小さな女性に対して肋骨を折るような暴行を加え、殺意がなかったなどという言い訳が通じるのか。殺人が行われたというのに、神奈川県警は米海軍横須賀基地に取調官2人を派遣し(基地側に文書で要請し実現)、殺害を認め米軍に身柄を拘束されていた米兵を任意で事情聴取したという。身柄を起訴前に日本側に引き渡したのは、引き渡し後に米軍司令部代表者が取り調べに立ち会うことを認めた2004年の日米合同委員会の合意以降、初めてのケースとなるというから驚きだ。 これに対して、ヒル米国務次官補は5日、「非常に遺憾に思っている」と述べ、トーマス・シーファー駐日米大使は6日、「殺害という野蛮な行為に対し、個人的な悲しみと激しい怒りの気持ちを心の底から申し上げる」との声明を出した。 ところが、7日佐世保基地に配備されている米海軍強襲揚陸艦エセックス乗組員の2等兵曹が女性をひき逃げして軽傷を負わせたとして業務上過失傷害と道交法違反の疑いで、佐世保署に逮捕されている。事故直後、容疑者は乗用車をいったん停止させ女性に声をかけたが、そのまま逃走。自宅に車を置いた後、タクシーで現場近くに戻り、バーに入るなど悪質な行動をとっていた。横須賀市の女性殺害事件を受け、9日までを「反省の期間」として設定すると発表したばかりだったが、日本の世論を考慮した、その場凌ぎの反省だったのか。米国人の反省とはこんなものなのか。 昨年12月22日、米海軍の女性水兵が八王子市で3人の児童をひき逃げしたとして逮捕されながら、公務中だったことを理由に釈放された。米軍側は水兵のひき逃げの意図を否定しているが、水兵はけがをした男児の家族に「気が動転してしまった」と、逃げたことを認めたという。事情聴取を八王子署が米軍側に要請。28日に同署を訪れた水兵に、ひき逃げの状況などを聞いた。米軍は関係者の立ち会いを要請したが、同署が拒否したという。 在日米海軍司令部によると、水兵は米海軍第7艦隊の空母「キティホーク」艦載の戦闘機中隊所属で、厚木基地から横田基地に備品を取りにいく途中だったという。「水兵は事故後、渋滞を避けるために車を別の場所に止めた」とし、「現場に戻ろうとした時に逮捕された。ひき逃げの意図はなかった」と説明しているが、けがをした男児の家族によると、水兵は25日午前11時ごろ、上司らと男児宅を訪れて謝罪。この際、「なぜ逃げたのか」と尋ねると、「びっくりして、気が動転してしまって、そのままにしてしまった」と答えたという。事故は22日午後1時ごろ発生。警察は同2時半ごろ、水兵を緊急逮捕し、米海軍に逮捕を通告した。米海軍からは同9時ごろ、「正規の公務中だった」との「公務証明書」が届けられ、日米地位協定などに基づき、同10時ごろ釈放されたという。 ひき逃げの意図があろうがなかろうが、児童に肩の骨を折るなどの重傷を負わされている事故が日本国内起こったことは事実である。ましてや、ひき逃げの意図などあってたまるものか。本当に公務だったかどうかは検証されているのか。 米兵による過去五年間の凶悪犯のなかで最も多いのは、強盗で十四件。性的暴行も十二件。このほか放火は三件、殺人も二件起きている。2003年8月、在岩国米軍基地所属米海兵隊員による強かん致傷事件は、「懲役3年、執行猶予4年」が確定。2004年の凶悪犯は4件。このなかには、米兵が佐世保市で帰宅途中の女性を駐車場の車の中に連れ込み、性的暴行を加え、傷害を負わせた事件や、盛岡市で米兵二人が日本人男性二人の顔などを殴打し、殺人未遂で現行犯逮捕されている。また、昨年末米兵が2004年9月に米軍キャンプ座間で日本人女性に強制わいせつ行為をはたらいていたことが発覚。2005年7月には沖縄市で、米兵が小学五年生の女児に強制わいせつ行為をはたらいた事件で逮捕されている。 米兵による事件・事故は、1952度から2004年度まで20万件余、日本人死者は1076人に達し(72年の施政権返還前の沖縄分を除く。防衛施設庁資料により)。このうち、「公務中」の事件・事故は、47218件、日本人死者は517人におよんでいる。昨年8月、沖縄県宜野湾市内の大学構内に米軍の大型輸送ヘリが墜落した事件では、米軍は日米地位協定を根拠に現場を封鎖、沖縄県警の機体の検証を拒んでいる。 今回のような、明らかな犯罪行為も「公務中」という金科玉条によって、日本国には裁判権を持たないという。これは日米地位協定17条3の「公務執行中の作為又は不作為から生ずる罪」の場合に米国が裁判権有するもの、による。 協定が乱用された事件としては、1974年に勤務時間外の米兵が住民を狙撃した「伊江島事件」では、勤務時間外だったにもかかわらず「公務中」との証明書が出され、2002年には、那覇署に窃盗容疑で逮捕された米兵が公務証明書を持っていたことから、即日釈放されたケースもあった。夜中に酒などを飲食した帰りに事件を起こしていながら公務中といえるのか。 こうした中、日米両国は04年4月、「どんな犯罪でも起訴前の身柄引き渡しが可能」とした地位協定の運用改定に合意(前述)したが、裁量権は引き続き米軍側にある。それも「・・・好意的考慮を払わなければならない」(同協定17条3)という。 日本国内における犯罪行為は日本人であっても米国人であっても罰せられるべきは同じはずではないか。日本が米国の傘の下にいるから、多少の不利益は我慢しろというのか。一日も早い同協定の改定を望む。今のままでは日本人の命は米国人の命より軽んじられていると言わざるを得ない。全く腹立たしい限りだ。戦後60年が経過し、いまだ日本は米国の属国、植民地なのかと思わずにいられない。 |
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