ジュバの治安状況に危惧はないのか |
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2016年11月28日(月) 安全保障関連法に基づく「駆け付け警護」の新任務を付与され、南スーダンで国連平和維持活動(PKO)にあたる陸上自衛隊部隊の先発組約130人が20日、青森空港を出発。部隊は青森の陸自第9師団を中心に選ばれた総勢約350人で、首都ジュバとその周辺で道路の整備などにあたる。国連職員などが襲われた場合に助けに向かう駆け付け警護に加え、部隊の宿営地を他国軍と一緒に守る共同防護が12月12日から可能となるという。 ■南スーダンとは 南スーダンの正式名称は、南スーダン共和国。2011年7月8日まで、スーダン領でありながら南部スーダン自治政府の統治下にあったが、分離独立の是非を問う住民投票が実施され、分離独立票が圧倒的多数 (98.83%) を占めた。新国名は「南スーダン共和国(英: The Republic of South Sudan)」となった。アフリカで54番目の国、193番目の国連加盟国である。 南スーダンの戦闘行為は、サルバ・キール(Salva Kiir)大統領派とリヤク・マシャール(Riek Machar)第1副大統領派の対立によるとされる。キール氏とマシャール氏は、南スーダンが2011年にスーダンから独立する前の1983年から2005年まで続いたスーダン北部との内戦で対立勢力として互いに争い、それぞれの勢力の指導者である。 2人はいずれもスーダンの代表的な民族出身で、キール氏はディンカ(Dinka)人、マシャール氏はヌエル(Nuer)人である。ディンカ、ヌエルともさらに細かい勢力に分かれ、氏族間で対立している例もあるという。 南スーダンはアフリカでも指折りの産油国で、国家収入の98パーセントが石油収入という。南スーダンには特に米国と中国の石油企業が急速に進出しているが、今回の戦闘で北部の油田地帯が反乱軍に制圧された。 ■ 何が起こったのか 7月、陸上自衛隊が国連平和維持活動(PKO)に従事する南スーダンの首都ジュバで、対立する二つの勢力による緊迫した状態が続き、300人以上が死亡したとみられ、国際協力機構(JICA)の関係者ら日本人も退避した。各国の文民警察官らも国外に退避。 南スーダンのマイケル・マクエイ・ルエス情報相は、7月に起きた政府軍と反政府勢力との大規模戦闘の際に、政府軍と国連南スーダン派遣団(UNMISS)の平和維持活動(PKO)部隊との間でも一時、交戦があったとの認識を示した。 10月、南スーダンの政府軍報道官は14日、国内での戦闘や残虐行為により、過去1週間に少なくとも60人が死亡したと発表した。 ■ 現状はどうなのか 国連の事務総長特別顧問は11月11日、南スーダンで「民族間の暴力が激化し、ジェノサイド(集団殺害)になる危険性がある」と警告。国連南スーダン派遣団(UNMISS)にも混乱が広がっている。 現地の状態を最も肌身で感じている、国連南スーダン派遣団の楊超英・軍司令官代理が11月24日、首都ジュバで、南スーダンの大統領派と前副大統領派の対立について「和平合意が維持されているとは言えない」と述べ、陸上自衛隊が活動するジュバの治安状況は「予測不可能で非常に不安定」とするなど、厳しい情勢認識を示した。両派による7月の大規模戦闘について、国連は平和維持活動(PKO)部隊が対応に「失敗」したとし、ケニア出身の軍司令官を更迭。後任は未定で、副司令官だった中国出身の楊氏が約1万3千人のPKO部隊を統括する。今月に入ってケニア出身の司令官が更迭に反発したケニアは部隊の撤退を始めた。 ■南スーダン派遣駆けつけ警護付与は国民の理解は得られているのか 陸自PKO、駆けつけ警護付与「反対」56%(朝日新聞社世論調査)、反対57.4%(共同通信世論調査)、反対56.9%(NNN世論調査) 国民の半数を超えて駆けつけ警護付与に否定的で、理解を得られているとはいえない。 ■ 憲法、PKO参加5原則との整合性 政府は、憲法との整合性を保つため設けられた「PKO参加5原則」は維持されていると繰り返す。 PKO参加5原則とは (1) 紛争当事者の間で停戦合意が成立していること、(2) 当該平和維持隊が活動する地域の属する国を含む紛争当事者が当該平和維持隊の活動及び当該平和維持隊への我が国の参加に同意していること、(3) 当該平和維持隊が特定の紛争当事者に偏ることなく、中立的立場を厳守すること、(4) 上記の基本方針のいずれかが満たされない状況が生じた場合には、我が国から参加した部隊は、撤収することが出来ること、(5) 武器の使用は、要員の生命等の防護のために必要な最小限のものに限られること、というものである。 国連南スーダン派遣団の楊超英・軍司令官代理が述べているように、現状は「紛争当事者間の停戦合意」や「紛争当事者の安定的な受け入れ同意」が確立した状況とはいえない。 駆けつけ警護について政府は「近くで対応できる国連部隊がいない場面で応急的かつ一時的な措置」と説明。邦人保護の必要性を強調し、地域はジュバ周辺に限り、他国軍人を助けることは想定されないとする。 国連報告書によれば、7月に南スーダンの首都ジュバでは、政府軍兵士が国連職員や民間人ら約70人が滞在するホテルに押し入り、殺人や性的暴行をしたとされる。ここで政府軍兵士に武器を使えば、憲法違反の恐れがある。防衛省関係者は「駆けつけ先まで政府軍や現地警察に同行を求め、相手を確認してもらうこともありうる」という。 様々な限定がついた駆けつけ警護だが、自衛隊の武器使用のハードルも高い。戦闘の相手が政府軍側となりうる。「国や国に準ずる組織」に武器を使えば、「… 陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」とする憲法「9条2項」に抵触するのではないか。 現地で不測の戦闘行為が行われた場合、幸いにして負傷せずとて、自衛隊員の帰国後の精神状態が気になる。先の戦争の影響で精神疾患になり、国の費用負担で療養を続けたまま亡くなった旧日本軍関係者らが、政府統計が残る過去約五十年で約千人に上ることが、共同通信のまとめで分かった。このうち七割近くは入院したまま最期を迎えたという。 ■ 「駆け付け警護」は行うべきではない 首相は、「南スーダンはですね、例えば我々が今いるこの永田町と比べればですね、はるかに危険な場所」と国会で答弁し、稲田防衛相はわずか7時間の滞在視察で、現地が落ち着いていることを確認した、という。 7月のジュバでの戦闘について、首相や稲田氏は、こうした事態を、「発砲事案」と捉えて、 ジュバで起きたことは「法的な戦闘行為ではなく衝突だ」と語っている。これは詭弁である。「戦闘行為」だろうが「衝突」だろうが、武器を用いた殺戮行為が行われていることは間違いないことなのだ。 防衛省が今年六月、表題以外をすべて黒塗りにして開示した陸上自衛隊の南スーダンPKOに関する作成資料を11月に公開した。黒塗り部分は、現地報道を基に公になっている反政府勢力の「支配地域」を示した地図だったという。もったいをつけ、国民に情報を示そうとしない姿勢はいったい何なのか。 こんな程度のお気楽な政治家の、海外出兵の実績作りに、日本の若者の命を犠牲にするわけにいかない。他国の内戦のために日本の若者の命を犠牲にするかもしれない海外出兵に賛成するわけにいかない。 防衛大臣は「新たな任務についての命令を発出したのは私自身。すべてのことについての責任は、私にある」と勇ましく語っているが、自衛隊員に犠牲者が出た場合、いったいどのような責任がとれるというのか。大臣を辞任したり議員を辞めたとしても、そんなことで責任をとったことにはなるまい。命を、手足を失ったり、一生消すことのできないPTSDから逃れることのできない犠牲者、および家族は消すことのできない傷を一生背負うことを忘れているのではないか。 武力を使わぬ平和活動を続けてきたことが平和国家として評価され、安心してNPO活動を続けてこられた日本が、今回から「海外で武力行動を可能にした」とされ、海外での多方面での活動が危険を伴うことになり、国際的な国家の評価を変えられてしまうことは間違いあるまい。 内戦状態の国へのPKO派遣および武力を行使するであろう「駆け付け警護」は行うべきではない。 |
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